勝野洋 いつ剣の仕事来てもいいように木刀を毎日振っている

5月6日(水)16時0分 NEWSポストセブン

 役者デビューからしばらくドラマで現代の好青年を演じ人気を集めた勝野洋だが、『風の隼人』への出演から時代劇にも活躍の場を広げ、今ではアクションも殺陣も本格的に演じられる俳優として知られている。殺陣を教わった東映京都撮影所での思い出について勝野が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏の連載『役者は言葉でできている』からお届けする。


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 1970年代に『太陽にほえろ!』『俺たちの朝』といった人気テレビドラマに相次いで出演して人気俳優となった勝野洋は1980年代初頭、テレビシリーズ『柳生あばれ旅』や映画『燃える勇者』に出演。千葉真一率いるJAC勢と激しいアクションを繰り広げている。


「千葉さん、真田広之さんと『柳生あばれ旅』をやった時は半年間、妻と子供を連れて京都に引っ越していました。


 東映京都撮影所には菅原俊夫さんという殺陣師の方がおられるんですが、この人にビッチリ教えられました。菅原さん、監督がOKを出しても『あかん』と言うんですよ。それで長い殺陣を付けてくる。『どのくらいできるか見てやろうか』って言って。僕は立ち回りが好きだから、長いほど嬉しかった。そういう立ち回りの撮影が毎日ありましたから、実戦の中で覚えて、槍も使えるようになりましたね。


 JACの連中とやる時は同じことをさせられました。ワンカットで屋根の上からカメラの前に飛び降りて着地する……とかも千葉さん、真田さんと三人でやりました。スタントなしです。やりたかったんで、やっちゃいました。『燃える勇者』で大井川鉄道の車両の上で立ち回りをやりながらトンネルに入る時は、さすがに怖かったですが」


 今もスペシャル版で新作が作られている中村吉右衛門主演『鬼平犯科帳』では、連続ドラマ時代の第三シリーズから出演。勝野の演じる同心・酒井は吉右衛門扮する長谷川平蔵の側近であり、終盤になるといつも切れ味の鋭い立ち回りを見せている。


「『鬼平』では力を入れないようにしています。吉右衛門さんの横にいて当たり前みたいな、そういう雰囲気を出したいと思っています。画のバランスを考えると、無理に前に出ることはない。自然に収まっていれば、視聴者にとってはそれでいい。


 ただ、立ち回りにはこだわっています。酒井は斬り込み隊長で、そこが楽しみなんですよ。若い時より、今の方が立ち回りはできていると思います。若い頃は刀を持つ時に力が入る。でも、今は入れないでやれているから、技で行けています。


 でも、腰はしっかりしていないとダメです。立ち回りでは足腰がブレては絶対にダメ。斬る時は足の動きが大事なんですよ。足が動かないと手斬りになってしまう。そうすると本身の場合は振り下ろした刀の勢いが止まらなくなって、自分の足を斬ってしまうこともありますから。


 日本刀が好きでしたので、若い頃から林邦史朗先生という大河ドラマをやられている殺陣師の方に本身の斬り方を教わっています。初段なんですよ。


 撮影では竹光を使いますが、その時でも本身の重さを意識します。竹光は軽いけど、本身は重い。ですから、歩く時も抜く時も、まず刀の重みを出しながらやることを考えますね。本身の重さだと実際にはそんなに振ることはできません。そこは感覚で全てフォローしています。


 ですから、日頃からジッとしていません。今でも家に木刀を置いて毎日振っています。いつ剣の仕事が来てもいいように」


■春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『あかんやつら〜東映京都撮影所血風録』(ともに文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。


※週刊ポスト2015年5月8・15日号

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