有村架純、役者同士で芝居について「細かい話はあんまり多くはしないようにしてる」ワケとは
2025年4月25日(金)8時0分 マイナビニュース
●『花まんま』だから描ける世界観
映画『花まんま』が、きょう25日に公開となった。同作は朱川湊人氏により、第133回直木賞を受賞した同名短編の実写化作。ある兄妹の不思議な体験を描いた物語で、表題の「花まんま」とは、子どものままごと遊びで作った“花のお弁当”を意味し、大切な人へ贈り届けるキーアイテムとなる。
今回、同作で加藤フミ子役を演じた有村架純にインタビュー。フミ子の熱血漢な兄(兄やん)・加藤俊樹役を演じた鈴木亮平の印象や、幼い頃から自分の中に他人の記憶があるフミ子という役どころをどのように捉えていたのかなどについて話を聞いた。
○フミ子という人物に抱いた印象
——本日はインタビューのお時間をいただき、ありがとうございます。最初に、脚本を読んだときの感想から教えていただけますか。
久しぶりにこういったヒューマンストーリーに出会ったなという感覚がありました。クスッと笑うこともできて、『花まんま』だから描ける世界観というのでしょうか。カラスと話せる太郎さん(※)のような人が登場したり、ファンタジー要素もあるのですが、なんの引っかかりもない。『花まんま』という世界観が完成されていたのがすごく印象的でした。
※フミ子の婚約者で、動物行動学の助教・中沢太郎(鈴鹿央士)は、カラスの研究に没頭するあまり、カラスと会話できるようになった。
——キャストコメントで、酒向芳さんが「これほど涙を流した本はこれまでにあったかな? →記憶を辿ってもなかった」、キムラ緑子さんが「泣き過ぎでは? と思うくらい泣きました(笑)」とおっしゃっているのを読んで、そんなに泣く映画ってどんなものだろうと思いながら、試写会に伺ったんです。
はい。
——もう大号泣でした。隣で観ていた男性の方もめちゃめちゃ泣いてて、全く面識はないけど、心の中で「これは泣いちゃいますよね……」と語りかけていました。
うふふ(笑)。
——自分には兄妹がいないので、共感の涙ではきっとなくて。それなのに、あんなにも泣けたのは、フミ子の強さに胸を打たれたところもあるのかなと。冷静に考えると、別の人の記憶があるってすごく怖いことだけど、フミ子はそれを受け入れているのがすごいなと思いました。
フミ子は幼い頃から、喜代美さんの記憶があるのは当たり前のことだと思って生きてきて、たぶん、この先もずっとその記憶と一緒に生きていくんだろうなということも想定した上で、生活を送ってて。なので、喜代美さんの存在に対する恐怖みたいなものも、あまり感じなかった。そこがフミ子のすごいところだなって。脚本を読みながら、何が起きても動じない強さを感じましたし、弱いところが1ミリも見えなかったので、強い意志を持って人生を歩んできたということが想像できるキャラクターだなと思っていました。
——強い意志を持っているからだと思うのですが、フミ子は何か思うことがあっても、スッと心の中にしまい込んでいるというか、胸の内をあまり言葉にしない人だなと。表情で語るシーンも大変印象的でした。
兄やんを思うことだったり、繁田家を思うことだったり、太郎さんを思うことだったり。きちんと組み立ててやらないと、さらっとしちゃうというか。それはちょっと怖かったので、特に雑にならないように意識していました。
○好きな登場人物は?
——兄やん、フミ子はもちろん、登場人物それぞれの個性が光っていて、全員が魅力的でしたが、有村さんは誰がお好きでしたか?
私は太郎さんですかね。鈴鹿くん自身もすごく柔らかくて、トゲのない丸い人なんですけど、太郎さんもまさにそういうキャラクターで。でも、つかみどころがなくて。とても純度の高いキャラクターで、ある意味ではちょっと変な人でもあるんですけど(笑)。
——カラスと会話できますし(笑)。
はい(笑)。そういうちょっと個性的な感覚で、自分の世界観の中で生きているのが、とても魅力的だなと思います。
●鈴木亮平と共演してみて感じたこと
——登場人物でいうと、鈴木亮平さん演じる兄やんが本当に素晴らしくて。兄やんは鈴木亮平さん以外はあり得なかったと思わせる説得力がありました。今作が初共演だったと思うのですが、共演してみて、いかがでしたか?
以前から実直でストイックな印象があったのですが、器用か不器用かで言ったら、きっと不器用なタイプの役者さんなのかなというふうに思っていて。だからこそ、ご自身が納得するまで勉強して撮影に臨まれていると思うんですけど、そういうおごらない姿勢や熱さを風格から感じるというか、にじみ出てくるものがあるので、その説得力みたいなものを感じました。
——お芝居について、何か話し合ったりはされましたか?
お芝居については深く話さなかったんですけど、それはなぜかというと、言葉を尽くしすぎるとちょっと昇華されちゃう部分が私の中ではあって。秘めていたほうが新鮮味を残せるといいますか。なので、役者の方々と、お芝居について細かい話はあんまり多くはしないようにはしてるんですね。亮平さんからもお芝居に対しての話はなかったので、お互いに身をゆだね合って、信頼し合って撮影していました。
○撮影現場は「コテコテな関西の匂いがしていました(笑)」
——個人的な話なのですが、関西出身の身としては、キャストの皆さんの関西弁もすごく心地良かったです。撮影の合間も皆さん、関西弁でお話されていたんですか?
キャストの皆さんはほとんど関西出身で、プロデューサーも監督も関西出身の方だったので、コテコテな関西の匂いがしていました(笑)。
——作中でも、話をちょっと盛って話したり、普通の会話なのにボケとツッコミの役割を自然と担ったり、コテコテな関西の匂いを感じるシーンがあったのですが、東京に出てきて初めて、あれは関西ならではだったんだなと思いました。関西人は、ならではの合いの手がありますよね。
確かに、おもしろおかしくではないけど、場の空気をほぐすために関西弁を使ったりすることはありますね。例えば、誰かがミスしちゃったなっていうときに、そこで関西弁を使うと、ちょっとだけ場が和むというか。そういうパワーがあるなと思っていて。ただ、関西弁がきつく感じる方もいるじゃないですか。なので、みんながみんな好きなわけではないっていうのは、ちゃんと理解した上で使います(笑)。
——関西弁に慢心していた部分があるので、心得ます……(笑)。
そこのおごりには気をつけないといけません(笑)。
○不思議体験をしたことはある?
——今作は別の誰かの記憶があるという不思議な体験が描かれていますが、有村さんは何か不思議体験をされたことはありますか?
そうですね……古着屋さんで買ったイヤリングがあるんですけど、そのイヤリングを失くしたと思ったらまた出てきて、また失くしたと思ったら今度も出てきて。絶対失くならないイヤリングが1個あります。
——それは不思議ですね!
ちょっと怖いんですけど(笑)。でも、必ず戻ってくるんですよ。それはちょっと不思議です。
——古着屋さんで買ったものというのがまた、背景を勘繰ってしまいますよね。貴重な不思議体験のお話ありがとうございました。では最後に、『花まんま』の見どころを改めてお願いいたします。
観て頂いた皆さんが感情移入していただけるヒューマンストーリーができました。どの世代の方にも家族という形で親和性があるのではないかと思っていて、懐かしい気持ちになったり、いろんな目線で観られる作品なので、心をほぐしたい方にぜひ観ていただきたいなと思います。
(C)2025「花まんま」製作委員会 配給:東映
■プロフィール
有村架純
1993年、兵庫県生まれ。2010年に俳優デビュー。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』(17)、映画『花束みたいな恋をした』(21)、Netflixシリーズ『さよならのつづき』(24)など多数出演。今年は映画『ブラック・ショーマン』の公開が控えている。