エロ本、熟女グラビア、突然の求婚からまさかの展開…『続・続・最後から二番目の恋』が見せる3つの“すごみ”
2025年5月1日(木)6時0分 マイナビニュース
小泉今日子と中井貴一が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』(毎週月曜21:00〜 ※TVer、FODで配信)の第3話が、4月28日に放送された。
鎌倉の古民家へ越してきたテレビドラマプロデューサーの千秋(小泉)が、その隣家に住む市役所職員の和平(中井)と出会い、和平の家族とともに恋や友情を育んでいく大人のロマンチック&ホームコメディ。第3シーズンとなる今作は、還暦間近の千秋に定年を迎えた和平という、さらに円熟味を増した彼らの“今と未来”が丁寧に描かれていく。
第3話は今作最大の特徴である“何も起こらない”物語でありながら、どうしても視聴者を引き付けてしまう3つの“すごみ”があった——。
○律子(石田ひかり)のキャラクターに今後の波乱を予感
1つ目は、和平が中盤で「何で俺はエロ本の話ばっかしているんだ…」とついつぶやいてしまったように、“エロ本”という些末で猥雑なテーマでもって“人情”を描いてみせたことだ。
この“エロ本”は、過去2作までに登場していたちょっとスケベでファンキーな名物おじいちゃん・一条(織本順吉)に端を発して、この第3シーズンの第1話でも、ラストで律子(石田ひかり)のキャラクターに今後の波乱を予感させる含みを与えるなど、ドラマ全体を横断させる壮大なキーワードとなっていた。
通常、“エロ本”では決してドラマが成立することはないが、本作はそれができてしまうという独自性を高める効果、もしくは何げない描写の極みを描くことでおかしみを生むだけなのかと思っていた。しかし、和平が序盤に千秋へ告白した母との“エロ本号泣事件”は、和平という人物像がより鮮明になっただけでなく、長倉家の今がそれに集約するかのような“人情”があった。とはいえ、“エロ本”を“人情”でおとすだけでなく、そのワードが頻発する自らの状況を自虐するシーンも次の場面で展開させるという緩急こそが、今作の“すごみ”なのだ。
○一見すると怪しさしかないエピソードが…
2つ目は典子(飯島直子)が“熟女グラビア”にスカウトされるという、一見すると怪しさしかないエピソードの転じ方だ。このエピソードも“エロ本”と同様、今作に大きな影響を与えるわけがない、コメディリリーフ的なエピソードなのだろうと予想していた。だが、この熟女グラビアから、孤独でアイデンティティを失いつつあった典子を浮かび上がらせ、そこから“生きる活力”まで芽生えさせるという、まさかの感動まで付け加えた。
さらに、その対比として常に“戦ってきた”千秋や、これから一波乱ありそうな万理子(内田有紀)の“自由”も並行して描くことで、今回のサブタイトルにもなっている「正しい生き方なんかどこにもない」へ昇華してみせたのだ。意外な出発点からテーマまでを浮かび上がらせてしまうこの転じ方も、また“すごみ”であろう。
○和平への“市長打診”でもって次回へ
最後の3つ目は、“何も起こらない”物語でありながらも、次回がどうしても気になってしまう“引き”を見事に完成させた、ラストシーンの市長・伊佐山(柴田理恵)による“求婚”からの“市長打診”だ。
この市長の突然の求婚は、前シリーズから続くある種の“お決まり”を少しエスカレートさせた、ギャグにも捉えられるセリフだ。しかしこのご時世では、ともすればパワハラにも思えてしまい、笑いのラインは微妙だったと言えるだろう。だが、その危うさこそがフックとなり、突然の求婚が和平のコミュニケーション能力の高さを表す爽快さに変わり、おしゃれな“大人の会話”にすら成立させる見事な場面だった。
また、それを振りに使い、それ以上の爆弾投下=和平への“市長打診”でもって次回へつなげるというこの展開には、“何も起こらない”ドラマでありながら、さりげなく視聴者を次回へ誘導させてしまうという“すごみ”が詰まっていた。
今後、“市長打診”が和平自身にどう影響していくのか。また、“爆弾”を抱える真平(坂口憲二)の不穏は一体何なのか。そして千秋がいなくなった後の自分=未来について考え始めた万理子の行方は…と、依然として全体的に緩やかではありながら、それぞれのドラマが少しずつ動き始めている。今後もどんな“すごみ”が潜んでいるのか、見逃せない。
「テレビ視聴しつ」室長・大石庸平 おおいしようへい テレビの“視聴質”を独自に調査している「テレビ視聴しつ」(株式会社eight)の室長。雑誌やウェブなどにコラムを展開している。特にテレビドラマの脚本家や監督、音楽など、制作スタッフに着目したレポートを執筆しており、独自のマニアックな視点で、スタッフへのインタビューも行っている。 この著者の記事一覧はこちら