女性皇族と海外王室の「縁談」 英・タイ王室で考えてみた

4月25日(火)7時0分 NEWSポストセブン

女性皇族方のご活躍が期待される 時事通信社

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 天皇陛下の譲位実現に向けて国会がまとめた議論では「女性宮家創設」に言及した。今後、女性皇族方のご活躍がますます期待される中、前衆議院議員の村上政俊氏による一つの試論を紹介する。


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 天皇陛下は、譲位の叡慮が強く滲んだ昨年のお言葉の中で「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ」ると述べられた。


 旧宮家からの皇籍復帰にしろ、衆参正副議長が先月とりまとめた国会各会派の議論の中で触れられた女性宮家創設にしろ、皇統の永続を願う気持ちから出発しているという点では一致しているのかもしれない。


 そこで焦点の一つとなるのが女性皇族のご結婚だ。未婚の内親王、女王殿下は御年35歳の彬子女王殿下を始めとして7方おいでになる。


 敬宮愛子内親王殿下以外の方々は既に成年を迎えられ、例えば眞子内親王殿下は公務としてお一人でエルサルバドル、ホンジュラス、パラグアイをご訪問になるなど、それぞれのご活躍ぶりは大きな注目を集めている。


 ご結婚ということになれば一人の国民としてはお幸せを祈るばかりだが、議論が巻き起こっているのも確かだ。男系派の中では旧宮家の男系男子とのご結婚を望む声があるし、女系派はご結婚を機に女性宮家をと考えているようだ。


 その中で、まったく忘れられている論点がある。唐突に聞こえるかもしれないが、頭の体操として皇族方の海外王室への御輿入れを考えてみたい。世界的に見るとロイヤルファミリーの交流が結果的に国を資する例は多い。また、これから述べるように戦前の日本でも同様の発想はあったし、中世ハプスブルク家が王女を欧州各国に嫁がせて国家の安全保障と発展につながったという事例もある。


 実は、神話以来の皇室の歴史の中で海外王室との縁談は何度か浮上し、実現したものもある。明治初期、ハワイのカラカウア国王は、姪の王女と皇族の結婚を提案したものの、明治政府は断っている。アメリカ併合より前のハワイ王国は、迫り来る国家の危機を乗り切るために日本との合邦を模索し、皇室との婚姻で後ろ盾を得ようとしたのだ。


 成立した縁談としては朝鮮国王だった李王家への輿入れが挙げられる。梨本宮方子女王と李王世子(跡継ぎ)垠との結婚は内鮮一体の象徴として当時大変持て囃された。満洲国との縁談も皇弟愛新覚羅溥傑に嵯峨侯爵家の令嬢浩が嫁ぐという変則的な形で実現した。


 皇族が嫁ぐことができなかったのは、旧皇室典範によって皇族女子の婚姻相手は皇族、朝鮮の王公族、華族に限定されていたためだ。そこで白羽の矢が立ったのがのちに「流転の王妃」として知られる浩だった。皇族ではなかったものの、貴種が外国との友好のために架け橋となった例である。


 また、エチオピア皇太子と華族子女(黒田広志子爵の娘雅子)の縁談も進んだが、エチオピア進出を目論んでいたイタリアと日本に同盟関係が成立したことでご破算となっている。ここまで話を進めて来て、読者の中には何を昔の話をと思う向きもあるかもしれないが、今こそチャンスが訪れているのだ。


 GHQ占領下で皇室典範が改正を余儀なくされたことについて私は否定的だ。しかし逆転の発想を持てば、皇族女子の婚姻対象を限定した旧典範第39条が廃止されたことで、戦前は不可だった海外王室との縁談に道が開けたとみることができる。


 現在の皇族女子がもし海外の王族とご結婚された場合、我が国と相手国は極めて強固な信頼関係で結ばれる。こうした“ロイヤルファミリー外交”は、共産主義国家中国はもちろん、初代大統領ワシントンが国王となることを拒絶したことで“王国になり損ねた”同盟国アメリカにも真似できない。


 相手国に実際にご婚姻の対象となる王子殿下がいらっしゃるかどうかはいったん横に置いた上で、頭の体操をしてみたい。


 まず女性皇族のどなたかがイギリス王室に嫁がれるというケースを考えてみる。イギリスは我が国にとって近代立憲君主国家としての第一の範であり、昭和天皇が皇太子であらせられた時のご訪英では、当時の国王ジョージ5世と立憲君主の在り方について親しくご懇談になるなど皇室とイギリス王室の関係は深い。皇族にはオックスフォード大学に留学のご経験がある方も少なくない。


 タイ王室との縁談はどうか考えてみよう。例えば眞子内親王殿下は幼少の頃からナマズの研究で有名な秋篠宮殿下のタイ訪問にご一緒されるなど慣れ親しんだ地だ。また皇室とタイ王室は古くから交流が続いており、今年3月には天皇陛下がプミポン前国王の弔問のため、ベトナム国賓訪問の帰路にわざわざバンコクの王宮をご訪問になった。


 そんなタイ王室に触手を伸ばすのが中国だ。タイ王室の親中派筆頭はワチラロンコン新国王を上回る人気を誇るシリントン王女だ。訪中歴は30回を優に超え、世界の王族はおろか非王族を含めてもここまで中国に足を運んでいる要人はほとんどいない。


 タクシン首相退陣以降は内政の混乱が続いたものの、元来タイは東南アジアの優等生だ。そんなタイに皇室と王室のご縁があれば、中国?タイの関係に楔が打ち込まれ、我が国の安全保障にとって重要な意味を持つ。


 ソフトパワーによって我が国の世界におけるイメージを高めようとクールジャパンや観光立国といったコンセプトが注目を集めているが、世界でも類を見ない歴史を持つ皇室は我が国のソフトパワーの最たるものだ。


 もし海外王室とのご縁があったら、私はそれを諸手を挙げて喜びたいと思う。こうした良縁は歴史を紐解けば、結果として国を守ることになるだろう。


●むらかみ・まさとし/1983年大阪市生まれ。東京大学法学部卒。2008年4月外務省入省後、北京大学、ロンドン大学に留学し中国情勢分析などに携わる。2012年12月〜2014年11月衆議院議員。現在、同志社大学嘱託講師、皇學館大学非常勤講師、桜美林大学客員研究員を務める。著書に『最後は孤立して自壊する中国 2017年習近平の中国』(石平氏との共著、ワック刊)がある。


※SAPIO2017年5月号

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