寺島しのぶ明かす 母・富司純子への思いが変化「愛を注いでくれた」出演舞台「自分と母の関係を...」
2025年5月10日(土)7時15分 スポーツニッポン
【インタビュー】女優の寺島しのぶ(52)が舞台「リンス・リピート−そして、再び繰り返す−」(京都・京都劇場=10日、11日)に出演する。大学生の娘の摂食障害をきっかけに浮き彫りとなるいびつな家族関係を描いた作品で、寺島は愛娘とすれ違っていく母親役。6日に終わった東京公演は「寺島さんの演技に引き込まれた」「家族のことをあらためて考えてしまう作品」と絶賛の声が上がっている。歌舞伎の名門・音羽家の長女として生まれながら、女性であるがゆえに歌舞伎俳優になれなかった寺島。自身の境遇とはどのように向き合ったのか。幼少期のこと、家族への思いを聞いた。(望月 清香)
「歌舞伎の家の娘」として生まれた寺島。父親は歌舞伎俳優で人間国宝の七代目尾上菊五郎。幼い頃から自然と歌舞伎への憧れが募った。だが、女性は歌舞伎俳優になることはできない。5歳年下の弟の八代目尾上菊五郎が初舞台を踏んだ時にその現実を悟った。「私はずっと客席から見ていました。なんで私はあそこに上がれないんだろうと思っていました」。
母親で女優の富司純子は弟を一人前の歌舞伎役者に育て上げるため、稽古に付きっ切りだったという。寺島は誰もいない自宅でテレビを見て家族の帰りを待ちながら「“なんで弟にだけそんなに時間を費やすのだろう”と思っていた」と寂しさや疎外感を募らせていたと明かす。歌舞伎への思いを断ち切るかのように稽古を辞め、学校の部活に打ち込んだ。
「お稽古の先生の熱が私と弟であからさまに違う。私にはすごく優しいのに、弟にはものすごく厳しい。そういうのを子供は感じるんですよね。部活に熱中して、なるべくクタクタになって家に帰った。家は寝るだけの場所でした。友達の家に行くことも多かったです」
感じていたことはほかにもあった。「私は自由なのに弟はスポーツはダメとか1人暮らしはダメとか制限があった」と振り返る。「自由イコール私のことはどうでもいいのかなと思った時期もありましたね。自由が悲しかったです」と当時の心境を語った。
そんな寺島の気持ちに変化が訪れたのは、長男で歌舞伎俳優の初代尾上眞秀の子育てがきっかけ。眞秀の稽古に付き添う中で、かつての母の姿が浮かんできた。「歌舞伎役者のお稽古はやらなきゃいけないことがたくさんあるんです。私が今、眞秀の稽古で忙しく奔走しているので、当時の母の忙しさは想像できます。母は私にも弟と同じように愛を注いでくれていたのだとは今は思えます」
歌舞伎役者の母親としての心構えを富司に教わっているという。「眞秀が歌舞伎の世界で生きていくために、母親が心掛けていないといけないことを私が恥をかかないようにいろいろ教えてくれています。たくさん助けられているし、もらってばかりのような気がします。いまだに絶対的な存在です」と感謝をにじませた。
そんな寺島は家族の物語「リンス・リピート」は「自分と母の関係を思い浮かべながら演じています」と語る。東京公演では客席の大きな感動を呼んだ舞台が京都でも貴重な時間を届けてくれそうだ。