「『ドラえもん』で育ったぼくにとって…」ヨンチャンが“マンガの聖地”で『リエゾン』を描くまで

4月21日(水)17時30分 文春オンライン

「このマンガを描く前は、発達障害をもつ友人の苦しみを単なる悩み相談と思って聞き流してしまっていました」


 過去の自分についてこう語るのは、『リエゾン—こどものこころ診療所—』を描く漫画家のヨンチャン氏。心のケアを必要とする子どもたちと、児童精神科医の仕事を描いた本作は、多くの人からの支持を集め、4巻発売時点で累計25万部を売り上げている。



ヨンチャン氏


 担当編集者と二人三脚で連載を立ち上げたヨンチャン氏は韓国出身。高校卒業後に日本に居を移し、マンガ学部を設ける京都精華大学に進学した。『リエゾン』は2作目の連載作品となる。


「『ドラえもん』で育ったぼくにとって、マンガの聖地は日本。日本で漫画家になるためにずっと努力してきました。前作『ベストエイト』の連載が決まり、ついに夢が叶ったと思ったのに、そこから見えた景色は思っていたのとは全然違っていた。週刊連載って、尋常じゃないスケジュールなんですよね。もともと人と接するのが好きな性格なのに、誰にも会えず睡眠も思うように取れない。家でずっと作業していると、社会から置き去りにされている感覚でした」


『ベストエイト』の連載は1年ほどで終了。次作の構想を練っていたとき、編集者から持ち込まれた『リエゾン』の企画に引き込まれた。


「このテーマなら、単に面白いだけじゃなく、社会とつながり、貢献することができるんじゃないかと思いました」


 さっそく取材をはじめ、児童精神科医の監修も受けながら最初のエピソード「でこぼこ研修医のカルテ」を作り上げた。


「実際に児童精神科で取材したことは、とても役立ちました。ケアが必要な子どもは本当に多いうえに、症状はみんな違って、取るべき治療法も様々なんです。外科や内科と違って『この病気はこう治せばいい』という話じゃない。話を聞きながら、問題の根元を探していくのですが、それは探偵が事件の真相に迫っていくのにも似ています。受診していた子どもの運命が変わるような瞬間も目にして、自分が見たこと、感じたことをできるだけ読者に伝えたいという表現欲が生まれました」


 子どもをリアルに描くために、小学生を対象としたアフタースクールでアルバイトも行った。


「今の子どもって、ネットが普及している影響もあるのか、すごく大人っぽい。でも善悪の判断については習っている最中なので、良いことも悪いこともしてしまう。そういう部分も、しっかりマンガで描きたかったです」


 当初は読み切りの予定だったが、編集部がこの企画に手応えを感じたこともあり、『リエゾン』は連載としてスタート。3話目以降はシナリオライターに竹村優作氏を迎え、チームで作品を作っている。


 物語を動かすのは、児童精神科医の佐山卓(たく)と、研修医の遠野志保。志保は佐山と出会ったことにより、自身の発達障害にも向き合うことになる。周りの人々に、自分が発達障害であることを打ち明けるエピソード(単行本2巻収録「カミングアウト」)は出色で、心を揺さぶられる人も多いだろう。そこには発達障害を「個性」という枠に押し込めようとする悪意のない人々が描かれており、志保の覚悟の発言は一つの話題として流されていく。冒頭のヨンチャン氏の後悔ともつながるシーンだ。


「以前の僕は、発達障害をもつ友人に、どういう言葉をかけたらいいか分かりませんでした。でも、今はADHD、自閉スペクトラム症など発達障害にもいろいろな種類があることを知っています。知識があれば、力になれなくても、寄りそうことができる。多くの人に『リエゾン』を読んでもらって、お互いの苦手な部分を補い合える関係をみんなで探っていけたらと思います」



よんちゃん/韓国出身。学生時代はアメフトをやっていた筋肉男子。2017年、「第4回THE GATE」にて『ヤフ島』が大賞を受賞しデビュー。他の作品に、スポ根×ラブコメボート漫画『ベストエイト』(全4巻)。




INFORMATION


漫画『リエゾン—こどものこころ診療所—』(1)〜(4)
講談社 モーニングKC (1)〜(3)各640円+税 (4)650円+税



(「週刊文春」編集部/週刊文春 2021年4月22日号)

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