なぜ名優+同性愛? タブーなき進化を続けるテレ東“飯テロ”

4月20日(土)7時0分 NEWSポストセブン

2LDKで男2人暮らし(番組公式HPより)

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 テレビ東京の“飯テロ”ドラマが進化中だ。新ドラマ『きのう何食べた?』が話題を集めている。テレビ解説者の木村隆志さんが、“飯テロ”ドラマのこれまでとこれから、そしてテレ東が制作を続ける背景について解説する。


 * * *

 4月5日のスタートから『きのう何食べた?』の勢いが止まりません。ツイッターの世界トレンド第1位になり、見逃し配信の再生回数が過去最高を記録し、ツイッターのフォロワー数が早くも10万人を突破。クチコミサイトの評判を見ても、ドラマ識者たちのコメントを見ても称賛が多く、早くも「今期イチ」の声があがっています。


『きのう何食べた?』は、弁護士・筧史朗(西島秀俊)と美容師・矢吹賢二(内野聖陽)の同居生活を描いた作品。番組名からわかるように、物語は食卓を中心に物語が進んでいきますが、深夜のグルメドラマはテレビ東京の十八番である“飯テロ”の系譜です。


 驚かされるのは、西島さんと内野さんという大物名優の共演で、しかも同性愛をモチーフにしていること。


 これまでテレビ東京は、中年男性がひたすら食べる『孤独のグルメ』から、OLが一人酒をたしなむ『ワカコ酒』、ひたすら食べる謎の女性を描いた『たべるダケ』、刑事がB級・C級グルメを熱く語る『めしばな刑事タチバナ』、極道が手料理を振る舞う『侠飯〜おとこめし〜』、銭湯とお酒とつまみにフィーチャーした『昼のセント酒』、仕事をサボってスイーツを食べる『さぼリーマン甘太朗』、グルメで失恋を忘れようとする『忘却のサチコ』などを放送してきましたが、今作は「飯テロもついにここまで進化したか」という驚きであふれています。


『きのう何食べた?』は、これまでの“飯テロ”とはどう違うのでしょうか? さらに、改めて“飯テロ”は、なぜ人気が続き、今後はどうなっていくのでしょうか?


◆動画レシピサイトのような魅力も


『きのう何食べた?』の原作は、『西洋骨董洋菓子店』『大奥』などで知られる、よしながふみさんの漫画であり、すでに15巻が発行された人気作。ゲイカップルのほのぼのとした日常を描くとともに、周囲へのカミングアウトや両親との関係性など、LGBTの抱える問題点にもふれる骨太な一面を持ち合わせています。


 これまでの“飯テロ”は、ゆるさを売りにし、あえてストーリー性を重視しないものが多かったのですが、昨年放送された『忘却のサチコ』がそうだったように、近年はストーリーとグルメが補完関係となる作品がジワジワと浸透。その点、『きのう何食べた?』は、“飯テロ”らしいゆるさを保ちつつも、男女を問わずカップルに大切なことを描き、社会的な問題にも迫る作品となっています。


 もちろん“飯テロ”である以上、グルメがおいしそうに見えなければ意味がありませんが、当作はその点でも進化。原作漫画が『マツコの知らない世界』(TBS系)の「マンガ飯の世界」で“レシピ本として使える!おすすめマンガ”の1位に選ばれるなど、「見ておいしそう」というだけでなく、「作ってみたい」と思わせる作品であり、ドラマ版も食事中のシーンに加えて、料理中の手元をじっくり映すなどの演出で、その長所は失われていません。つまり、動画レシピサイトのような魅力もあるのです。


◆テレ東の“飯テロ”はますます細分化へ


 では、なぜ“飯テロ”の人気は続き、テレビ東京は制作し続けているのでしょうか?


もともと“飯テロ”の人気に火がついたのは、「深夜に食べたら太ってしまう。体に悪そう」なものをおいしそうに食べまくるシーンの魅力から。「禁止されるほどやりたくなる」カリギュラ効果という心理現象によるところが大きいと言われています。


 その効果は、『きのう何食べた?』なら西島さんや内野さん、『忘却のサチコ』なら高畑充希さんなど演技力のある俳優が出演することで、さらにアップ。バラエティーの画一的なグルメレポートに視聴者が飽きている中、名優たちの食べる演技はそれだけで説得力があるのです。


 また、バラエティーのグルメレポートは「タレントたちが番組の中で食べる」という図式ですが、ドラマの食事シーンは「登場人物(一般人)が日常の中で食べる」という形で感情移入しやすいところもポイント。「料理をおいしそうに撮る、食べている人を美しく撮る」という技術的な面でも、ドラマならではの技術が光っているのです。


 さまざまなタイプの作品が受け入れられてきたように、“飯テロ”は視聴者のニーズが高く、『きのう何食べた?』のヒットを見ても、しばらくは下がりそうにありません。


 今後は、『孤独のグルメ』のようなひたすら食べるものや、『きのう何食べた?』のような社会的なテーマを絡めたものはもちろん、料理やスイーツなどのジャンル、食べる人の職業やシチュエーションは、より細分化していくのではないでしょうか。たとえば、「肉だけを食べ続ける」「調味料にこだわり尽くす」「やたらグルメな小学生子役」の“飯テロ”ドラマがあっても驚かないのです。


 失敗を恐れず、努力を惜しまず、新たなものに挑んでいく。そんなテレ東の深夜ドラマらしさが失われない限り、“飯テロ”はますます進化していくでしょう。


【木村隆志】

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

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