田中圭『おっさんずラブ』は財務官僚こそ見るべきドラマ

4月28日(土)16時0分 NEWSポストセブン

演技派たちが熱演(番組公式HPより)

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 ドラマはある意味、社会を映す鑑である。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所の山下柚実氏は、セクハラ・パワハラに揺れる今こそ見るべき作品として、土曜の深夜ドラマを挙げた。


 * * *

 最近、勢いのある深夜帯のドラマ。まだ始まったばかりだけれど、傑作の一つに挙げたいのが『おっさんずラブ』(テレビ朝日系土曜23時15分)です。軽やかでポップで可笑しい。役者たちがノッていて楽しんで演じていることが伝わってきてワクワクする仕上がりです。


 テーマは「おっさんの純愛」「男同士の三角関係」。ちょっと異色だけれど、今の世の動きとつなぎあわせて味わってみるとさらに深い。絶妙なるそのテーマ性、ドラマがスタートしたタイミングも含めて、その“教育効果”に唸ってしまう。


 主人公は、モテないサラリーマンの春田創一(田中圭)。今ひとつぱっとしない凡人男で、結婚願望はあるけれど、恋人無し。しかし、その春田がある日突然、ストレートに告白されてしまうのです。


「好きです!」


 自分にむかって叫んでいる相手は、なんと敏腕上司の黒澤部長(吉田鋼太郎)。いきなりオッサン上司に迫られ、とまどい慌てる春田。


「乙女心を隠し持つオッサン上司」である黒澤部長は、まるで瞳の中にバラが咲いていそう。ねっとりした瞳で春田を見つめる。写真を隠し撮りしたり、「ランチミーティングしましょう」と誘ったり。春田の気持ちなんて関係なく、バラの花束を差し出しての愛の告白……よく言えばピュア、悪く言えば粘着質。そんな黒澤部長を吉田剛太郎さんがこれ以上ないほどのハマり役で演じていて、輝いています。


 一方、黒澤部長にライバルも出現。イケメン後輩の牧凌太(林遣都)は、黒澤と競いあい、春田のハートを奪い合うことに。その牧のキャラは黒澤部長と対照的。もの静かで真面目で爽やかでイケメン。しかし、実はドSで情熱を秘めている。黒澤と対比させるようにして牧のキャラクターを林遣都さんが活き活きと演じています。


 そして第一話の終わり、シャワーを浴びる裸の春田に迫る牧。いきなりその唇を奪う衝撃シーンで幕を閉じて話題沸騰。何よりも、主人公・春田を演じる田中圭さんのてんやわんやぶり、慌てぶりが可笑しい。


 ビクビク動揺し、狼狽し、心の中で叫ぶ。小心者・春田のいじらしい挙動。もう、腹を抱えて笑ってしまう。……という優れたコメディドラマですが、敢えて今の世の出来事と重ねて見てみると、また別の味わいがにじみ出してきます。


 もちろんこのドラマ、セクハラ財務官僚のようなゲスないやがらせ、ハラスメントをする人々を描いているのではありません。黒澤部長も牧も真剣に人を好きになり、それがゆえに生じる葛藤を秀逸なコメディに仕上げています。


 ただし、「迫ってくるオッサンと追いかけられる部下」、「好きでもない相手から性的対象にされる不気味さ」、「権力を持っている相手だから簡単に拒絶できない」といった構造のみを抽出すると、まさしく今世を騒がせている「セクハラ+パワハラ」の構図に重なります。


 一般的に男女間にて発生することが多いセクハラ。ですが、このドラマでは迫る方も迫られる方も男。だからこそ、教育的素材になりうる。世の男性たちは、とまどう主人公・春田の立場に自分を置きかえみればすぐに、「セクハラ+パワハラ」をリアルな「自分コト」として捉えられるはず。セクハラ財務官僚の言動がいかに不快であるかが実感としてわかるはず。


 残念ながら、日本社会はセクハラ問題の本質について理解が非常に乏しいのは事実。とんでもない暴言がいまだ政治家等から発し続けられていることからも明白でしょう。ということで、セクハラ問題に無理解な方々への「教育素材」としても、『おっさんずラブ』はドンピシャ機能します。この時期、連続ドラマとしてスタートしてくれたのもナイスタイミング!


 実は2016年に単発のスペシャルドラマとして放送され好評ゆえの連続ドラマ化だそうですが、超優秀な「官僚の中の官僚」と呼ばれる方々、ちょっとでもこのドラマを見て学んでおけばよかったのに。


 エリート中のエリートとか言われてムダに学歴だけは高いけれど、世俗から学ぶ、という「頭の良さ」が皆無な点がザンネンです。特に「相当認識が高いと思いますよ」とか自己評価を誇っていらっしゃる財務官僚さん、ぜひ土曜日深夜の『おっさんずラブ』にチャンネルを合わせて、これからでも深く学習されんことをオススメいたします!

NEWSポストセブン

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