フジHD・金光社長が退任へ 刷新アピールも「株主総会を乗り切るための作戦」と見る関係者が
2025年5月1日(木)5時0分 スポーツニッポン
元タレント中居正広氏(52)の女性トラブルに端を発した問題で、フジ・メディア・ホールディングス(HD)は30日、フジHDの金光修社長(70)と社外取締役の茂木友三郎氏(90)ら3氏が6月に開催予定の株主総会をもって退任する人事を発表した。世論の逆風が収まらず、大株主たちがフジの人事を巡る主導権争いを繰り広げる中、人事案を撤回する格好となった。
フジHDは3月に経営陣の新体制案を発表。その後、株主の米投資ファンドのダルトン・インベストメンツが金光氏ら留任予定の取締役を「オールドボーイズクラブ」と批判して交代を求め、SBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長(74)ら12人の新取締役候補を提案した。北尾氏も会見を開きフジHDの人事案を「不十分」と一蹴。アニメ事業で結果を残してきた清水賢治専務(64、現フジテレビ社長、次期フジHD社長)については「残していい」などと提言。営業利益の半分以上を占める不動産事業の切り離しなど、経営に関する構想も掲げていた。
金光氏はこの日、総務省に組織の再生・改革に向けた具体策を報告した後、都内で報道陣の取材に対応。経営中枢に長く君臨した日枝久氏(87)の最後の肩書となった相談役や顧問制度を廃止し、役員の定年制と在任期間制限規定を設けると報告した。「代表権のある取締役は70歳、それ以外の常勤取締役および執行役員は65歳とし、社外取締役の在任期間の上限は8年」と説明。自身らの退任は「この規定にのっとったもの」とした。
ただ、これを「株主総会を乗り切るための作戦」と見る金融関係者もいる。今後は投資家たちの委任状を集める“争奪戦”が繰り広げられることになるが「ダルトンや北尾氏の発言を意識した発表であることは明白。株主や世論に刷新をアピールしつつ、ダルトン側の人事案をのむことで、不動産事業など経営の根幹に関わる部分は守っていく狙いがあるのでは」と指摘した。
一方、清水氏は、1980年代から続いてきた「楽しくなければテレビじゃない」というフジテレビのスローガンからの脱却を目指すと表明。一連の問題の当該部門で「組織風土形成に直結していた」という編成局、バラエティー制作局など制作部門の組織を解体・再編成。また、編成局にひも付いていたアナウンス室は独立させる。
金光氏は新たな人事案について「5月の取締役会で審議し、決定する」と説明。世論の風向きを変え、投資家を味方につけられるかどうかが課題だ。
【アナウンス室は編成局から独立】
フジはアナウンス室を編成局から独立させる背景について「編成・制作がキャスティングをする側、アナウンサーがされる側という従属的な関係性が問題を生んだ」ためと説明。今後はアナウンス室の権限を強化・同室の育成プログラムに基づいた起用を目指していき、制作サイドとアナウンサー側との調整役となる「コーディネーター制度」を創設することも報告した。また中居氏の問題への関与が指摘された編成部長(現在は人事局付)の処分について、清水氏は「5月中旬以降になる可能性が出ている」と話した。
≪201億円の赤字に転落へ≫
フジHDは2025年3月期連結決算の業績予想を下方修正し純損益が201億円の赤字に転落する見通しと発表した。フジテレビの一連の問題で多くのスポンサーがCMの放送を取りやめ、広告収入が激減したことが大きく影響した。当初の予想は24年4〜12月期の黒字240億円に対し25年3月期通期は98億円(前期比73・6%減)と予想していた。08年にフジHDが認定放送持ち株会社に移行してから初めての最終赤字となった。