大々々注目しているからこそ言いたい ファイターズは清宮幸太郎だけのチームじゃない

5月8日(火)11時0分 文春オンライン

 ファイターズのGWシリーズ(5月2、3日楽天戦、4、5、6日ロッテ戦)は清宮幸太郎フィーバーだった。今季どこかのタイミングで1軍へコールアップされるとわかっていたが、大型連休のホーム5連戦は最高のタイミングだった。イースタンで結果が出始めたと思ったら、ちょうど近藤健介(軽度の右ふくらはぎ筋挫傷)、レアード(背中の張り)の戦線離脱で打線テコ入れの必要が生じた。天の配剤という感じがする。


 もちろん栗山英樹監督のことだから上げたからにはスタメンで使う。メディアもファンも色めきたった。新しいヒーロー物語はどんな幕開けだろう。5月2日、清宮幸太郎が「6番DH」で初めて1軍公式戦に名を連ねた試合、日本ハム球団は何と札幌ドーム来場者全員に「観戦証明書」を配布した。



5月2日、札幌ドーム来場者全員に配布された「観戦証明書」 ©えのきどいちろう


「CERTIFICATE/清宮幸太郎選手 札幌ドームデビュー戦 観戦証明書  貴方は、清宮幸太郎選手の札幌ドームデビュー戦をその目で目撃し、歴史の証人となったことをここに証明いたします。 北海道日本ハムファイターズ」


 これは日付が入ってないし、「札幌ドームデビュー戦」となってるからずいぶん前から準備していたものだろう。実際は「札幌ドームデビュー戦」どころか1軍デビュー戦なのだが、「札幌ドームデビュー戦」としておけば敵地でプロデビューしちゃった場合にも使える。まぁ、当たり前といえば当たり前だが、球団がいかに清宮デビューというイベントに力を入れていたかを物語るエピソードだ。もうGWのホーム5連戦なんて営業セクションは願ったり叶ったりだったと思う。僕はこういうことにシニカルな物言いはしない。心からよかった。球界にはスターが必要だ。華が必要だ。それが四方八方丸くおさまる、最高の形でデビューを飾ったのだ。


「岸vs清宮」のスター・ウォーズ


 やはりデビュー戦・初打席の衝撃を描写しておくべきだろう。楽天4回戦、2回裏2死走者なしの場面だ。登場曲は「スター・ウォーズのテーマ」。楽天・嶋基宏捕手に一礼して、軸足の足場を固め、ベースをコツンと一度叩いてメットをおさえ、ひとつ身体のひねりを入れるいつものルーティン。落ち着いている。マウンドにはエース格の岸孝之がいる。「岸vs清宮」のまさにスター・ウォーズだ。まず1球、まっすぐを外に外してきた。2球目は内懐にカーブ、これがストライク。清宮はカーブにまったく反応しない。僕はバッテリー、慎重な入りだなぁと思った。カウント1-1からの3球目、嶋は外に構えたが、ストレートが少し内側に入った。といっても岸のまっすぐだ。キレがある。清宮は2軍でプロのキレのある球に手こずってきたはずだ。


 それがスッとさばいた。インパクトは「ポンッ」ていう感じだ。いや、強打者のインパクトの瞬間は擬音語にすると大抵「グワッキーン!」とか「ガツン!」みたいな音なのだが、清宮は高校時代から「ポンッ」と柔らかく打つ。それが非凡だ。ヒザの使い方が柔らかく、間があるのだ。バットがスッと出て、スイングスピードがとんでもなく速い。「ポンッ」と打った当たりはセンターへ伸びていく。瞬間、皆がホームランだと思った。岸がマジかという表情で振り返る。打球はフェンス直撃、センターオーバーの2ベースだった。



 ちなみに打者・大谷翔平のデビュー戦も岸孝之(当時西武)だった。2013年3月29日の開幕・西武戦(西武ドーム)、大谷は8番ライトで先発出場し、第1打席はストレートの見逃がし三振だった。もっともその後、第2打席でストレートを打ち2ベース、第3打席はチェンジアップをライトに弾き返し、プロ初打点を挙げている。僕は5年前も球場で「フツーの高校生、岸の球なんて絶対打てないよ!」と大騒ぎしたものだが、今年もそっくり同じセリフを口にしていた。



ファイターズは清宮だけのチームじゃない


 それからこのGWシリーズ、清宮は5試合連続ヒットを続けている。プロ初打席の会心の当たりではなく、内野安打が多かったりする意外な展開だが、とにかく「H」のランプをつけ続けている。楽天、ロッテのバッテリーが警戒してかかるので(デビューの翌日から「5番スタメン」だから警戒して当然なのだが)、きびしい球が多く三振が増えた。評論家筋に褒められているのは、前の打席で牛耳られた球筋を覚えて、後の打席でヒットしている気持ちの強さ&対応力の高さだ。どの投手のどの球種も初めて見るわけで、きりきり舞いして当然なのだ。清宮はその球を「絶対打ってやる」と決意して次の打席に立つ。面白いのだ。結果打てるか打てないかだけでなく、プロの決め球を「絶対次は仕留めてやる」と勝負に行く姿が面白い。


 と、僕も清宮幸太郎に惚れ込んでいるから大々々注目しているという話をした。以下、別のことを書きたい。別のことと言っても「大々々注目している」という話と自分のなかで矛盾はしていないつもりだ。シンプルに言う。ファイターズは清宮だけのチームじゃない。5月6日の上位打線を挙げてみよう。1番西川遥輝、2番大田泰示、3番アルシア、4番中田翔、5番清宮幸太郎。これ全員、「キン肉マン」で言ったらキン消しになってる超人だ。「ギュイーン」「ボカーン」「グワッキーン!」「ガツン!」とタイプの違うバッターだ。もちろんそこに近藤健介とレアードが加われば言うことないけれど、野球ってそういう夢の連なりを見るものでしょう。


 わかりやすい例を挙げる。5月3日の全国ネットNHK中継、GWの地上波中継は日ハム楽天両球団のファンだけでなく、広く一般視聴者に向けて届けられる性質のものだった。前日、プロ初打席でフェンス直撃弾を放った清宮幸太郎はもちろん中継の主役だ。試合開始から画面の右肩に「F清宮 先発出場5番DH」とテロップが出ている。何度も言うがそれ自体はうれしいし、ありがたいのだ。ファイターズの目玉ルーキーを盛り立ててくれているんだから。


「清宮の前の打者」扱いへの違和感


 ただね、回が進んで4対1リードの8回裏になった。1死走者なしから3番アルシアがショートの横を抜けるヒットを放つ。とカメラはベンチから出てくる清宮をアップでとらえる。事情がわからない人は次の打者は清宮なんだと勘違いしただろう。で、実況アナがこう言った。


「アルシア、今日三振2の後、ヒットが出て、さぁ、これでこのままダブルプレーがなければ清宮にまわります」


 1死走者1塁だからそりゃダブルプレーがなければ5番清宮へまわるのだ。それは事実だけれど、4番は中田翔なんだよ。中田翔はうちのキャプテンで、打点王2回、ベストナイン4回のパリーグの顔なんだよ。「このままダブルプレーがなければ」なんて名前すら言われずスルーされる存在じゃない。彼は今季、これまでとはまったく違う野球への取り組み方をしている。間違いなく下馬評の低かったチームが上位につけている理由の一つだ。


 僕も大人だからNHKスタッフに悪気がないことくらいわかっている。実況アナにも他意はない。ただ清宮にまわりそうだから(次の4番打者を飛ばして)清宮をアップで映し、「ダブルプレーがなければまわります」と言ったに過ぎない。


 ただそれは野球観としておかしいと思うよ。ニュアンスは海外スポーツのニュースやなんかで、日本人選手の活躍だけ伝えて相手チームや対戦相手の名前すら言わないのに似ている。一つの情報にフォーカスしすぎ。中田翔はね、「清宮の前の打者」じゃなくて名前がちゃんとあるんだ。


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(えのきど いちろう)

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