「アガり」が見えない、グラビアアイドルという仕事のツラさ

5月9日(金)8時0分 messy

「4PiecesBlu-rayBOX」ラインコミュニケーションズ

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 前回の当連載でグラドルが書いた小説をいくつか取り上げましたが、原稿を書きながら私は「最近のグラドルは小説まで書かなきゃいけないなんて大変だ……グラビアアイドルなのに……」と憐憫の情を禁じえませんでした。自分の不倫体験を綴った酒井若菜には(私小説という日本の純文学の伝統に乗っかるようですが)小説を書く理由がありましたし、今野杏南はたぶん自分で書いてないから別に良い。可哀想だったのは吉木りさですよ。

 彼女の小説『誰かさんと誰かさんがネギ畑』(竹書房)からは、特別な才能があるわけでもないのに、事務所にやらされて頑張って書いた不憫な感じがビンビンに伝わってくる。しょこたんや壇蜜のようなバラエティーでも活躍できる胆力がないタレントに、事務所が考えた話題作りの策だったら……と考えると、一層不憫さが増しますし、昨今、まことしやかに囁かれている「グラドル不況」のなかで精一杯頑張ってるんだな……という感じがして吉木りさに萌えちゃいます。

 吉木りさに限らず、近年「ヤングアニマル」(白泉社)や「ヤングチャンピオン」(秋田書店)のグラビア・コーナーを主戦場としているグラドルたちの伸び悩み感が顕著だとは思いませんか……?とおもむろに同意を求めてみましたが【messy】読者の女性の方々には、どの雑誌にどんなグラビアが載っているかご存知ない方も多いと思います。というか、興味がない人もいるかと思いますが、今回は混迷するグラドル界について好き勝手分析します。

 まずは完全なる私見に基づいて、現在、雑誌によってグラビアにどんな傾向があるか四象限マトリクスに落とし込んでみました。

(※作図に小一時間かかりました)

 この図では、縦の軸には「大人」と「ロリータ」という傾向を、横の軸には「エロス」と「健康美」という傾向を示しています。つまり、上にいけば「大人の女性っぽく」、下にいけば「少女っぽい」、右にいけば「エロくて」、左にいけば「健康的な感じ(かわいい)」という特徴がでてくる。

 吉木りさが主戦場としていたのは「エロス」かつ「ロリータ」が高めとなるゾーンです。ちなみにこのゾーンからかつては、しょこたんや小倉優子など、現在バラエティーやママドルとして活躍するタレントを輩出しています。彼女たちは、ひな壇で上手く立ち回れたり、おしゃべりができたり、歌が歌えたり絵が非常に上手かったりブログ更新を頻繁にしまくったり……という胆力によって、グラドルからアガった人たちです。たぶん多くの現役グラドルたちはこのアガりを目指しているハズなのですが、吉木りさの場合、このアガり方ができそうで、できてない。

 もちろん、グラドルからのアガりは、笑いもとれるバラドルばかりではありません。「女優」という道があります。ただ、このゾーンから本格的な女優に……というケースはほとんど確認できませんよね。女優が出てくるのはやはり「大人」ゾーン……だと思うんですが、ここ最近はこのケースも減っている。

 アガれないグラドルはどうなるかというと、これはもうグラビアをやり続けるしかないからしんどいですよね。歳はとるし、後輩も入ってきちゃうし「いつまでやるの?」とファンからも思われながら「わたしはグラビアの仕事が好きなので、やれる限りやりたいです!」みたいなコメントを出しながら頑張る……というのはなんとも健気です(つい最近まで山本梓がそんな感じだった……)。しかも、時代はかねてから言われている通り、出版不況だし、グラドル不況でしょう。活躍したくてもできないよ、という状況になってもいる。

 グラドル不況が起きた理由については、かつて篠崎愛がテレビ出演時に告発したようにAKB系の方々が頑張っちゃっているのも理由のひとつでしょう。極端に言えば、AKB系の方々が、このマトリクスの左半分からグラドルを追い出しちゃっている(最近になって、佐野ひなこのようなグラビアもやる正統派アイドルみたいな方もでてきていらっしゃいますが)。

 これではほとんどノー・フューチャー感しかなくて、原稿を書きながら自分も未来がないグラドルに憑依したみたいな気分になってしまい気が滅入ります。そして昔はグラドルの世界にも希望があったハズなのに……と一気に懐古モードに。第一、昔は「ロリータ」なんてマニアックな専門誌のジャンルとして扱われており、メジャー誌にはなかったですよ。健康的でキラキラしていたか、エロかったかの二つの方向性しかなくて、すごく世界はシンプルだったと思うのです。再び、図示するとこんな感じになります。

 具体的に言うと、左側では岩佐真悠子や市川由衣が活躍しており、右側ではイエローキャブが全盛だった時代を想定しています(時期的には2000年代前半)。価値が2方向にしか延びていないので、シンプルなのに図が混み入ってきますが、この時代は「可愛いくてキレイで健康的なコ」(左側)、「あんまり可愛くないけどエロいコ」(右側)しかありませんでした。極論すれば「可愛くて、エロい」という価値は存在し得なかったのです(たとえば夏目理緒や花井美里。彼女たちはあんまり可愛くないからこそ、爆乳や肉感的なエロスを売っていたんですから……)。

 しかし、これが「ロリータ」という価値観がメジャーになるにつれて「可愛くて、エロい」も発見されていきます(その嚆矢として小倉優子の名は外せないでしょう)。同時に「着エロ」というエロスの先鋭化を図るグラドルたちも出てくるようになる。すると超大陸パンゲアのように混み入っていたグラビア業界が、徐々に多様化し、島化していきます。この多様化の結果、リーマンショックがあった2008年ぐらいまでには最初にお見せしたマトリクスのような状況ができあがっていたと思われます。

 先鋭化や多様化が過ぎると地下化してしまうのも世の常です(現在での『着エロ』はジュニアアイドルなどの際どいところに潜伏したり、うしじまいい肉に象徴されるようなインディーズ化したりしている)。こうして多様化は、事実上のメジャーの弱体化を引き起こしていたと言えましょう(まるで音楽業界みたいな話ですが……)。そこに出版不況とグラビア雑誌の休刊、それに引き続き、AKB系アイドルの台頭があれば、グラビア不況は起きるべきして起きたと言っても過言ではありません。

 以上の変化においては「社会のロリコン化」も大きなファクターのひとつだったように思われます。しかし、こちらについては稿を改めましょう。【messy】読者の皆様も、ツラいことがあったら、アガれないままに芸能界を去ったグラドルのことを考えて「自分のツラさはきっとあのコたちも感じたツラさなんだ……」とか思えば、また頑張れますよ!!

■カエターノ・武野・コインブラ/80年代生まれ。福島県出身。日本のインターネット黎明期より日記サイト・ブログを運営し、とくに有名になることなく、現職(営業系)。本業では、自社商品の販売促進や販売データ分析に従事している。

 

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