殺人犯が「同房者全員が読んだ」と語る拘置所の人気の書名

5月4日(木)16時0分 NEWSポストセブン

同房者全員が読破したという本のタイトルは

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 スマホ、インターネットなどの影響で若者の読書離れが叫ばれる昨今、そこに行けばあらゆる人が読書家になると言われる場所がある。刑務所、あるいは拘置所だ。元刑務官の坂本敏夫氏が語る。


「刑務所で受刑者は刑務作業を行ないますが、17時に晩御飯を食べたら21時までは自由時間。土日は刑務作業もお休みです。つまり、受刑者たちは暇なんです。雑居房では19時から21時まで決められたチャンネルのテレビが観られますが、独居房や拘置所にはありません。ラジオも決まった時間にしか流れない。拘置所にいる未決囚に至っては、裁判がなければずっと自由時間が続きます。そんな生活ですから、読書こそが最大の娯楽なんです」


 未決囚や受刑者らが塀の中で本を読むには、いくつかの方法がある。


「自分が警察署や拘置所に収容される際に持って入る方法のほかに、差し入れ、また自分のお金で購入する方法があります。被収容者の手元に届く前に、施設の職員が内容をチェックします。身寄りがなく、購入する財産もない被収容者もおりますので『官本』というものが各施設にあります」(法務省矯正局成人矯正課)


 では、囚人たちはどんな本を読んでいるのか。2009年に発覚した首都圏連続不審死事件で、4月14日に死刑が確定した木嶋佳苗は、『週刊新潮』に寄せた遺言手記で、話題のベストセラー『夫のちんぽが入らない』(こだま著、扶桑社)を読了したことを綴っていた。


 一方、2006年から2011年まで府中刑務所に収監されていた六代目山口組の司忍組長は、実話系雑誌やファッション誌『LEON』などに目を通す一方、料理や旅行に関する本も多く愛読していたという。


 読書は彼らの思考を知る大きな手立てとなるはずだ。私(ノンフィクションライター・高橋ユキ)は囚人たちにアプローチし、彼らの愛読書を聞いて回ることにした。


 現在、名古屋拘置所に勾留されている林圭二被告(44)。2011年、愛知県一宮市の飲食店店員を殺害しその遺体を冷凍庫に入れ福井県の九頭竜湖に遺棄したほか、元交際相手を窒息死させたとして、殺人や傷害致死などの罪に問われている。昨年11月に名古屋地裁で無期懲役が言い渡され、現在、控訴中である。


 彼が挙げたのは、『31年ぶりにムショを出た 私と過ごした1000人の殺人者たち』(金原龍一著、宝島社)だった。大阪刑務所9年、千葉刑務所22年を経て出所した元無期懲役囚の本である。


「留置場時代に差し入れてもらった数十冊の中の一冊ですが、同房者全員が読破していました。私も半年に一度くらい読み返しています。最後にこの本を読んだのは平成28年10月18日でした。明確に覚えているのはその前日の最終弁論で、偶然、著者の金原さんの名が出たからです」(林被告)


 名古屋地裁での弁論で、弁護人が無期刑の出所率について述べていた時に“31年で出所した1名がいる”ということに触れた。これを法廷で聞いていた林被告は、著者の金原氏のことだと気づいたのだという。

 

 未決囚は裁判が確定すれば、拘置所から刑務所へ移送され、受刑者として日々を過ごすことになる。やがて来る刑務所生活に備えた本として、同書は拘置所のベストセラーとなっているのだ。


文■高橋ユキ(ノンフィクションライター)


※週刊ポスト2017年5月5・12日号

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