【インタビュー】『クリード 炎の宿敵』具志堅用高「僕もロッキーのようなトレーナーになりたい」

5月6日(月)10時0分 エンタメOVO

具志堅用高

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 「ロッキー」シリーズの最新作『クリード 炎の宿敵』のブルーレイ&DVDが5月10日に発売される。それを記念して、世界タイトルを13回防衛した不滅の王者で、現在はジムの会長として後進を指導する具志堅用高が、「ロッキー」シリーズと本作について熱く語った。



−最初の『ロッキー』が製作されたのが1976年。くしくも同じ年に具志堅さんは世界チャンピオンになりました。何か縁を感じますが、当時映画は見ましたか。

 もちろん見ましたよ。それで、ロッキー(シルベスター・スタローン)がロードワークをするときに着ていたパーカーをまねして着てみたり、ロッキーみたいに牛乳に卵を入れてがーっと飲んだり、ゴーヤを入れてみたら苦かったのでハチミツを入れたりして(笑)。実は当時付き合い始めたばかりだった今の女房と、ジムの会長には内緒で、初めて一緒に見に行った映画が『ロッキー』だったの。それで「負けるときは俺もこういうふうになるよ」と言ったんです。それから、一生懸命に戦っている姿を通して、お客さんに感動を与えることができるということは、ロッキーから学んだところがあります。

−ロッキーやこの映画のクリード(マイケル・B・ジョーダン)は、何度もダウンし、敗れてはまた立ち上がるタイプのヘビー級のボクサー。具志堅さんは最後の試合が唯一の敗戦というジュニア(現ライト)・フライ級の選手でした。ボクサーとしてのタイプは異なりますが、ロッキーやクリードに共感するところはありますか。

 僕たちが現役の頃は、今と違って15ラウンド制で、僕にもノックアウトではなく判定で決まった苦しい試合が何回かありました。特に、目を切ったり、腫らしたりした試合はロッキーやクリードと同じような感じでした。そういう苦しい戦いもしてきたけれど、やっぱり最後まで諦めたらいけないと…。13、14、15ラウンドと戦った試合は、最後はもう勝ち負けは関係なくなって、自分が勝ったかどうかも分からなかった。だから、試合が終わって、自分の手が挙がって、お客さんの歓声と拍手が聞こえた瞬間は最高でした。だから僕は防衛を続けていけたんです。一度世界戦のリングを経験すると忘れられなくなります。
 この映画には、王座が空位になって、1年以内に試合をしろというところがあった。今は指名試合は1年に1回ぐらいだけど、僕らの頃は90日以内だったから、年に2、3回世界戦をしなければならなかったんです。間隔が短かった。それもあって、僕の場合は一度負けただけで、リターンマッチはしないで、後輩(渡嘉敷勝男)に後を託して引退しました。引退は女房と相談して決めました。ジムの会長には随分とめられたけど、「もう、やるだけやったから」と。

−ロッキーがクリードを育てたように、具志堅さんも今はジムの会長として後進に指導をしています。つまり選手とトレーナーの両方の立場からこの映画が見られるわけですが、そのあたりはいかがでしたか。

 僕はシルベスター・スタローンのロッキーが大好きで、現役の頃からこのシリーズを見てきたけど、今回はマネジャーとトレーナーの役。これがまたすごかった。クリードはもともと素質のある選手だし、練習をすればもっと強くなるという、ボクシングの技術的なアドバイスだけではなくて、家族のことなどボクシング以外のことも助言する。昔と違って今のボクサーには家族の存在が大きい。家族の協力がないとできないんです。周りのサポートがなければ、一人では何もできない。彼女もいなくちゃいけないしね(笑)。実は選手はこういうことの方が頭に入るんですよ。こうしたアドバイスの仕方は、今の時代には一番大事なことです。だから見ていてとても勉強になりました。僕もまねしたいと思った。でも、砂漠でのトレーニングなんかは僕にはまねができないけど(笑)。
 この映画のスタローンは大事なことを何げない感じで言ったりする。世界の一流トレーナーは選手の気持ちを読み取って冷静に対応するけど、日本人には、僕も含めてせっかちな人が多い。だから僕もあんなふうになりたい。大事な試合こそ冷静さが必要になるから。

−プロの目から見て、「ロッキー」シリーズの試合のシーンはどのように映りますか。

 会場も、レフリーも、リングアナもみんな本物ですよね。だから本当の世界戦のような感じがします。試合のシーンはやっぱりヘビー級だし、多分カメラマンがリングに上がって至近距離から撮っているから迫力がある。それからパンチの角度や音も半端ではない。それが徹底している。だから面白いし、感動もする。僕らのような軽量級の試合ではあの迫力は出ないです。あのフックやボディーなんて…、普通素人にはあんなパンチは打てませんよ。昔の試合はグローブが小さかったから、上に向かってパンチを打つことが多かったけど、今は軽量級でもボディーを狙ってダウンさせようとする。この映画でもボディーを打つ場面が多かったでしょ。それでクリードの肋骨(ろっこつ)にひびが入ったりして…。あれは今のスタイルに合わせているんです。僕らの頃は、ボディーで試合が終わることはあまりなかったから、この映画はそういう変化をちゃんと描いています。それから今のボクシングは、お客さんに見せるというショービジネスの要素が強いですね。

−現役時代に、この映画のような、ライバルと呼べる人はいましたか。

 選手の中には特にいなかったです。怖いのはむしろ友だちでした。有名になると誘いも多くなるし、いろいろな人が周りに集まってきました。それで足を引っ張られる(笑)。遊ぶのは楽しいから。だから試合が決まったら、電話も取らないようにして、なるべく家から出ないようにしました。そういう意味では、自分自身がライバルなのかな。実は、試合の前は怖くなるから、本当は友だちに慰めてもらいたくて、会いたくなるんです。でも今の若い子は、それを我慢できない。孤独になれない。だから家族と一緒にいるのが一番いいのかな。我慢して頑張ればそれだけチャンスも広がるんだけどね。

−では、最後にこの映画の見どころをお願いします。

 この映画は、リング上でのボクシングの戦いを中心に描いているけれど、家族など、リング外での戦いも描いています。だから僕たちの人生にも共通するところがたくさん出てくる。家族も、勝つことも大事。昔ロッキーから学んで、それが今また違った形で見られることが素晴らしい。今の僕はボクシング以外に、タレントの仕事で全国を回ったりもしているけれど、一生懸命やるのは全部同じ。ロッキーの精神に通じています。

(取材・文・写真/田中雄二)

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