佐藤優氏と片山杜秀氏が語り合う「日本の独裁制可能性」

5月6日(日)7時0分 NEWSポストセブン

思想史研究者の片山杜秀氏

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 平成の時代を体現した今上天皇のあと、2019年5月1日に即位する皇太子はどのような天皇像を築くのか。『平成史』(小学館)を共著で上梓した元外務省主任分析官の佐藤優氏と、思想史研究者の片山杜秀氏の2人が、世界が民主主義から独裁に傾く傾向にあるなか、日本での可能性と天皇の存在について考える。


佐藤:印象的だったのは昨年11月のトランプの東アジア歴訪です。中国でトランプを迎えた習近平は故宮を案内した。故宮は中国共産党の高官も立ち入れない神聖な場所です。それを我が物顔で、米大統領を案内した。これは習近平が、中国における現人神である皇帝となって、天とつながったと見ることもできる。一方のトランプも宣誓では必ず聖書を前に置く。これも神とつながる行為です。


片山:自信過剰なトランプも、中国を掌握したように見える習近平も不安があるからこそ、神とつながろうとするんでしょうね。そうした不安が世界中を覆っているせいで、全世界的に民主主義の機能不全が起きているように見えます。


佐藤:議論を尽くす民主主義の意思決定には時間がかかる。でも社会が目まぐるしく動く現代では、意思決定に時間をかけない独裁体制を求めてしまう。あるいは神など理性の外側にある英知を求め始めた。


片山:日本でいえば、「日本会議」(保守系の民間自体)がそうです。彼らは戦後民主主義を恨み、超越的な天皇主権への復帰を目指した。復古主義者である彼らや反知性主義の安倍政権は、いまの時代と相性が非常にいい。


佐藤:ただし、今後、日本で独裁が可能になっていくかといえば、疑問です。たとえば戦前の日本は大政翼賛会を結成し、天皇を中心とした独裁体制を目指しました。しかし実現できなかった。私はその原因を天皇がいたから、と考えているんです。


片山:日本人は首相公選や大統領制に対して、無意識の抵抗があります。ご指摘の通り、我々日本人の無意識を支配して、独裁的な民主主義を否定するくびきとなっているのが天皇制です。


佐藤:現下日本の政治状況では、天皇制反対と反安倍政権の動きも結びつかない。


片山:逆に今上天皇を立て、平和、民主主義、日本憲法を擁護していこうと考えているリベラル言論人も少なくない。今上天皇の存在を反安倍政権につなげて論じる人も増えています。


佐藤:こう考えていくとやはりポスト平成の時代に皇太子がどのような天皇像を目指すかで日本の社会は大きく変わりそうですね。


片山:そう思います。民主主義から独裁へと歴史の歯車が逆方向に回り始めた時代に、皇太子に神聖天皇像を担わせようとするのか。人間天皇を突き詰めるのか……。答えは間もなく出ます。


●さとう・まさる/1960年生まれ。元外交官、作家。同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。国際情報局分析第一課などで活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2005年に執行猶予付き有罪判決。近著に『十五の夏』など。


●かたやま・もりひで/1963年生まれ。思想史研究者。慶應義塾大学法学部教授。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。専攻は近代政治思想史、政治文化論。近著に『「五箇条の誓文」で解く日本史』など。


※週刊ポスト2018年5月4・11日号

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