人は減り、鹿は増える
2025年4月24日(木)19時36分 スポーツニッポン
【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】母親の一周忌で北海道釧路市に帰省中、地元紙が「釧路短大が学生募集停止」と1面で報じていた。
1964年に釧路女子短期大学として開設され、これまで約5000人の卒業生が幼稚園の教諭や保育士、図書館司書、栄養士などとして地元を中心に活躍。昨年60周年を迎えたが、募集停止の最大の理由は若年人口の減少もあって、1学年100人の定員割れが近年続いていたこと。25年度は67人。2年後の閉学もやむなしか。
漁業、炭鉱、製紙の主要産業が軒並み衰退していったことが響いて、1980年には22万7000人を数えた人口も現在は約15万3000人。札幌、旭川、函館に次いで道内4番目だったが、いまや苫小牧、帯広の後じんを拝して6番目に落ちている。かつての繁華街はさびれ、まるでゴーストタウン。活気ある時代に高校生まで過ごした筆者にとっても寂しい限りだ。
人間は減ったが、逆に増えているのが鹿だ。一周忌法要で訪れた市内の寺の入口に大きな鹿が3頭もたむろしていた。人慣れしているのか、人間を見ても逃げるそぶりも見せず落ち着いたもの。おいしそうに新芽を食していた。聞けば、ここだけでなく、市内のあちこちに群れが見られるという。
ふと思い出したのは阪本順治監督(66)の「大鹿村騒動記」だ。2011年7月16日に封切られ、主演の原田芳雄さんは公開3日後に71歳で死去。遺作となった1本だ。
重要無形民俗文化財に指定される大鹿歌舞伎を題材にした涙あり笑いありのヒューマンドラマ。長野県大鹿村にロケ取材で訪れると、村の商店で鹿肉がいっぱい売られていた。
三国連太郎さんと長男の佐藤浩市(64)も親子で出演していた。2014年に90歳で永眠した三國さんの十三回忌が命日の4月14日に東京・調布市の角川大映スタジオで営まれたが、心温まる集いだった。
佐藤が三國さんとゆかりのある人に声をかけて実現。三國邸に押しかけては頻繁に飲んでいたという小林薫(73)や渡辺えり(70)、三國さんと佐藤、そして三國さんにとっては孫に当たる寛一郎(28)の3代にわって共演経験のある石橋蓮司(83)、さらには「釣りバカ日誌」シリーズなどで共演した浅田美代子(69)ら約400人の関係者が出席して希代の名優をしのんだ。
三國さんに何度かインタビューする機会があったが、帰りしな、いつも「親父さんによろしく」と声をくれてくれた。同じ佐藤姓のよしみもあったのかもしれない。その親父も13年に同じ90歳で逝った。7月に七回忌を迎える。鹿は山に帰っているだろうか。