‘のん’が語った、「女の子は牙をむく」で伝えたかったこと

4月21日(土)11時0分 文春オンライン

 カラフルで混沌として、かわいく楽しげなものに満ちあふれた光景。だれか女の子の脳内を可視化できたとしたら、こんなふうになるのかもしれない。


 会場全体をひとつの個性がみごとに染め上げた。そんな展示を観られるのが、渋谷GALLERY X BY PARCOでの「‘のん’ひとり展 女の子は牙をむく」。





「創作あーちすと」の作品が空間を埋めた


 ‘のん’とは、朝ドラ「あまちゃん」で広く知られた能年玲奈が、2年前から使っているアーティスト名。女優として世に出た彼女、もともと特技がギターや絵を描くこと、洋服作りなどという芸術家肌だった。あるときから、自身の創作欲を抑える必要なんてないことに気づき、女優業と並行してみずから「創作あーちすと」を名乗り活動している。



 このたび初の個展を開くこととなった彼女は、まずコンセプトを打ち立てた。展名にもとられた「女の子は牙をむく」という言葉だ。展示オープンに合わせて会場に現れた本人がこう話す。


「女の子の内側には無謀なパワーがあふれています。凶暴ともいえるような、はち切れんばかりのエネルギーが。それを表現できたらと思って、いろんなものに牙をむきながら突き進む女の子の姿をテーマにしました」



 なるほどたしかに、おもちゃ箱の中に飛び込んだごとく賑やかな会場に身を置いていると、作品が放散する圧力に押しつぶされそうな気分になる。壁面にはぎっしりと、さまざまなタッチを使い分けながら描かれたペインティングが掛かっている。床面にはドレスを着たままひっくり返っている人体や、巨大化したハムスターのオブジェがどんと置かれている。天井からは本人デザインの衣装が吊り下げられた。


 作品の多彩さと物量に圧倒されてしまうのだ。




 感情の赴くままにものをつくり続けるひとりの人間の、堅固な意思のかたまりがここにある。そうはっきりと感じさせられるのだった。



迷いない線と色が、感情を揺さぶってくる


 アートとは何か。その定義はいろいろあろうけれど、ひとつにはこんな言い方ができると思う。


「ある人間の強い意思に発してつくられたなにものか。かたちや素材を問わず、それはすべてアートと呼べる」



 この考えを当てはめるとすれば、のんが生み出した絵やオブジェの数々、そして空間全体は、高いレベルで要件を満たす優れたアート作品だ。


 会場にいると刺激的なビジュアルを次から次へと浴びることになるので、自在で多様な発想力にまずは目を奪われるが、それだけじゃない。1点ずつの作品とよくよく向き合っていくと、どれもディテールがしっかりつくり込まれた繊細な表現であることにも気づく。



 迷いなく勢いのある描線。眼球の色によって感情を描き分ける色彩感覚。牙を繰り返し描くことで、ビジュアルだけではっきりとしたメッセージを観る側へ伝えていく手法などなど。どの作品もよく練られており、視線をたっぷり遊ばせてもらえる表現になっていて見応えあり。




 のん本人は、こうも話す。


「ここにはわたしが『これはおもしろい!』と感じたものを、すべて詰め込んであります。やりたい、つくりたいという気持ちはだれにも止められないし、止めなくたってもちろんいいもののはずですよね。


 観る人がすこしでも共感してくれたり、『あ、わたしも何かやりたい!』って気持ちになってもらえたら何よりうれしい」



 全力でこちらにぶつかってくる作品群に触れれば、「女の子」にかぎらず誰しも、きっと感情のどこかを揺さぶられてしまいそうだ。



(山内 宏泰)

文春オンライン

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