『けものフレンズ』でブレイクした「irodori」・たつき監督の軌跡 「自主制作アニメが盛り上がっていくといいなあ」

4月27日(木)18時0分 おたぽる

画像:「irodori」公式サイトより

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 TVアニメ最終話の放送から1カ月が経過しようとしている『けものフレンズ』。だが、放送終了後も次々とコラボ企画、多様なグッズの発売など展開を広げ、ファンを飽きさせることがない。まだまだ『けものフレンズ』が生み出す熱気は収まりそうにないが、その中でたつき監督が「irodori」名義の活動にて、ネット上に公開してきた自主制作アニメにも関心を向けるファンも多いようだ。

「irodoriは、アニメーションの自主制作・頒布を目的としている制作集団」(公式サイトより)。たつき監督はTwitter(@irodori7)でも「たつき/irodori(けものフレンズ)」と名乗っていることで、初めてその名を認識したファンも多いだろう。

 その「irodori」がもっとも最近に動画をアップしたのは今年の元旦。『けものフレンズ』の本放送を目前とした中でも自主制作を続けていたことに対し、驚きの声を挙げるファンも多かった。本稿では、たつき監督が『けものフレンズ』に至るまでを、“自主制作”の視点から振り返っていく(界隈の動向を追い続けていると、度々こうした事例が現れるので面白い)。


■「我々もほそぼそずっと制作していくつもりです」 たつき監督のコメントに一貫性

「irodori」(メンバーは現在3名)は2008年9月から毎月数秒・数分、自主制作したものをニコニコ動画にアップしてきていた。これまでのラインナップは『眼鏡』から順に、『デスメタルさやかと仏滅』『たれまゆ』『ケムリクサ』『のための』『らすとおんみょう』『駅長さん』『???』となっている。

 各作品は、話がまとまったところで1本に繋げられる。最初の作品『眼鏡』が完成したのは09年8月(10年前後当時は『フミコの告白』(石田祐康)、『オオカミはブタを食べようと思った。(オオカミとブタ)』(竹内泰人)、『中学星』(清水誠一郎)といった、自主制作作品が話題となっていた時期でもある)。

『眼鏡』は10年3月、「第8回インディーズアニメフェスタ」にてノミネート上映もされた。また同年6月、たつき監督はASCII.jpより「ネットは『アニメの全体』学べる小さな社会 『眼鏡』監督に聞く」と題したインタビューを受けている。当時のたつき監督の心境を窺えるので確認しておきたい(記事タイトルで検索すればヒットする。ググってみよう)。

 また同年10月には同じく『眼鏡』が、「第22回CGアニメコンテスト」にて入選上映。この「CGアニメコンテスト」は、第12回(00年)に『君の名は。』の新海誠監督が自主制作した『彼女と彼女の猫』でグランプリを受賞するなど、アニメを自主制作するクリエイターにとって目標の1つとして知られるコンテストだ。

 上映の当日、たつき監督は表彰を受けるため来場、さらに自身の作品を販売できる「作家市」にも出店した。ここで注目したいのは入選に際して寄せられていたコメント。たつき監督は『眼鏡』の作品概要とニコニコ動画での応援に感謝した後、次のように終えていた。

「自主制作アニメが盛り上がっていくといいなあ……と思います
 我々もほそぼそずっと制作していくつもりです
 一緒にワイワイやりましょうー」

 どうだろう。元旦ですら自主制作を続け、動画をアップしているのだから、当時から一貫していることが分かる。そして「我々」とあるだけでフレンズたちの会話が聞こえてきてしまう人は、立派なジャパリパークの住民。“けもフレ考察班”にとっても価値がある耳寄りな情報ではないだろうか。


■“パークの危機”? 自主制作アニメのクリエイターが集まる場所は縮小傾向

「irodori」は同じく「CGアニメコンテスト」の、12年10月の第24回大会で『ケムリクサ』で作品賞を受賞。さらに、同年3月には「東京国際アニメフェア(TAF)2012」の「クリエイターズワールド」にも出展している(「クリエイターズワールド」には前年に出展予定だったところ、東日本大震災の発生でイベントそのものが中止に)。

 この「クリエイターズワールド」は03年から「TAF」内に設けられ、13年に「TAF」が終了するまで実施されていた。出展枠に限りがあるため審査はあるものの、認可されれば無償で展示ブースを得られたのが特徴。さらにパネルなど、ブース内の装飾も範囲内で行えば無償だった。

「TAF」が11年、東日本大震災で中止となったこととは別に、児童ポルノ禁止法に関する都条例改正問題から端を発し、「アニメコンテンツエキスポ(ACE)」と分裂していたことを覚えている人も多いだろう。「TAF」と「ACE」の分裂は12年、13年と続き、14年からは「ACE」に統合されるような形で新たに「AnimeJapan」が開催。

 そして、「TAF」で実施されていた「東京アニメアワード」は、一般社団法人日本動画協会が主催し、東京都が共催する国際アニメーション映画祭「東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)」として独立・発展し、開催されるように。

 しかし、かつて「TAF」で開催されていた「クリエイターズワールド」に該当する展示が、引き継がれることはなかった。詳細は14年に「TAF名物『クリエイターズワールド』の続きはここで? 盛況のANIME SAKKA ZAKKAと“難民”問題」にて記している(記事参照:http://otapol.jp/2014/10/post-1820.html)。

 自主制作アニメのクリエイターが集まる場所は、『けものフレンズ』的になぞらえるなら、それぞれの“ちほー”は、大きく「映画祭・コンテスト」「同人誌即売会」「見本市・展示会」に区分されるだろう。「irodori」は各映画祭・コンテストに加え、「コミックマーケット」「COMITIA」など「同人誌即売会」にも参加しているので、その生息域は広い。

 ただ「同人誌即売会」の場合は、「映画祭・コンテスト」「見本市・展示会」よりも自主制作アニメのクリエイターを探しにくい。薄い本やペーパーを作成するようなフットワークで動けず、参加者の絶対数が少ないのもあるにしても、そもそも自主制作アニメだけの島があるわけではないため、サークルがバラけてしまっているからだ。

 そうした状況も鑑み、「COMITIA」には各自のサークルスペースを掲載した合同パンフレットを作成して活動をアピールする「アニメ部」がある。「irodori」も参加することが多いが、参加サークル全てに周知されていくことを希望する(ちなみに「クリエイターズワールド」を運営していたのは「ケイ・コーポレーション」なので、「COMIC CITY」内でオンリー島を作れないのかといった趣旨の話をしてみたこともあるのだが、その反応は芳しくない)。

 15年8月の「COMITIA 113」にて「irodori」がサークル参加していた際、たつき監督と仕事の話よりも他の“ちほー”のクリエイターと会う機会が減った、という会話をした記憶がある。「CGアニメコンテスト」も続いてはいるものの、上映会が行われなくなった。出来の良い作品がネット上にアップされても再生数が伸び悩む。この先、自主制作アニメが盛り上がる機運はあるのだろうか。ある意味“パークの危機”なのだ。
(取材・文/真狩祐志)

■irodori
http://www.iro-dori.jp/

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