興行収入予測100億狙いのはずが…木村拓哉主演『無限の住人』ガラ空きの悲哀

5月3日(水)2時0分 messy

 4月29日、公開初日に木村拓哉(44)主演の映画『無限の住人』を鑑賞した。こう書くと、筆者がものすごく熱心なキムタクファンであるかのように思われそうだが、それは違う。その日の夕方に友人と「夜、映画に行こう」という話になり、その時点ではふたりの気持ちは100%『美女と野獣』にあった。だが、我々は世の中がすでにゴールデンウィークに突入しているという事実をすっかり失念していたのである。映画館に向かう前に時間確認のために映画館HP開くと、なんと無情なお知らせがそこに。『美女と野獣』のレイトショーの吹き替え・字幕ともに満席だというではないか。いや、正確には数席残ってはいた。ただし一番前の席のみで。

 「どうするよ……」と友人と話しあうも、一番前の席はさすがに首がもちそうになく、あの美しき世界を堪能できそうにないので却下。すぐに車で行ける範囲にある3つの映画館HPもチェックしたのだが……あぁ『美女と野獣』フィーバー恐るべし! 見事にどこも状況はほぼ同じであった。観たかったのにな、『美女と野獣』。

 そんなわけで、まだ心を『美女と野獣』に残してがっくりうなだれる友人を無視して、筆者は他の映画探しを始めた。そこで見つけたのが『無限の住人』である。いや、正直言うと『ワイルド・スピード ICE BREAK』も候補に入っていた。ただ、前作を観られていないことが気にかかったため『無限の住人』をチョイスした次第である。ちなみに、29日公開初日にも関わらず『無限の住人』はレイトショー上映時間2時間前でも残席表示は◎。つまり、まだまだお席に余裕があります状態であった。

 公開初日、しかも値段が安くなるお得なレイトショー、それなのにお席に余裕あり。主演の木村の立場で考えてみるとこれはなかなか切ない状況だろうな、と思いつつチケットを取り座席に座った。周囲を見渡すと、想像よりも年齢層は高めで男性客も多い(チャンバラだから?)、客入りは6〜7割といったところだったろうか。

 筆者はこの身でもって客入りの少なさを実感したわけだが、すでに芸能ニュースやネット上でも同作品は「大コケの予感」と書きたてられているようである。

 アサジョでは「27日の座席予約を見る限り、公開初日の29日ですら舞台挨拶の回だけしか客席は埋まってない。『美女と野獣』『ワイルド・スピード』『名探偵コナン』が3強。『無限の住人』はその3強から離された位置で、菅田将暉主演の『帝一の国』との4位争いがせいぜいだろうと期待値は急降下」と評している。公開初日の興行ランキングは、1位『美女と野獣』、2位『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』、3位『ワイルド・スピード』、4位『クレヨンしんちゃん 襲来!!宇宙人シリリ』、5位『帝一の国』、6位『無限の住人』となっており、なんと公開3週めのクレヨンしんちゃんにもしてやられているではないか! ちなみにコナンも3週めであるが、やはり強い。

 『無限の住人』配給元のワーナー・ブラザーズは「興行収入100億円を狙う」とコメントしていたが、公開から数日が経過した現在では10億にも達しないのではないかと見られている。いわゆる大コケだ。



 公開前、木村はこの作品のために大々的にPRキャンペーンを展開した。京都、広島、熊本など10年の映画館を訪問しており、そのPR費用だけでも合計1億円もかかっていたのだとか(もちろん木村は宣伝のためなのでノーギャラである)。テレビのバラエティ番組などにも積極的に出演し同作品を宣伝した。そのためネット上には「キムタクが最近出過ぎていて、映画の公開前からもう飽きた」という辛辣な声も多く溢れてしまった。かつてはなにをしても誉めそやされ憧れられていたスーパースター・木村拓哉。SMAP解散騒動で一転してヒールとなってからというものの、なにをしても裏目に出てしまっていて、気の毒になる。

 さて肝心の映画はというと、原作についてはまったく知識がないまま鑑賞したが、それなりに楽しめた。だが30巻にも及ぶ超大作を2時間にまとめているのだから、原作に比べると深みがなく物足りない仕上がりであるだろうことは想像できる。さらに言うと、原作の人気キャラを無理矢理入れたために映画ではまったく生かしきれておらず「この人出てくる意味ある?」と思う登場人物も数人いた。

 では主演の木村はどうであったかというと、スクリーン登場時、まず最初に感じたのは失礼ながら「全部が短っ!!」という感想だ。こんなに背が低かったけ? 脚も短くない? と驚いたのが正直なところ。姿かたちを売りにする役柄ではないため(つまりイケメン役ではない)、それはまぁ良しとしても、演技はどうかというと……まったくもっていつものキムタクである。セリフまわし、間合い、仕草……すべてにおいてキムタク全開だった。三池崇史監督のユーモアなのか、木村の代名詞とも言える「ちょっ、待てよ」というセリフも作品内にある。

 たしかに何から何までキムタクで変わり映えしないのだが、ただそれを差し置いても彼の殺陣はなかなか素晴らしかったと思う。各雑誌のロングインタビューでも木村は、いかに本気で殺しあうか腐心したと熱く語っていた。過酷な撮影現場だったため、撮影中に右膝じん帯損傷の怪我を負ったという木村。あの殺陣(しかも特殊メークのため独眼である)の迫力ならなるほどそういうことも起こるだろう、と思えるものがあった。筆者としては木村の殺陣については素直に評価してもいいように思うのだが……。ただ「永遠の命」を持ってしまった男の悲しみが醸し出せていなかったのは致命的だった。そこがテーマなのだから。出番が少なく、なおかつ声がこもっていて若干セリフが聞き取りにくかったにも関わらず市川海老蔵(39)のほうが表現力は上であったように思う。

 筆者は三池監督作品のなかでは断トツに『13人の刺客』が好きである。『無限の住人』も『13人の刺客』同様に斬って斬って斬りまくり殺陣を存分に堪能できる物語であるゆえ、公開は密かに楽しみにしていた。まさか初日に張り切って観に行くことになるとは考えてもいなかったが、それでも公開期間中には必ず鑑賞しようと決めていたのだ。だが『無限の住人』を鑑賞した上でこの2作品を比較してしまうと、『13人の刺客』に出演していた役所広司(61)と山田孝之(33)がいかにすごい役者であるかを改めて痛感してしまう。かつて同じSMAPで活躍した稲垣吾郎(43)もこの映画で狂気の暴君を見事に演じきることで演技者としひと皮むけて新境地を開いた。稲垣の暴君があまりに強烈で印象的だったために、ひょっとすると木村も三池監督の手にかかってこれまでとはまったく違う演技を見せてくれるのでは?? と期待していたのだが……そこはとっても残念な結果であったと言わざるを得ない。

 鑑賞後は木村よりも、木村同様に劇中出ずっぱりであった女優・杉咲花(19)の可憐さと巧みな演技力が印象に残った。まるで『マッドマックス 怒りのデスロード』のイモータン・ジョーみたいな仕上がりになっていた北村一輝(47)の怪演も光っていたと思う。というわけで、筆者としては、大コケに終わってしまうのはもったいないと思う。チャンスがあれば鑑賞をオススメしたい。ただしグロが苦手な人は気をつけましょう。なんせ全編通してどろどろ血みどろなのだから。

(エリザベス松本)

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