「夜の生放送」に活路を見い出すテレビ朝日 その狙いは?

4月23日(日)7時0分 NEWSポストセブン

『中居正広のミになる図書館』は生放送に(公式HPより)

写真を拡大

 4月の番組改編で、他局とは違った動きを見せたのがテレビ朝日だ。最近ではめっきり数が減った夜の生放送番組を相次いで投入しているのだ。その狙いについてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。


 * * *

 22、23日に報道・情報番組『サタデーステーション』『サンデーステーション』(ともに20時54分〜)がスタートします。さらに、18日には『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』(23時15分〜)がスタート。つい先日までその時間帯に放送されていた『中居正広のミになる図書館』がゴールデンタイムに移動(20時〜、初回は19時〜2時間SP)して、24日にスタートします。


 3番組の共通点は生放送。現在、民放各局でゴールデンタイムに生放送されているのは、『ミュージックステーション』だけであり、いかに異例であるかが分かります。しかも、これらの番組を制作しているのはすべてテレビ朝日。なぜ他局が避ける生放送という独自路線を進もうとしているのでしょうか。


◆生放送ならではの緊張感とハプニング


 ネットの普及でクレームが寄せられやすくなり、コンプライアンスへの配慮が求められるなど、以前よりも放送内容の精査が必要な時代になりました。当然ながら生放送は編集ができないため、その精査はすべて事前に行わなければいけませんし、時間やカメラワークなどのミスも許されません。


 さらに、コメントも一発勝負。シンプルにズバッと言わなければいけないため、出演者にかかるプレッシャーは収録の比ではなく、実際「あんなことを言わなければよかった……」「あっちのギャグならスベらなかったかも……」と後悔するタレントをよく見かけます。


 そんなハードルが高く、リスクの大きい挑戦に挑む最大の理由は、「生放送ならではの緊張感とハプニングが期待できる」から。


 たとえば、その日のタイムリーなニュースを伝える『サタデーステーション』『サンデーステーション』は、トラブルの心配こそ少ないものの、“インフルエンサー”(世間への影響力を持つ人)という一風変わった肩書きで出演するディーン・フジオカさんの言動には、いい意味での緊張感があります。世界をまたにかけて活躍し、3児の父でもあるディーンさんが、生放送でどんな表情とコメントを見せるのか? さまざまなニュースをどう斬っていくのか? まったく読めないだけに、通常の報道・情報番組とは異なるワクワク感があるのです。


『中居正広のミになる図書館』は、メイン企画の「ジェネレーションチャンプ」がクイズ形式で、中居さんを中心としたトークパートも多いだけに、ハプニングの期待大。クイズを楽しむだけでなく、「インテリタレントがまさかのおバカ回答」「イケメン俳優が思わぬ失態」などの珍シーンが見られるでしょう。


『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』は、「ミステリー」「豪華客船」「釣り」「ドローン」「部族」という5つの視点で世界を駆けめぐる冒険バラエティー。冒険の様子を収録した映像が中心ですが、毎週世界のどこかと日本のスタジオを生中継でつなぎ、言葉を交わすシーンが目玉となっています。スタジオの出演者が芸人、アイドル、プロレスラーなど生放送に慣れていないメンバーだけに、ネットニュースになるような迷言が飛び出すでしょう。


◆芸能人と同じ時間につながる一体感


 テレビ朝日が、夜の生放送に挑むもう1つの理由は、録画視聴が増えたことへの対策。視聴率を獲得するためには「リアルタイムで見てもらう」ことが絶対条件であり、それには生放送がいいというわけです。


 一方、視聴者から見た生放送のメリットは、「テレビを通して芸能人たちと今、同じ時間につながっている」と感じられる一体感。テレビ画面の中にいる芸能人と同じタイミングで笑い、クイズなら好きな芸能人を応援し、失敗したら一緒にガッカリするなどの楽しみが得られますし、思わずツイッターに書き込みたくなる人もいるでしょう。また、「スタッフの判断でコメントやギャグがカットされることがない」ため、好きな芸能人のありのままの姿を見られるのもうれしいところです。


 このような生放送ならではのライブ感を生み出すためには、相当な努力と覚悟が必要。出演者は台本を完璧に叩き込むだけでなく、アドリブ力を磨かなければならず、スタッフは入念なリハーサルに加え、不測の事態に備えておかなければいけません。そんな努力と覚悟が何となく分かるからこそ視聴者は、「生放送はリアルタイムで見よう」という気持ちが持てるのではないでしょうか。


 中居さんが、「もっとテレビが面白くなるために」と生放送にかける思いを明かしていたように、「生放送をリアルタイムで見てもらうのが一番面白い」という考え方は、テレビ放送の原点。テレビ朝日の果敢なチャレンジが実を結び、他局が追随するような展開になれば、視聴率の低迷が叫ばれるテレビ業界に活気が戻ってくるかもしれません。


【木村隆志】

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。

NEWSポストセブン

生放送をもっと詳しく

BIGLOBE
トップへ