作法を大切にした樹木希林さんが愛読 アイヌに関する随筆集

4月28日(火)16時5分 NEWSポストセブン

樹木さんの愛読書とは?

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 新型コロナウイルスの脅威にさらされ、自然と人々の心も蝕まれていく。こんなとき、強くたくましく生きた樹木希林さんならどう行動しただろうか。


 2018年9月に亡くなった樹木希林さん(享年75)。言葉にこだわりを持ち、言葉の力を信じていた樹木さんは大の読書家でも知られた。しかし、自宅に遺されていたのは、100冊だけだった。樹木さんは100冊以上の本を手元に置くことはなかった。持っておきたい本ができたら、100冊の中から1冊を誰かにプレゼントしたというのだ。


 書斎に遺した最後の100冊にはどんな本があったのだろうか、樹木さんの考えの「源泉」ともいえる愛読書の中から、2冊を紹介する。


◆『ユーカラの人びと』金田一京助著


「菓子などの手土産は受け取らない」「いいねと言われたものはその人にあげる」など、樹木さんにはマイルールがあった。どんな一流レストランへ行っても、食べきれなかったものを折り詰めにしてもらい持ち帰るのも樹木さん流だった。


 作法を大切にした彼女が大切に読んでいた金田一京助の『ユーカラの人びと』(平凡社)。国語辞典の編者として誰もが知る金田一は、アイヌ語、アイヌ文学研究の第一人者でもある。ユーカラとはアイヌの叙事詩。単身北海道に渡った金田一とユーカラの世界の人々との交流を描く随筆集だ。アイヌの人々は飲み干した汁椀をなめ、指でぬぐい、それを自分の毛や着物になすりつける作法がある。得たものを自分の守護神へ与える行為だという。“ものを賜る”という心持ちが、そのものから御霊に触れるということに外ならなかったと本にはある。


 樹木さんと40年以上にわたって親交があり、彼女が残した100冊と彼女とのエピソードをまとめた『希林のコトダマ』(芸術新聞社)の著書がある椎根和さん(しいね・やまと 78才)は、こう話す。


「希林さんは、残りものを折に詰めて、と言うとき、『御霊に触れたいから…』といつも心の中で言っていたのだろう。そんな希林さんの振る舞いの奥底にあった思いが、『ユーカラの人びと』を読んでわかった気がします」


◆『無頼の墓碑銘 —せめて自らにだけは、恥なく瞑りたい—』竹中労著


 芸能界から政界まで、真相を追い続けた反骨のルポライター竹中労(1928-1991)が、がんで余命宣告後も世界を飛び回り、自らの墓碑に記した言葉が「せめて自らにだけは、恥なく瞑りたい」だ。


『無頼の墓碑銘 —せめて自らにだけは、恥なく瞑りたい—』(KKベストセラーズ)は竹中が亡くなった直後に刊行された。「無益な延命通夜葬儀、一切無用」というのも竹中の口癖だったという。


「希林さんは、どこかで破天荒な竹中の生き様、生き方を信用し、憧れてもいた。竹中にからむさまざまな会にも参加していました。『万事なりゆき』という考え方も影響を受けていたと思います。闘病中の彼女の主調音でした」(椎根さん)


※女性セブン2020年5月7・14日号

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