ブスネタは日本の恥なのか? 近藤春菜の「○○じゃねぇよ!」芸は女性らしさの逸脱でもある

4月29日(金)0時30分 messy

(C)柴田英里

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 先日、messyに掲載された『女芸人のブスネタが通用するのは国内限定。アリアナ・グランデ近藤春菜はすごくかわいい」』という記事を読んで、「ブスネタはそんなに悪いものなのか?」と考え込んでしまいました。

 というのも、私自身がこれまで普通にテレビを見て育つ中で、女芸人の主体的なブスネタや、「女(らしさ)を捨てた芸」の類いに、かなり勇気をもらってきましたし、「女性性や“素敵な女性”評価などくそ食らえ」「女である前に芸人だ」という逸脱の仕方として、好意的に見ていたからです。

 そもそも、ハリセンボン近藤春菜の「○○じゃねぇよ!」のブスネタは、女性軽視なのでしょうか。まずそこを考えてみたいと思います。

 「マイケル・ムーアに似ている」とか、「シュレックに似ている」というネタで笑いを取る、そのネタで笑うということは、「マイケル・ムーアに似ている女性は笑える(笑っても良い)」「シュレックに似ている女性は笑える(笑っても良い)」という見方があることを露呈させることでもあります。極端な言い方をすれば、世の中にブス差別があることを認めることになります。「差別はなくすべきで、許されることではない」、それはもっともなことでありますが、現状、世の中には多種多様な差別や、人種や性別や貧富などにまつわるステレオタイプな見方がありますし、不細工を「個性的でかわいい」と誉めてみてもブス差別がなくなるわけでもありません。美人が不美人を「かわいい、絶対かわいい、めちゃくちゃかわいい」という具合に執拗に誉めることによって言外に自分の美しさを匂わせるような嫌がらせだって中にはあります。



 春菜の「○○じゃねぇよ!」芸は、ブスネタ以前に、「女性らしい話し方・(言葉遣い・テンポ)」「女性らしい受け答え」からの逸脱です。

 例えば、取引先の接待のような場でセクハラ発言などのハラスメントにあっても、程度にもよるでしょうが「セクハラレッドカード、退場!」という具合に素早く加害者にハラスメント行動に対する責任をとらせることができることは少ないでしょうし、無理矢理レッドカードを切った(ハラスメントを告発するなどした)結果、自らが会社を辞めなければならなくなるような理不尽な事件だって、残念ですがあることでしょう。

 春菜のキレツッコミのような、「(好ましいとされる)女性らしさ」から自覚的に逸脱する切り返しは、そうした場において雰囲気を壊さずハラスメントの流れを切る方法として有用ではないかと思うのです。自発的に、(好ましいとされる)女性性から降りることによってセクハラの流れを断ち切り自衛すること。もちろんそれは、ハラスメントを根絶させるような積極的な抵抗ではなく、あくまで消極的な抵抗ですが、差別や権力の構造が一枚岩ではない以上、ないほうがマシではなくないよりマシで、まだまだ必要な抵抗です。

 私が自発的なブス(自虐)ネタもポリティカル・コレクトネス的にNGとされることに違和感があるのはこの点においてなのです。もちろん、「ブス/ブサイクなだけでおもろいやん、笑わせろや」という圧力の元ネタを強要されるようなことはあってはなりませんし、他者の属性を笑う人、他者を差別する言葉を投げつける人は軽蔑しますが、春菜の「○○じゃねぇよ!」芸や、ツッコミの速度やキレは女性を勇気づけるものの一つだと思っています。



 自発的な「ブスネタ」や「貧乏ネタ」、「“オカマ”の自虐」といった、マイノリティが自らのマイノリティ性を自覚的に笑いにかえるネタに是非があるのは、マイノリティが自らのマイノリティ性を自覚的に笑いにかえるネタは、そこに差別的な価値観や視線があることを暴露することや、「笑い」がいじめなど暴力の形になり得るだけでなく、「笑い」というものが権力や価値の構造を脱臼させるとても強い力を持つ側面があるからでしょう。

 そして、「笑い」のコードの一つに、「しゃーない」という受動的かつ自棄的肯定の価値観が含まれていることも関係するでしょう。「(ブスでも)しゃーない」「(貧乏でも)しゃーない」「(マイノリティでも)しゃーない」という、ままならなさをままならないまま受け入れることは、マイノリティが「どうしようもなさを吐露する/共有する」だけでなく、「自虐しながら自分と同じ属性の人に対しても軽視する」ことにもなり得るため、マイノリティの社会包摂的視点からの「反差別」の思想とは、折り合いが悪いのかもしれません。

 いずれにせよ、ひとつのジェンダー観のみで文化を計ることは難しいですし、アメリカと日本では「お笑い」の成り立ちや受容のされ方も違うでしょう。アリアナ・グランデに近藤春菜のネタがウケなかったことも同様に、様々な背景があり、簡単に答えが出るものではないでしょう。



 

messy

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