オーストラリアの世界遺産「太古の森・ゴンドワナ雨林」貴重な固有種の撮影に成功!
2025年4月28日(月)7時0分 TBS NEWS DIG
自然相手の撮影は、なかなか期待通りにはいきません。しかし、4月27日に「世界遺産」で放送したオーストラリアの世界遺産「ゴンドワナ雨林」の取材では、運にも恵まれこの森にだけ生息している固有種の野鳥やザリガニを撮影することができました。「ゴンドワナ雨林」は世界的に有名なリゾート、ゴールドコーストから車で約1時間。ビーチ沿いに立ち並ぶ近代的なホテルの窓からも見える都市部に近い森ですが、なんと恐竜時代、1億8千万年前の森の面影を残す太古の森なのです。
この森は固有種の宝庫!
2021年、ゴンドワナ雨林では新種の昆虫が見つかるという大発見がありました。それは全身にフワフワの白い毛がはえたカミキリムシ。ゴンドワナ雨林は今でも新種の発見があり得る神秘の森なのです。そこを今回、取材スタッフは地元のベテランガイドと共に探検し森で暮らす様々な固有種の撮影に成功しました。
その一つは、姿をなかなか見ることができない野鳥のアルバートコトドリです。立派な大きな尾を持つオスがメスの前で自分の尾をベールのようにかぶり、求愛のダンスをするという珍しい鳥です。今回の撮影では森の中をひたすら探し回り運よく遭遇することができました。しかも体長90センチほどの大きな鳥でした。
また森の中を流れる清流に生息する固有種のザリガニ、ラミントンザリガニもカメラに収めることができました。透明度の高い清流に水中カメラを入れると、見たこともない青いザリガニの姿が浮かび上がってきたのです。なぜ青くなったのかは、エサに含まれている物質によるもの、または鳥などに食べられないよう身を隠すためだと考えられています。
約1億8千万年前の巨大大陸の名残りとは…
森を探検していた取材スタッフは大きな古木、樹齢2000年のナンキョクブナと出会いました。南極大陸で化石が見つかったことでナンキョクブナと名付けられたのですが実は、ナンキョクブナの仲間は南米大陸にある世界遺産「ロス・アレルス国立公園」でも見つかっています。そして、オーストラリア、南極、南米という3大陸で見つかったという事実が地球のある歴史を裏付けることになったのです。
地球に5億年前、誕生した巨大なゴンドワナ大陸は分裂と結合を繰り返しましたが、ナンキョクブナは1億8千万年前、南極、オーストラリア、南米が分裂する途中で現れました。その後、大陸が現在のような形に分裂したため、ナンキョクブナは3大陸や様々な地域の島などに生息することになったのです。
つまりナンキョクブナはゴンドワナ大陸の分裂を裏付ける重要な証拠なのです。そして「ゴンドワナ雨林」は、太古の大陸に起源をもち、地球の歴史の重要な段階を示すことから世界遺産に登録されました。
洞窟に現れる天の川…
ほとんどが乾燥地帯であるオーストラリアにおいて、雨が多く水が豊富な「ゴンドワナ雨林」は奇跡の森です。川が何本も流れていて滝がいくつもあるのですが、今回の取材では、その一つの滝に流れ落ちる洞窟では不思議な自然現象を撮影することができました。
夜になると洞窟の天井には星空が現れるのです。まるで天の川のような美しい景色なのですが、光っている星の正体は、ヒカリキノコバエという虫の幼虫なのです。幼虫は光で他の虫をおびき寄せ捕まえ食べるのです。
太古の森の光と影
ゴンドワナ雨林にはユニークな行動をするアオアズマヤドリという野鳥が生息していますが、そのオスは、アオアズマヤドリという名前通りの生態を持っています。名前の一部である「アズマヤ」どおりに巣とは別に求愛の舞台である東屋のようなもの木の枝で作るのです。さらに「アオ」どおりに自然界にある青いもの集めてきて、東屋にメスが来ると青い物を咥えて求愛のアピールをします。
しかし、今回の撮影では東屋の近くには青いペットボトルの蓋など人工物ばかりが置かれていました。学者の見解では、かつては自然界にある青い物を集めていたが人間が森に入るようになってからは青色が目立つ人工物に惹かれるようになっていったといいます。どう世界遺産の森を守っていくのか?考えさせられる瞬間でした。