「保守派」とオカルトや偽史との奇妙な親和的関係

4月24日(月)16時0分 NEWSポストセブン

評論家の呉智英氏

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 近頃、保守派の論客と紹介されることがある評論家の呉智英氏だが、実は保守派と呼ばれるのを好まない。それというのも、オカルトや偽史に対して、保守派の人たちが親和的でありすぎるからだという。江戸時代からみられる具体的な実例をあげながら、保守とオカルトとの奇妙な親しさについて、呉氏が解説する。


 * * *

 最近「保守」がトレンディらしい。私も筆者紹介などで保守派の論客と書かれることがある。どうもお世辞のつもりらしい。他人が何と評そうと勝手ではあるが、私自身で保守派と称したことはない。私は自分の思想を「極左封建主義」と言っている。極左と封建主義がつながらないと思うのは思想史を知らない人の話で、王龍渓や李卓吾などは陽明学左派と呼ばれるし、禅学左派という名称もある(荒木見悟『仏教と儒教』など)。まあ私の場合は、極左冒険主義をもじった言葉であるのだけれど。


 私が保守派と呼ばれるのを好まないのは、この人たちがオカルトや偽史に親和的だからだ。江戸期には平田篤胤が神代文字を称えている。日本固有の古代文字だと言うが、どう見ても朝鮮のハングルだ。韓国で盗作問題となりはしないかと、私はひやひやしている。


 竹内文書という偽史文書もその一種だ。トンデモ本の古典として有名である。そんな竹内文書の本を書評欄で大きく紹介している保守系の全国紙がある。産経新聞だ。一月七日付書評欄に「『竹内文書』で読み解く史実」とあるけれど、どんな史実だろう。虚言師の書いた慰安婦強制連行記がおかしな“史実”を作り出したことを忘れたのだろうか。


 産経新聞は以前からオカルト記事を掲載してきた。古くは1991年に、教育欄で「早期超能力教育」を薦める連載があった。1995年のオウム真理教事件の時には、吉本隆明の「麻原彰晃を高く評価する」という妄論を載せ、さすがに読者から批判が殺到した。


 産経新聞社からはオピニオン誌「正論」が発行されているが、そのムック版が「別冊正論」である。昨年十一月刊行の「別冊正論28」は「霊性・霊界ガイド特集」だ。巻頭カラーページは、タレント壇蜜のインタビューで始まる。和菓子職人、エンバーミング(死に化粧)、霊界が描かれたマンガやアニメ、「セクシーな死に方」…。なんだかよく分からない。次いで仏教マンガがカラーを含んで三十ページ。これは仏教書専門の出版社から出ている宗教マンガの抜粋再録だが、どうやら昭和二十年代刊行のものらしい。キッチュ感が逆に新鮮であるけど。


 科学の装いをまとったオカルトも登場する。産経本紙でもおなじみの遺伝子学者村上和雄は「心の働きによって遺伝子のスイッチがオン・オフになる」と言う。そんなことが可能ならすべての遺伝病は簡単に治るし、人種問題も一気に解決するだろう。「人は死なない」と主張する救急医矢作直樹も当然のように登場する。私は、死んでもいいから、この医者だけには診てもらいたくない。


 この「別冊正論28」は、刊行半年の今も産経新聞に広告が出ている。売れ続けているからか、売れ残っているからか。


 論語述而篇にこうある。「子は怪・力・乱・神を語らず」。孔子は、怪異、暴力、乱倫、神秘を語ることはなかった。古代の支那人の方が知的で健全であった。


●くれ・ともふさ/1946年生まれ。日本マンガ学会前会長。著書に『バカにつける薬』『つぎはぎ仏教入門』など多数。


※週刊ポスト2017年5月5・12日号

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