福崎九段 46年半の棋士人生に幕 十段、王座を獲得した現役最年長棋士 大盤解説の話術でも人気
2025年4月22日(火)18時46分 スポーツニッポン
十段(現在の竜王)、王座を獲得した現役最年長棋士・福崎文吾九段(65)が22日、大阪府高槻市の関西将棋会館で、藤井聡太竜王(22)=王将など7冠=がタイトルホルダーの第38期竜王戦6組昇級者決定戦に臨み、有森浩三八段(62)に90手で敗れた。福崎は規定により、1978年10月に四段昇段して以来の現役を引退した。
「この年になると平常心ですね。1局増えても減っても。すごく幸せでした」
有森も規定により負けると引退という、現役続行を懸けた大一番。日本将棋連盟によれば、ここ10年はなかった条件下での対局だった。
新会館で迎えた最終対局。福崎が本拠とした関西将棋会館は大阪市阿倍野区から福島区、そして高槻市への移転も無事完了。女流の発展を見届けられたことも「すごく幸せ」の要因に挙げた。
谷川浩司十七世名人(63)と同じ関西を拠点に同世代で競い合ってきた。1991年度王座戦はその谷川に挑戦。2勝2敗で迎えた最終第5局は千日手指し直しの末に勝利した。
その対局中、「こちらがハアハア言いながら指してたら、谷川さんがスペアのお茶を持ってて“飲みますか?”と。敵に塩を贈ってくれたわけだけど、それで私にいい手が思い浮かんで勝てた。やっぱり谷川さんは違う。相手が弱っているのも嫌で、美学のある人だった」。大盤解説の名手は35年前にもらった塩を返すことを忘れなかった。
この日、花束を手渡した浦野真彦八段(61)は「ギャップがすごかった」と振り返った。どんな聞き手も笑いに包む話術、一方で対局中の集中力。思い出すのは奨励会時代、「負けたら死ぬくらいの真剣さでした。棋士になっても追い込んで指された」。相矢倉へ進んだこの日と同様、昭和の香りがする棋士だった。
「(名人挑戦権を争う)A級には行けなかったが、タイトルを取れてフリークラスも経験した。一通り味わえた。私の人生にとってマイナスではなかった」
棋士人生を総括したが、5月9、10日、大阪府泉佐野市「ホテル日航関西空港」での藤井に永瀬拓矢九段(32)が挑む名人戦第3局では立会人を務める。