『名探偵コナン 隻眼の残像』4DXの3つの注意点&5つの魅力を解説!「リモコン」の意味は?
2025年4月21日(月)20時30分 All About
『名探偵コナン 隻眼の残像』の4DX上映における、3つの注意点と、5つの魅力を紹介しましょう! 併せて、今回の「渋い」内容を称賛しつつ、気になったポイントもあげ、さらには「リモコン」の意味も考察してみます。(※画像は筆者撮影)
超ロケットスタートの興行は右肩上がりに
その成績は前作『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』をも超えて、第28作目にしてシリーズ最高の記録。シネコンでは1日20回以上、中には40回以上も上映される劇場もあり、満席近い回が相次いでいました。人気は衰え知らず……どころか右肩上がり。毎年恒例の劇場鑑賞をこれほど多くの人に促しているコナン映画の「信頼」は、とてつもなく強いものだと改めて知りました。
具体的な今回の『隻眼の残像』の作品そのものの魅力、気になったポイント、さらに「リモコン」の考察は後述するとして、ここでは座席の揺れなどのアトラクション的な要素がプラスされる「4D」上映を推しておきたいです。
何しろ派手なアクションの見せ場があるコナン映画と、4D上映との相性は抜群であり、今回もまったく例外ではなかったのですから。まずは、前置きとして3つの注意点を記しておきましょう。
注意点1:MX4Dよりも4DXを選んでほしい
4Dには、TOHOシネマズで展開する「MX4D」と、イオンシネマなどでの「4DX」の2種類があります。どちらを選べばいいかと迷う人もいるでしょう。結論から申し上げれば、筆者は断然4DXをおすすめします。なぜなら、4DXにはMX4Dにはない、劇場の上から降る「雨」、スクリーン手前に降る「雪」、湧き立つ「バブル(シャボン玉)」の演出があるからです。
作品によっては「雪」や「バブル」の演出がそもそも(劇中に該当するシーンがないために)使われないケースもあるのですが、今回の『隻眼の残像』の主な舞台は雪山であり、そのおかげでもあって「雪」の演出がとても効果的に使われているのです。
注意点2:「雪の演出がない」劇場もある
注意点としては、4DXの全ての劇場で演出は一律ではなく、劇場によっては「雪」や「バブル」の演出がない場合もあることでしょう。例えば、「ユナイテッド・シネマ なかま」や「ユナイテッド・シネマ 幕張」では、一部設備の仕様が異なるためこれらのエフェクトがないと明記されています。
また、シネマワールドの4DXの公式Webサイトでは店舗別の「ギミックの表」も作られており、それぞれの演出があるかないかが分かるので、ぜひ参照してください。
ちなみに、筆者は「イオンシネマみなとみらい」で見ましたが、しっかり雪が降っていたことを報告しておきます。
注意点3:「風」や「水」の演出のため寒さ対策も必要?
4DXには劇場全体を吹く「風」や、前方から吹き付ける「水」の演出があるため、人によっては肌寒く感じられる場合もあることにも留意した方がいいでしょう。羽織れる上着を持っていく方がいいかもしれません。なお、「ずぶ濡れ」というほどの水量ではないものの、吹き付ける水は座席横のボタンで「ON/OFF」を切り替えられるので、苦手な人はOFFにしてもいいでしょう。
さて、ここからは今回の『隻眼の残像』における4DXの魅力を紹介します。具体的な展開のネタバレはないように書いたつもりですが、予備知識なしで4DXの演出に驚きたいという人は、先に劇場へ駆けつけてください。
魅力1:雪山に「いる」臨場感
今回は「ホワイトアウト4D上映」と銘打たれており、雪山のシーンでスクリーン手前に雪が降り、さらに「スモーク」で「雪煙」も立つという演出がされています。そのおかげで、劇中の登場人物と同じように雪山に「いる」臨場感を味わえるのです。なお、その雪は「粉雪」といえるほど細かなもので、本当にホワイトアウト(雪や雲によって視界が真っ白になること)になるわけではないのでご安心を。
魅力2:「吹雪」も起こる!
その雪と、劇場全体に吹く「風」の演出との組み合わせで「吹雪」も感じられる場面もあります。スクリーンの手前に降るだけではない、劇場全体を「舞う」雪の演出そのものを楽しめるでしょう。魅力3:「雪崩」の恐怖を体感できる
さらに、今回は雪山ならではの「雪崩」のシーンもあります。4Dのメインの演出である「座席の揺れ」の激しさを持ってして、雪崩が襲いかかるまでの「地響き」も見事に表現。いい意味で「巻き込まれるかもしれない」恐怖を味わえるでしょう。魅力4:座席の揺れだけでなく「フラッシュ」に注目!
コナン映画の大きな魅力であるアクション場面でも、4Dの演出は惜しげもなく投入されています。メインである激しい座席の揺れのほか、スクリーンの斜め上でピカッと光る「フラッシュ」が「ここぞ」という時に生かされていることにぜひ期待してほしいです。魅力5:もはや笑ってしまうクライマックスのサービス
詳しいシチュエーションは秘密にしておきますが、クライマックスでは「見たことがない」アクションのアイデアが持ち込まれており、もはや4DXの演出が「全部載せ」になっていました。荒唐無稽ながらもサービス精神満点で、いい意味で「笑ってしまう」ほどの楽しさがあったのです。さて、ここからは今回の『隻眼の残像』の魅力と、正直気になってしまったポイントも記していきましょう。
今までにないほど「渋い」コナン映画に?
コナン映画がなぜここまで信頼されるのかといえば、楽しめる要素の「型」があまりにも強く、友達とでもデートでも家族でも見る選択として「鉄板」であるからでしょう。近作は「アクション映画としての見せ場」「キャラクターの関係性の尊さ」を特に強く推しており、「1年に1回楽しめるエンタメ」として「間違いない」選択になり得ています。それでいて、毎年同じことの繰り返しにもなっておらず、それぞれで人気キャラクターにスポットライトを当てているのも大きな魅力です。
今回の『隻眼の残像』では「長野県警」のメンバーと、「毛利小五郎」を中心に据えており、複雑な「過去の因縁」が理路整然と語られる、大人のキャラクターたちの愛憎渦巻く感情が交錯する「渋め」の作風になっています。
やや大人向けとも言える内容のため、小さなお子さんには今作は厳しいかも? と心配してしまうのですが、いつもながら「少年探偵団」の面々も活躍があったり、ラブコメ要素もしっかり入れ込んでバランスを取っていたりすることも美点でしょう。
また、一部テレビアニメおよび原作のエピソードとリンクしている要素もあり、やや「コア」なファンサービスもあるものの、メインの話は今作だけで成立していますし、冒頭で簡単なキャラクター紹介があるために、予備知識がなくても楽しめるようになっています。いつもの「あらすじ紹介」もあって、「一見さんが入りやすい」ことも、コナン映画が興行を伸ばし続ける理由の1つでしょう。
微妙な阿笠博士のクイズ、小五郎ファンとしての不満も……?
※以下、決定的なネタバレは避けたつもりですが、『隻眼の残像』の一部内容に触れています。そんな風に本作の4DXと内容を称賛しましたが、筆者個人としてはいくつか不満点もあるのも事実でした。以下、少しネガティブな言及となってしまいますが、ご了承ください。
まず、公式Webサイトでも確認できる、恒例の「阿笠博士のクイズ」のクオリティーがちょっとひどいです。毎回「ダジャレ」が主体のたわいのないものながら、けっこう楽しみにしていたのですが、今回は「それだったら全部の選択肢が正解になるよね?」「それが唯一の正解の理屈もあるけど単純すぎるだろ!」とツッコミたくなりました。
肝心のアクションにおける作画と演出にも不満が残ります。銃撃戦での位置関係がやや分かりづらく、場面によっては人が「並行移動」しているように見えたり、クライマックスであるキャラクターが「あの場所」に乗っていたりするのも不自然に感じました。編集においても場面転換の「暗転」に違和感があり、もっとブラッシュアップはできたはずです。
そして、今作のメインキャラクターであるはずの「毛利小五郎」の活躍も満足とは言えません。確かに彼の切実な思いやある美点が強調されているのですが、どちらかといえば長野県警のメンバーの関係性のほうが主軸のため、相対的に小五郎が「ここぞ」という時に「推理」する面白さが後退している気がするのです。
近年のコナン映画では「多くのキャラクターを捌き切る交通整理」に感心することが多いのですが、それと表裏の「要素が渋滞している」難点もやや目立っている印象を受けました。ここはコナン映画の課題であると思いますし、これほど多くの観客を呼び込めるコンテンツなのですから、クオリティーはとことん突き詰めてほしいです。
なくなったリモコンが意味しているものは?
最後に、本作では「回収されていない伏線(?)」として話題になっていることがあります。それは「なくなったリモコン」で、これが意味していることは何かという考察が、SNSではさかんに行われているのです。ヒントとなるのは、小五郎が「今はスマホ(のアプリ)がリモコンになるから便利」などと話していたことと、「(劇中では具体的には示されていないものの)誰がそのリモコンを見つけたのか」ということでしょう。
そこから、なくなったリモコンは、小五郎が「裏で成し遂げたこと」を示していると思えました。
劇中の小五郎のとある活躍は、彼が今では警察ではないからこそ、「表向きには隠さないといけない」ことでした。でも、それこそが今回の事件における解決の要(かなめ)になっていた……つまり、劇中でリモコンを見つけるその場面が「描かれなかった」ことと、今回の事件で「小五郎が実はやっていたこと」はリンクしているのではないでしょうか。
さらに、本質的にはリモコンも、小五郎という人物も、あるいは劇中で亡くなったキャラクターも「代用が効かない」存在なのだと、その必要性や尊さを示しているようにも思えるのです。
こうしたところで議論が巻き起こる、深読みができる面白さも、近年のコナン映画の美点でしょう。ぜひ、リピート鑑賞する際は、4DXも選択肢に入れてみてください。
この記事の筆者:ヒナタカ プロフィール
All About 映画ガイド。雑食系映画ライターとして「ねとらぼ」「マグミクス」「NiEW(ニュー)」など複数のメディアで執筆中。作品の解説や考察、特定のジャンルのまとめ記事を担当。2022年「All About Red Ball Award」のNEWS部門を受賞。
(文:ヒナタカ)