がん保険CM出演の山下弘子さん 患者のロールモデルにと願った

5月5日(土)16時0分 NEWSポストセブン

山下弘子さんは自分が患者のロールモデルにと願った

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 5年以上に及ぶがん闘病の末、3月25日に亡くなった山下弘子さん(享年25)。生命保険会社「アフラック」のCMに嵐の櫻井翔(36才)と出演し、「がんになって、いい子をやめました」と語っていたのを覚えている人も多いだろう。


 そんな最愛の妻との「最期の思い出」を語るのは夫で兵庫県議会議員の前田朋己さん(37才)だ。


 * * *

 がんが見つかるまでのひろ(山下弘子さんの愛称)は、周囲の反応を見ながら相手が求める理想像を演じていたそうです。でも、がんになって、「他人が求める自分じゃなく、自分が生きたい自分を生きたい」と思うようになって、アフラックのCMでは「いい子をやめます」と宣言したのです。


 どんな人生であっても自分が主人公なのだから、前向きに1分1秒を大切にして「今を生きる」ことが何よりも大事なはず。ひろはそのことを命を懸けて伝えようとしたのです。


〈その言葉を実現させるため、闘病中の弘子さんはさまざまな活動に身を投じた。彼女が講演で「人生は長さよりも濃さに意味がある」と語ると、多くの聴衆が涙した。〉


 ひろは小さい頃から論語や聖書を読んでいて、「万事が益となる」──“苦境にも必ず意味がある”という教えを学んでいたので、病気になったことには意味があり、自分は絶対に治ると信じていました。


 がんと闘いながらの講演活動は痛みや苦しみも多く、まさに一進一退を繰り返しながらの活動でした。でも講演を聞いた人から「感動しました」「生き方を前向きに考え直すきっかけになった」と感謝されると、大きな励みになっていたようです。


〈そんな弘子さんの活動に対し、時に「余命宣告ビジネス」「死ぬ死ぬ詐欺」と心ない批判が寄せられた。落ち込んだ彼女は取材依頼をすべて断ったこともあった。〉


 本来、がんと闘う上では、24時間ほとんど病気のことを考えないほうがメンタルコントロールは楽なんです。


 講演を行うとなるとどうしても準備が必要となり、肉体的ストレスだけでなく、精神的ストレスも多い。がんのことを考えなければならないですから。だから病気のことを考えれば、講演はしないほうがよかった。もともと彼女は表に出て話をするタイプじゃないし、自由に生きたいのに顔が知られると生きにくくなる面もありましたしね。


 それでも、ひろはがんになっても前向きに自分の人生を楽しむことを世の人に示したいという思いが強かったから、再び講演を始めたんです。


 CMに出たのも「がんになってもチャレンジしていいんだ」という信念からでした。自分がロールモデルになることでがん患者の気持ちが少しでも前向きになってくれたらいいと心から願っていたんです。


〈がん患者でも人生を楽しめる…そう信じた弘子さんの生き甲斐となったのが海外旅行だった。がん発覚後、入退院の合間を縫うようにして30か国近くを訪問した。その多くに朋己さんは同行した。〉



◆未来の予定を立てることは生きるエネルギーに


「めざせ、海外50か国」がひろの合言葉で、「次は“天国にいちばん近い島”であるニューカレドニアでダイビングをしたい」と言っていました。直近ではアイスランドでオーロラを見たり、氷河に乗ったりしていましたね。ぼくもメキシコで一緒にダイビングを楽しみました。


 彼女は日常のなかで小さな目標を立て、生活に張り合いや生きる意味を持っていました。いつ人生が終わるかわからないなかで、未来の予定を立てることは生きるエネルギーになります。だからぼくも彼女に旅行プランを作るようお願いしていました。


 だって、ただの細胞に過ぎないがんに自分の行動を制限されるのは嫌じゃないですか。もちろんリスクを認識しながら、できる範囲でやれることを楽しもうというのがぼくらの考え方でした。


 また闘病中はどうしても感情的になりやすいので、ぼくは彼女の感情を一定に保つことを意識しました。がんマーカーが下がっても派手に喜ぶでもなく、「そうか」と言って、逆に上がっても「ああ、そうなんや」という感じでした。


 傍からは冷血に見えたかもしれませんが、ぼくや家族が悲しい感情を表に出すと、ひろはぼくらに心配かけないように我慢したり、頑張ったりします。だからぼくが泣いたのは、結婚式で彼女のドレス姿を見た時の1回限りです。


 感情を出さない代わりに、新しい治療法の情報などをしっかりと調べて彼女に伝えました。


「一緒にがんと闘っているんだよ」というメッセージを送って、寂しい思いをさせないよう心がけていたんです。がんとわかってから、腫れ物に触るような対応をする人が多かったので、ひろは普通に接してくれるぼくの態度が嬉しかったと言っていました。


 ぼく自身、普段の何気ない日常生活で一緒においしいものを食べたり、ソファで一緒に寝転がって過ごしたりするのがいちばん楽しかった。何気ない日常生活がいちばんの思い出です。


 結婚してつらかったことは1つもありません。ぼくたちは、時間が経てば経つほど夫婦の絆が深まりました。


※女性セブン2018年5月10・17日号

NEWSポストセブン

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