石坂浩二「この役をやれなかったら60年の俳優人生が無駄に」

5月10日(水)7時0分 NEWSポストセブン

「いま、芝居が楽しくて仕方がない」という石坂浩二

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「いま、芝居が楽しくて仕方がない。60年以上この仕事を続けてきて、ある意味、初めての境地なんですよ」


 俳優・石坂浩二(75)はくつろいだ表情ながら、じっくりと噛みしめるようにそう語った。


 石坂はいま、4月に放送が始まった倉本聰脚本のドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系/毎週月〜金曜、昼12時半より放送)で主演を務めている。テレビ朝日がこの春より新設した、高齢者世代へ向けた昼の帯ドラマ「シルバータイムドラマ枠」の船出を飾る作品だ。


 放送期間は半年間。石坂の連ドラ主演は『水戸黄門』(2002年、TBS系)以来、約15年ぶりとなる。2クールも続く昼ドラの主演は、長いキャリアの中でも経験がない。75歳にしてなお、役者としての“初”に挑み続けている。


「1969年に出演したNHKの大河ドラマ『天と地と』が大河史上初のカラー作品で、僕は割とテレビ史の中の“初めて”に関わることが多かったんです。


 その延長でこれも初めてかと軽く考えていたら、今回は役者として出るだけでなくナレーションまで僕がやることになっていた。なにしろセリフの量は多いし、とんでもないことになってしまいました(笑い)」


 石坂が演じるのは一世を風靡したシナリオライター、菊村栄。ドラマではテレビ業界で活躍した人のみが入居を許される特別な老人ホーム「やすらぎの郷 La Strada(ラ ストラーダ)」でくり広げられる人間喜劇がユーモラスに描かれる。


 週5日の放送とあって、撮影は昨年10月からスタートしていた。


「クランクインした時にはもう、倉本さんが書かれた全130話の脚本が揃っているわけですよ。130話ですからねぇ。それはもう奇跡的なことなんです。すでに脚本があるから、あっちを撮ったり、こっちを撮ったり、放送回をバラバラに撮影できてしまうから、頭の整理が大変。


 あとはね、毎日放送されるということで、ドラマの作り方が絶対的に違うんです。次へ続けるというか、うまく火が点くことを期待させるというか、毎日の盛り上がりを落としちゃいけない。芝居以外にも、すごく気を遣います」


 石坂は、でもね、と言葉を切る。


「結局、60年以上この仕事をやってきて、この役をやれないとしたら、その時間を無駄に過ごしてきたことになるんですよね。


 役者人生の中で培ったノウハウがあって、毎日続く昼の連続テレビドラマであればそれをすべて出せる。逆に出せなかったら、60年間生きてきたことが無駄だったかもしれないという、切羽詰まったところで勝負しています」


 切羽詰まっているという告白とは裏腹に、その表情は実に溌剌としている。撮影現場では、待ち時間に昔のドラマ撮影の裏話をすることもあるという。


 たとえば、VTRがない時代の生放送でのドラマ作り。役者の演技はもちろんナレーションもすべて同時に一発撮りで収録していた。現代にはない緊迫感が漂う当時の現場事情に、スタッフも「へぇ!」「すごい時代ですね」と身を乗り出し、“お宝話”に聞き入っている。


「この作品に出ることで何十年間と芝居をして学んできたことを振り返ったり、『あの時にこういうことがあった』と思い出したりもする。それがもう楽しくてね。相手の役者の芝居も知っているから、その楽しみもある。


 芝居の運びかたは倉本さんも、『あんたたちは長くやってきたから、わかるだろう』なんて僕らにおっしゃったけれども」


●いしざか・こうじ/1941年6月20日、東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業。大学在学中の1962年にドラマ『七人の刑事』でデビュー。大学卒業後、劇団四季に入団。1976年に『犬神家の一族』に金田一耕助役で主演、市川崑監督でシリーズ化され空前の大ヒット。市川崑監督作品には他にも、『細雪』『ビルマの竪琴』など多数出演。俳優業のほか、司会者、クイズ解答者、作家などマルチに活躍。多趣味なことでも知られる。2009年にNHK放送文化賞受賞。『開運!なんでも鑑定団 極上!お宝サロン』(BSジャパン)、ドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)では主演を務めている。


取材・文■渡部美也/撮影■中庭愉生


※週刊ポスト2017年5月19日号

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