連ドラ女性プロデューサー対談「地上波ドラマの現状と10年後の未来」

5月6日(日)8時10分 オリコン

新井順子プロデューサーが手がけた『アンナチュラル』は、『第11回コンフィデンスアワード・ドラマ』作品賞を受賞した(C)TBS

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 ここ数年、名作と呼ばれるヒットドラマの誕生とともに、毎クール、メディアの話題を地上波・連続ドラマが席巻しており、かつての全盛時代を思い起こさせるほどシーンは盛り上がっている。そんななか、エンタテインメントのメインストリームである連ドラの現状とこの先のあるべき姿をテーマに、ヒット作を数多く手がけ、コンフィデンスアワード・ドラマ賞を受賞している女性プロデューサー3人(小田玲奈氏/日本テレビ、飯田爽氏/テレビ朝日、新井順子氏/ドリマックス・テレビジョン)に語り合ってもらった。

◆今ラブストーリー作る勇気ある?あまりにもリアリティがなくて

──1月期も話題作が生まれましたが、振り返ってどのような感想をお持ちですか?
【小田玲奈】今期は純粋に視聴者としていくつか観ていましたが、全体的に盛り上がっていたと思います。
【飯田爽】とくにネットでの盛り上がりがすごいなと思っていました。ドラマのニュースを見ない日はなかったし、それも宣伝発の記事ではなく、一般の方の発言が記事化されるものも多くて。けっこうみんなSNSでドラマを語り合っているんですよね。
【新井順子】『アンナチュラル』最終回の次週に、Twitterで「#アンナチュラル第11話」がトレンド入りしていたんです。なんだろうと見てみたら、視聴者が11話のストーリーを語り合っていて。
【飯田爽】それも自然発生的に。そこまで没入させるのはすごいことです。
【小田玲奈】制作側の仕掛けじゃなかったから、盛り上がったんだと思います。テレビにおけるネットとの付き合い方って本当にデリケートですよね。
【新井順子】基本的には、視聴者が盛り上がっているのを傍観していたほうがいいのかなと。
【飯田爽】ただ『ホリデイラブ』は深夜ドラマで自社宣伝には限りがあったので、いかにネットを味方につけるかが勝負でした。それこそこちらから仕掛けたことも多かったです。実験的な試みなどもいろいろできましたが、そういうPRの積み重ねで、TVerやテレ朝動画といった見逃し配信がすごくよかったんです。

──リアルタイムでは見逃したけど、ネットの話題から興味をもって観る人が増えている証拠ですね。
【飯田爽】それと内容的にもネットと親和性が高かったのかもしれません。やっぱり不倫のドラマはリビングで家族や夫婦とは観にくいようで。
【小田玲奈】たしかに(笑)。かくいう私もTVerで観ていました。とにかく今期は全体的に企画がバラエティに富んでいて、ドラマファンとしてはすごく楽しめました。ただ、ラブストーリーはなかったかな。
【新井順子】王道ラブストーリーはなかったですね。月9の『海月姫』も青春ものという印象を受けました。
【飯田爽】ラブストーリーでも、だいたい最近はひねりを加えてきますよね。
【小田玲奈】だって今、王道ラブストーリーを作る勇気あります? あまりにもリアリティがなさすぎて(笑)。『ホリデイラブ』にしても描いているのはやっぱり女性の自立で、そこに視聴者は打たれたんですよ。
【新井順子】たしかに今の時代、『東京ラブストーリー』のようなドラマは成立しにくいかもしれないですね。だけど観たい人は確実にいて、そういう人は韓流ドラマに流れているんじゃないですかね。私は作ってみたいですよ、泣けるラブストーリーを。

◆配信視聴を評価に含めることが未来のテレビ視聴者を育てる

──先ほど『ホリデイラブ』の配信視聴が好調だった話が出ましたが、みなさんはリアルタイム視聴についてどのようにお考えですか?
【飯田爽】数字の感覚は、ここ2、3年でさらに変わった気がします。『アンナチュラル』なんて、ここまでみんなが話題にしているドラマだったら、かつては20%いっていましたよ。
【小田玲奈】日テレはドラマに関しては、タイムシフトなども含めた総合視聴率で判断するという考え方が、ここ1、2年で定着しています。
【飯田爽】それは早い。テレ朝はやはり世帯視聴率を大事にしているところがあります。
【新井順子】それはドラマの数字が良すぎるからじゃないですか?(笑)
【飯田爽】それはありますね。とくに事件もの、刑事ものなどのシリーズ作は安定しています。だからターゲット層が他局に比べて広いんです。
【小田玲奈】でも『トドメの接吻』なんかは世帯視聴率はあまりよくなかったけど、若い子はすごく観てくれていたんです。やはりそこをちゃんと評価しないと、「未来の視聴者は育っていかない」という認識が社内でも広がっているような気がします。
【飯田爽】そうしないと、あと10年後のドラマの未来ってなくなってしまいますよね。だからテレ朝も一応、ゴールデン・プライムに関してはとにかく世帯、深夜枠だったら配信での盛り上がりも重視しようという割り切り、色分けに変化しつつあります。
【小田玲奈】とはいえ、局で風を切って歩けるのは世帯の数字を取ってるプロデューサーなんですよね(笑)。
【新井順子】やはりテレビはスポンサーにもメリットがないといけないですから。当然ながら、購買意欲のある層の10〜50代に観てもらえるドラマがいいわけで。だけど世帯視聴率を取ろうとしたら、60代以上にも観てもらえて理解できる作品にしないといけない。そうすると構成を複雑にして謎を深めたり、難しい用語を使い過ぎないようにしようと考えるようになります。シビアな話ですけど。ただ、『アンナチュラル』はオンタイムで観るより録画のほうが良いと言われることもありました。
【小田玲奈】一瞬も見逃したくないから、録画で観たいんですよね。
【新井順子】そうすると世帯視聴率を取るためには、変にじっくり観せるよりも、気軽に楽しめるもののほうがいいのか? という話になってしまう。
【小田玲奈】バラエティの世帯視聴率が強いのはそこですよね。バラエティは録画では観ないですから。
【飯田爽】ドラマは予算がかかるけど、その割に実入りが少ない(苦笑)。理屈で言えば、だったらバラエティ枠にしてしまえば、ってなりそうだけど、そうはならないですよね。
【小田玲奈】バラエティが強い日テレでも、受付にバーンと貼ってあるのはドラマのポスターなんです。それはやっぱりドラマって当たるととんでもない波及力を持つし、局のブランドにもなるからです。そこを期待して全社的に応援してくれていると思います。

◆主演俳優を守るという意味でも数字は狙わなければ

──局のブランドといえば、テレ朝には『相棒』『科捜研の女』という盤石なドラマがあります。
【新井順子】そうそう、『アンナチュラル』って何かとテレ朝ドラマの登場人物がセリフに出てくるんです。でもそれって、右京さんといえば『相棒』の登場人物だと誰もがわかっていないと成立しないんです。
【小田玲奈】本当にすごいことだし、何シーズンにも渡って放送できることは自分にとって理想のドラマの形です。連ドラをやっていていつも思うのが、なんで10話で終わらせなきゃいけないの? ということ。ようやくキャラが乗ってきたところで終了になってしまう…。『ホリデイラブ』も壇蜜さんや平岡祐太さんにも、もっと大暴れしてもらいたかった(笑)。
【飯田爽】たしかにもう少し描きたかったところもあったんですけど、全部やるとワンクールでは収まりきらないですよね。
【小田玲奈】日本ドラマの海外番販を阻んでいる原因の1つに、話数の少なさは確実にありますよ。とくに中国は最低、30話ないと厳しい。『家売るオンナ』も『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』も中国でリメイクが決まっていますが、どちらも30話以上になる予定です。『Mother』もトルコで30話くらいのリメイクがヒットしていて、オリジナルではなくそっちが世界で売れていたりしますから。
【飯田爽】たしかに世界の連続ドラマは話数が長いものが普通ですよね。
【新井順子】ただ、役者さんがそれをやりたいかは別の話じゃないですか。
【小田玲奈】そうですね。とくに若い役者さんは新しい自分を見つけたいという想いもあるだろうし、難しいかもしれない。でも、シリーズものの連ドラってもっとあっていいと思うんです。

──俳優の話が出ましたが、最近の連ドラはキャストと企画、どちらが先に決まることが多いですか?
【飯田爽】半々くらいですかね。ただやっぱり企画ありきで、この役はこの俳優がやったら絶対におもしろくなる、と組み合わせていったほうが当たることが多い気がします。
【新井順子】今の時代、テレビドラマの主演を張るのにすごく勇気が要りますからね。当たれば万々歳だけど、外れたときの叩かれようが主役に一点集中しますから。だから最近は、トメや二番手なら、という方もいらっしゃる。
【小田玲奈】いますよね。びっくりしたのが、「この企画なら傷つかなそうだからやります」とおっしゃった方がいて。よっぽど傷ついてきたんだろうなと気の毒になりました。
【飯田爽】一方で数字なんか関係ない、おもしろい台本だから出演するという方もたくさんいます。ネットでも最近は「数字はよくなかったけど、満足度は高かった」みたいな記事もよく出るし、いろいろな指標ができたことはありがたいです。
【小田玲奈】ただやっぱり俎上に挙げられるのは主演俳優なわけで、彼らを守る意味でも数字はちゃんとねらわなきゃいけないと思っています。でも0.1%下がった程度で記事にしないでほしい。それ誤差ですから(笑)。
(文:児玉澄子)コンフィデンス4月30日号掲載

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