【劇場アニメレビュー】劇場舞台挨拶は写真撮影もOK!? 京アニらしい丁寧な作りが光る『劇場版 Free!-Timeless Medley-絆』

4月26日(水)16時0分 おたぽる

劇場版 Free!-Timeless Medley-』公式サイトより。

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『劇場版 Free!-Timeless Medley-絆』を公開初日に都内シネコンにて観賞。乙女たちに人気のあるこの手のイケメン男子大活躍の作品は、なるべく平日の空いている時間帯に見るように心がけているのだが(だっておじさん恥ずかしくて……)、今回は〆切の関係もあるのでやむを得ない。

 で、夜の回のチケットを取ろうとしたら、案の定ほぼ満席ではあったが、後方右寄りの席が空いてたので何とかセーフ。いやはや、ファンの意気込みという点においては、決して『劇場版名探偵コナン』にも『美女と野獣』にも負けていない。

 で、場内に入ると、これまた案の定ほとんど全てが10〜20代の若い女の子ばかりで、男なんて10人いるかいないか(しかも私以外はみんなカップルの連れ合いだ)。私の四方八方もすべて若い女の子。中にはアジア系のグループもいて(韓国語っぽかったな)、乙女アニメがワールド・ワイドになったのか、そもそも国産アニメ全体がそうなのか(もちろん後者だと確信しているが)、とにもかくにも場内は暗くなる前から大賑わい。

 で、映画泥棒CMが終わって、ようやく本編……かと思いきや、この手のアニメによくあるファン・サービスの短編がついていて、まあいつものことかと思っていたら、前の前の席の女の子がいきなりスマホの電源を入れ、銀幕画面にカメラのレンズを向け始めた。
「おいおい、これって映画泥棒じゃないのか?」
 と、注意しようと思った瞬間、他の女の子たちも数名、やはりスマホを取り出して、画面にカメラを向け出したのだ。

 そんな馬鹿な? と、一瞬わが目を疑った。なぜなら私の数十年に及ぶ映画観賞の経験則において、上映中のマナーが一番良いのはアニメ・ファンだからである。彼ら彼女らは本当に見たいものを見たくて劇場に来ているから、予告編の間まではかなり騒がしくても、いざ映画が始まるやピタッと静かになり、画面を食い入るように見始め、同化していくのが常だからである(ちなみに一番鑑賞マナーが悪いのは、意外にもミニシアターに集う一見インテリ・シネフィル系の連中。上映中にコンビニのレジ袋をがさごそさせたり、スマホ・チェックを始めたりと、かなりタチが悪いです)。

 しかし、やがて画面から『Free!』キャラの誰だったか失念したが(周囲の状況に慌てふためき、しばし画面に集中できないままでいた!)、「さあ、これから写真撮影だよ!」みたいなことを言い出すや否や、場内の乙女たちが一斉にスマホを取り出し、写真撮影を始めていったのである。

 そう、今回の作品のファン・サービス短編は、いわば“舞台挨拶”であり、決められた時間内の写真撮影が自由という前代未聞の試みだったのである。しかもこの短編、週替わりで計4本はあるそうで、つまりキャラを替えての舞台挨拶を目当てに4週間、ファンのみなさまは劇場に通うお楽しみができたというわけだ。

 アニメ映画通例でもある週替わりグッズ配布サービスの転売問題なども時折聞く昨今、これに関してはもう絶対に映画を見ないと体感できないものだけに、その点ではユニークな趣向といえよう。

 ただし写真撮影タイムが終わっても、このまま映画泥棒し始める子がいるのでは? と少し不安に思ったが、やはりアニメ・ファンはマナーがいい。さすがに撮影タイムが終わって割かしすぐに本編が始まったので、若干電源を切るのに戸惑っている子は結構見受けられたが(このあたりは製作サイドも今後の課題かなとも思う)、しばらくするともうみんな一斉に画面に集中し、以後はほとんど物音も立たないほどの集中モード。

 ただし、笑える場面や泣ける場面では、みんなちゃんと素直に反応してくれるので、結果としてはすこぶる心地の良いライヴ感覚の映画観賞を堪能できたのであった(いや、一瞬でも乙女のみなさんを疑ってしまってすみません。他の劇場もみんなこうあってくれるといいなと願う次第)。

 と、ほとんど映画のことを記していないので、一応紹介しておくと、本作は高校生男子水泳部に所属する面々の青春群像を描いたTVアニメーション『Free!』シリーズ(第1期13年7〜9月、第2期14年7〜9月)の中から、第2期『Free!-Eternal Summer-』後半を基に再構築したもの。いわゆる総集編映画ではあるのだが、そこはそれ、制作が京都アニメーションなだけに、大本の出来が良ければダイジェストもそこそこ面白いという道理に背くことのない、というか実にうまい構成で映画そのものとしてのダイナミズムを堪能できる快作に仕上がっている。

 今回の構成のポイントとなるのは、岩鳶高校3年生となった主人公の七瀬遙、通称ハルと、その親友・橘真琴、通称マコとの友情の絆で、幼い頃からの両者の交流はどことなく恋人同士のようにも映え、特に終始クールを装うハルに接するマコの姿勢は、どことなく筋肉をまとった女子のようにも映え(かといって絶対にあちらの世界へ行くことがないのが、本作の美徳ともいえるだろう)、その不可思議な関係性がプールの水の美しい描出などとも呼応して、男の子の思春期そのもののみずみずしさを醸し出している。

 また、後半はハルのライバルでもある松岡凛、通称リンとの交流に多くを割くことで、小学校6年生のときの水泳仲間たちに絞った麗しき友情劇までも心地よく浮かび上がっていく。

 もちろんその分、他のキャラクターがおざなりになった部分は総集編映画として致し方ないところだが、そこをつつくのは野暮というもの。むしろ、いつもながらに安定したレベル以上のものを供給し続ける『Free!』および、京都アニメーションの実力に瞠目すべきであろう。

 個人的には第1期からストレートに進んでいく映画版『Free!』を数回に分けてでもじっくり見たかったところだが(そうすれば、彼らの中学時代を描いた『映画ハイ☆スピード!-Free! Starting Days-』(15年)とも、映画的にうまく連結できるのに)、これはこれで実にクオリティの高い作品として、大いに評価したい。

 7月1日にはリンの幼なじみで彼のいる鮫柄学園に転校してきた山崎宗介を主軸に据えた『Free!-Timeless Medley-約束』が劇場公開されるが、次も構成の妙をたっぷり堪能することにしよう(ただ、次も“舞台挨拶”をやるのなら、ぜひとも上映前にアナウンスしてほしい。今回はそんな催しがあるなんて露も知らなかったもので、いざ写真タイムが始まって慌ててスマホの電源を入れたものの、起動するまで時間がかかり、結局1枚も撮れなかったので……)。
(文・増當竜也)

おたぽる

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