劇場へGO「松竹新喜劇 陽春公演」(27日まで、大阪松竹座)
2025年4月23日(水)16時44分 スポーツニッポン
松竹新喜劇の代名詞と言っても過言ではない「人生双六」に、往年の名作「二階の奥さん」の2本立て。
「二階の…」は、初めて見たが素直に笑えて「ええ話やなあ」とほっこりする芝居だった。今どきではちょっと考えられないが、空いてる2階に「仮住まいの夫婦が住んでいる」という設定が昭和らしい。
ストーリーは仕事で成功している吾平(曽我廼家寛太郎)が、新婚の息子・照三(曽我廼家一蝶)の嫁(戸田ルナ)よりも若い真由美(能勢優菜)と再婚したことで始まるドタバタ喜劇。吾平は照れくさくて息子に言い出せなかったが、遠くに住んでいる息子が帰省するというから、さあ大変。2階の奥さんがしばらく留守にしていたのをいいことに、真由美をその2階の奥さんに仕立て上げ芝居を打つのだが…という展開。
息子の嫁・ユキ子を演じた戸田のおかしさに笑わされ、寛太郎の安定したボケっぷりにふき出し、劇場は大人にまじって、子どもであろう笑い声もこだました。そしてクライマックスで放つ息子のセリフが胸を打つ。「案ずるより産むがやすし」。いややなあ、と気がめいっても、一歩踏み出してみればそうでもなかった…。どんな人にも1度はそういう経験があるはず。そういうことに改めて気付かされる、優しい1本だ。
「人生双六」は運に見放された男2人を描く名作。一人は成功をつかみ、一人はいまだ迷子のまま。どん底だった2人が5年後、再会の約束をしたことから始まる物語だ。藤山寛美も当たり役とした宇田信吉役を孫の藤山扇治郎が、成功した浜本啓一を、映画「侍タイムスリッパー」のヒットで一躍時の人となった田村ツトムが好演。ある意味、この物語で最も重要な役とも言える浜本の妻・真砂子を演じた曽我廼家いろはの、にじみ出るような演技が見る者の心を打った。松竹新喜劇は名女優の存在が欠かせない。さらなる研さんを積みその頼もしい存在になって欲しい。4月27日まで。