よゐこ「挨拶ができなかった僕ら。小道具の〈たくあん〉を隠されて学んだ」濱口優×有野晋哉×清水ミチコ

4月22日(木)20時0分 婦人公論.jp


左から有野晋哉さん、濱口優さん、清水ミチコさん

片や無人島でのサバイバル生活で「獲ったどー!」の流行語を生み、〈天性の小学生〉な魅力のままの濱口優さん。片やゲーム、アイドル、アニメなどの幅広い知識でカリスマ的人気を誇る有野晋哉さん。お笑いコンビ・よゐこの唯一無二な生き方を聞き、清水ミチコさんは笑いながら「なんでだろう」を連発して——(撮影=大河内禎)

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インコが肩や頭にいっぱい乗ってきて


有野 僕、清水さんとは何回か番組でロケに行ってて。ふくろうカフェで清水さんが突然「私、ホーミーできるの」ってやり出したことあったんですけど覚えてますか。

清水 そういえば、あったねぇ。

有野 そしたら、インコが清水さんの肩や頭にいっぱい乗ってきて。気持ち悪かったー。

濱口 動物が寄ってくるなんて、すごい能力ですね。いまやってもらえたりしますか。

清水 いいよ。(ホーミーを披露)

有野・濱口 あははは。

有野 これ、文字になりますか?

清水 大丈夫。たぶん編集部が「うまい」とか書いてくれるから。

有野 モノマネも、見る側が似てると思えば似るもんですからね。

清水 そうだよ。だから「そちらで似てるところを探してください」っていつもお客さんに言ってるの(笑)。そういえば以前、東野(幸治)さんから「関西にはモノマネ芸の歴史がないんですよ」って聞いたことがあったなあ。

有野 ああ、確かに。うちの事務所の師匠のなかに動物の声帯模写をする人はいますけど、関西で誰かをモノマネする芸人って、パッと思いつかない。

清水 地域によって、馴染みのある芸がちょっとずつ違うような気がするよね。

よゐこは、大阪っていう感じが薄い


濱口 ショートコントも、僕らがデビューした当時は、大阪にはまったくなかったんですよ。

有野 ウンナン(ウッチャンナンチャン)さんを見て、おしゃれやな、と思いましたね。

濱口 だから僕らも、提灯がかかってるような劇場じゃなくて、おしゃれにライブハウスとかでやりたかった。すごい憧れてました、東京に。

清水 それでよゐこは、いかにも大阪っていう感じが薄いのかな。

有野 僕らのコント、「なんでやねん」もないですしね。

濱口 それに、デビューしたてのころはコントでも関西弁使ってなかったんです。台本は、標準語のほうが覚えやすいんで。(笑)

清水 私の世代にとって、提灯がかかってるような劇場に出てる師匠はとにかくこわいイメージがあった。笑ってても、背中から殺気を発してらっしゃる、みたいな。

濱口 わかります。僕らは松竹芸能なんで、まさにその老舗なわけです。若手のころは劇場の進行係とか、ずいぶんしましたから。

有野 そこで少しずつマナーを学んでいくんです。出番のときには、「お先に勉強させていただきます」って言うもんや、とか。(笑)

清水 言わないと、怒られるの?

濱口 めっちゃ怒られますよ。緊張して「お先に勉強させます」なんて噛んだだけで、「誰が勉強させる言うた、お前!」って。そもそも僕ら、挨拶もできなかったんですから。

清水 挨拶がイヤだったの?

有野 イヤ、とかじゃなくて、2人とも学校で部活をやってこなかったから、縦社会がよくわからないんですよ。楽屋に「おはようございます」って入るじゃないですか。で、僕らはネタ合わせしに別のところへ行く。その間、ほかの先輩が楽屋にどんどん入ってくるでしょう? で、戻ったときに先輩方が増えてても、一度「おはようございます」言うてるから、もう言わない。


本連載が書籍になった『三人三昧 無礼講で気ままなおしゃべり』

濱口 勝手な話かもしれないですけど、「挨拶は1回でええやろ」って、ずっと思ってました。

清水 どういうこと?

有野 清水さん、学校に行ったらクラス全員に「おはようございます」って言わないでしょ。教室入ったときに一度挨拶して、終わりじゃないですか。その感覚です。

清水 なるほどね。……って有野さん、妙に説得力があるけど、それやっぱりおかしいよ!

先輩からの食事の誘いも「お腹いっぱいやから」


濱口 もちろんいまやったらわかりますよ。やっぱり目合わせて、ひとりひとりに挨拶せなダメです。だけど有野はズルい。先輩方の楽屋を訪ねて行くでしょう。まず、僕がコンコンってノックする。ガチャッて開けて「失礼します、松竹芸能のよゐこです」って言うのも僕。「よろしくお願いします」って言った僕のあとに、「お願いします」だけしか言わへん。(笑)

清水 でも、そのバランスがよゐこって感じがするよね。

有野 でしょう?(笑)

濱口 視線を一斉に浴びるのも僕やし、コンコンってノックする手が痛いのも僕やし。清水さんが言うみたいに、「これがよゐこ」って感じになってるのもイヤ。

有野 「代われよ」とか「声出せ」とか、ときどき言われました。

濱口 若手のころも、劇場で兄さんのひとりに、「お前の相方、どないなってんねん」って言われたことがあるんです。「有野が挨拶せえへんかったから、俺言うたんや、『挨拶せえ』って。そんならあいつ、『挨拶は口ではしてませんけど、心でしてました』」って。

有野 先輩笑うと思ったんですけどね。「そうか」って返ってきたとき、「ヤバいな」と気づきました。

清水 でも、「よゐこだからしょうがない」っていう感じがどこかにあるのよ。これ、なんでだろう。

有野 それは、よく言われます。まだ養成所生だったころ、山田雅人さんが劇場に出てはって。まあめったにないことだったんです。同じ舞台にも立てて、みんなでお昼を食べに行くことになって。山田さんが名前も知らん僕らに「自分らも行くか」って誘ってくれはったんですけど僕、「あ、お腹いっぱいやからいいっす」って。(笑)

清水 うわあ。

有野 「あ、そうか」って山田さんは行きはったんですけど、ほかの先輩がすぐ戻ってきて、「お前ら、マジか」。(笑)

濱口 「お腹いっぱいでも、こういうときは来なあかんねんで。今日はええけど、今度はきいや」って、優しく説明してくれました。

僕らのたくあん、知りませんか


清水 でも、それこそ空気を読むっていうかさ、注意されなくてもわかりそうなことじゃん。

有野 いやあ、わかんないですよ。だってお腹いっぱいですもん(笑)。そういえば濱口もね、『めちゃイケ』で、ゲストの北島三郎さんが収録後にご馳走してくださったとき、「こっちのお肉もどうぞ」って勧められたのに、「お腹いっぱいです」って言ったって。

濱口 ナイナイ(ナインティナイン)が慌てて、「こういうやつなんで、僕がいただきます」って庇ってくれました。

清水 ヒヤヒヤする。でも、怒ってもらえるならまだいいんだよね。

濱口 いや、コントの小道具を隠されるっていう、小さいいたずらされたこともありますよ。挨拶し忘れた僕らが悪いんですけど。

有野 小道具のたくあん、隠されたんですよ。舞台上がる直前に、「ここで乾かしてたのに、ない」ってなったんです。それで、全部の先輩に「僕らのたくあん知りませんか」って聞いて回りました。

清水 挨拶しなかった罰かあ。セコいな(笑)。で、見つかったの?

有野 最終的に、舞台の袖に置かれてたような気がします。

濱口 ほかの先輩が、見かねて出してくれたんじゃないですかね。あそこで僕らは、「ちゃんとせなあかん」っていうのを学びました。

有野 もう、たくあん隠されたくないんで。(笑)

全部わが身に返ってきた


濱口 自分が先輩と呼ばれる年齢になるにつれて、「あ、先輩からは全部丸見えやったんやな」というのがわかるようになってきましたね。若手が集まって挨拶するとき、前方の子たちは大声で「おはようございまーす!」って言うじゃないですか。奥の子は口だけ動かしてたりするんです。自分もだいぶ奥にいるほうでしたから。

清水 若手にジェネレーションギャップを感じることはある? 第7世代くらいの年齢だと、「お腹いっぱいなんで」って言いそう。

有野 若手は、車に乗りこむとまずスマホを触りますね。「ここ、みんなでしゃべりたいとこだけどなあ」って思うことはあって、コミュニケーションの場が少なくなってる感じはしています。

清水 「お前、スマホ見てないで、俺としゃべれよ」なんて注意しにくいしね。

有野 そんな寂しがりやの先輩、こわいですよ。(笑)

濱口 自分らがやってきたことが、いまになって全部返ってきてるのかもしれないです。やっぱり挨拶してくれへんかったら寂しいですし、楽屋にきてくれたら素直に嬉しい。「ああ、ええ子らやん」って思います。「あれ、いまあの先輩には挨拶したのに、僕のこと素通りした?」って気になりますもん。

清水 わかる。自分が挨拶する側だと「煩わしくないかな」とか考えちゃうけど、される側になると嬉しいものなんだよね。

濱口 歳の離れた師匠もこわいわけじゃない。あるとき気づいたんです。「別に僕の話せんでええねや」って。大先輩のお話は聞いてるだけでいい。いまはなるべく横に座るように心がけてます。

清水 処世術!

有野 すごいな、と思うのは、どんな先輩でも横に行くと、「どうぞ」って言ってくれること。新幹線で「横いいですか」って聞くと、「おお、ええよ。どうした?」って絶対言ってもらえる。だから、なんでもない質問をずっとぶつけてます。で、機嫌ようしゃべってはるから、「話長いですね」って言ったら怒られましたけど。

濱口 ま、最終的に怒られるっていうところは、ずっと変わりないですね。(笑)

〈後編につづく〉

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