波瑠と東出昌大の不倫ドラマ ゲスでクズだが新鮮な理由

5月7日(日)7時0分 NEWSポストセブン

番組公式HPより

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 主演の2人のそれまでの清廉なイメージをうまく逆手にとった作品と言えそうだ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が今期注目のドラマについて指摘する。


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 波瑠が主人公・渡辺美都を演じ、東出昌大がその夫・涼太を演じるドラマ『あなたのことはそれほど』(TBS系火曜夜10時)。ありそうでなさそうな、不思議な夫婦の世界が話題を集めています。


“2番目に好きな人”涼太と結婚したとたん、偶然再会してしまった初恋の相手、光軌(鈴木伸之)。1番好きだったこの彼への思いをひきずる主人公の美都。さあ、どこまで暴走するのか。


 現実を見れば、「1番好きな人」と結婚できた人なんて世の中にどれほどいるのでしょうか? 一方、夫の収入や世間体…様々な安定性を求めて「打算婚」した人の割合は相当高いはず。その「打算婚」の安定を揺さぶるこのドラマ。下手に触ると危ないテーマです。


 ラブホテルで不倫のみならず、相手に妻がいてしかも妊娠していることを聞いても、反省も後悔もせず。またずるずるとホテルへ向かう美都。「まったく反省なく不倫する主人公たちがクズすぎる」と反発の声も聞かれます。


 私としては、正面から倫理を破っていく妻を波瑠がどう演じるのか興味津々で、ドラマを見始めたのですが……一見するとストーリーはたしかに「ゲス不倫ドラマ」。でも、どこか新鮮。


 初恋の人に心が揺れ不倫にはまる過程も、暗くなくドロドロもしていなくて、あっけらかんとしている。見たことのないパターンです。常識的な世間体のその向こう側まで突き抜けたような、爽快感すら漂う。浮き世離れした感覚が、面白い。


 波瑠にはコミカルな軽みもあって、役者として新しい境地を見せてくれています。


 これまで「透明感」「清純さ」「真面目」といったイメージをまとってきた波瑠が、こんな役もやれるんだ、という驚き。この役を引き受けたことでイメージダウンを嘆く声もありますが、いやむしろ私は役者としての可能性を広げたように感じます。


 そう、ドラマを見ている人々が「クズすぎる」と感じること自体、上手に演じている証し。物語世界の中へ、視聴者をしっかりと引きずり込んでいる証拠です。


 その波瑠を上回る?注目を集めているのが、夫を演じる東出昌大。妻のうわごとから不倫に気付き、スマホを盗み見する夫の狂気ぶりがヤバイ。まばたき一つしない瞼、ギロリとした2つの眼球は、狂気と嫉妬の結晶。


 妻の周辺を調べ上げていく、ねっとりとした暗い情熱。「冬彦さんの再来」と視聴者の間でもざわめきが起こっています。


 そう、思い返せば『ずっとあなたが好きだった』(TBS系)で佐野史郎がマザコン夫を気味悪く熱演し“冬彦さん現象”を巻き起こしたのは1992年。何と、25年も前。それがいまだ風化せず、「冬彦さん」と語られ続けていること自体に驚く。敬服すべきは佐野史郎の破壊的演技パワー。


 となると、ますます注目の東出さん。「冬彦の再来」と言われていますが、その枠の中に留まって終わるのか。いや、それとも20年、30年経った時、「あの涼太現象を巻き起こした……」と語り草になり伝説化するのか。そこがポイント。


「善人」「優しい夫」というイメージの東出さんですが、どこまで「暴力的」で「キケンな」魅力を見せつけるのか、これからが勝負です。


 波瑠と東出昌大。「あっけらかん」と「ねちねち」。ともに自分の殻を脱ぎ捨てようと挑戦に挑む、クズ人間ドラマ『あなそれ』。役者の存在をかけたストラッグル・格闘を見ることができる点こそ、ドラマ視聴の醍醐味です。

NEWSポストセブン

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