柚香光&早乙女友貴、“宝塚退団後初の芝居舞台”&“準劇団員”のふたりが語る「劇団☆新感線」の魅力
2025年5月11日(日)9時0分 クランクイン!
◆柚香光、「新感線」初体験時に受けた衝撃
新感線の記念イヤーを飾る第1弾公演は、人と人ならざる者が生きる世界を舞台に、鬼をモチーフとした重厚なストーリーと、新感線らしい歌とダンスを交えて繰り広げるエンターテインメント作。演出・いのうえひでのりと作・青木豪がタッグを組み、これまでにない新たないのうえ歌舞伎、新感線流お伽噺を届ける。柚香、早乙女のほか、喜矢武豊、一ノ瀬颯、樋口日奈、粟根まこと、千葉哲也、鈴木拡樹ら、新感線デビュー組とおなじみの顔ぶれがそろった。柚香は貴族である源蒼(鈴木拡樹)の奥方で、ある朝、娘の藤(樋口日奈)と共に忽然と姿を消す紅子を、早乙女は、源蒼の家臣(喜矢武豊)を襲う鬼・栃ノ木を演じる。
——本作出演のお話を聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?
柚香:ワクワクとドキドキでいっぱいになり、とても興奮しました。初めて新感線の舞台を拝見したのは、『髑髏城の七人』。宝塚在団中に同期生から誘われて観劇したのですが、舞台に刀が突き刺さっていて、爆音で、お客様を刺すような照明でと、開演から衝撃を受けて! こんな始まり方があるんだ!と一気にテンションが上がったことを覚えています。お客様が新感線の世界に惹きこまれていくのを感じたんですね。かっこいいアクションの数々に合わさった音の臨場感、立ち回りの多さと迫力、何もかもに「うわー!!!」と圧倒されて、翌日まで目がギンギンになるくらいのインパクトでした(笑)。
——そんな新感線の舞台には欠かせない、“準劇団員”とも言われる早乙女さんですが、今回のオファーを受けてのお気持ちは?
早乙女:2023年の『天號星』以来の新感線参加となるのですが、それまで5年連続で出させていただいていました。新感線は1回出ると2〜3年空くという、ルールじゃないですけどジンクスみたいなものがあったようで、その時も異例だと言われていたんです。今回こうしてお話をいただけてうれしい反面、ファンの方々に「またお前出るのかよ」と思われていないか心配になりましたけど(笑)、純粋にうれしかったですね。
——青木さんが描かれる台本を読まれての感想はいかがでしょう。
早乙女:いのうえさんもおっしゃっていましたけど、すごく生々しい描写で人間と鬼が描かれています。それぞれが抱える欲や弱さ、そういったものにすごく心惹きこまれる台本だなと感じました。僕は青木さんの作品に出たいと思っていたので、青木さんの世界観というか、新感線にはないダークな生々しさが、いのうえさんの演出により新感線色が入ることで、どういった感じになるのかすごく楽しみですし、いつもの新感線と違った新たな色味が増えるんじゃないかと思いました。
柚香:鬼って一言で言っても怖い鬼から、優しい鬼、もの悲しい鬼といると思うんですけど、紅子の葛藤や苦しみなど抱えているものにすごく私は心惹かれました。彼女がこれまで一体どういう人生、人生って言っていいか分からないですけど(笑)、どんな生涯を歩んできたのか、いろんな想像を刺激されるお役です。自分がどうやって紅子を作っていくのか、すごくやる気に満ちて楽しみですし、気合十分です。
早乙女:僕が演じるのは簡単に言ったら“治安の悪い鬼”(笑)。スラム街にいるようなちょっと育ちの悪いような鬼なんです。鬼というと人から見るとどうしても悪い存在になると思うのですが、今回の物語では、鬼には鬼ならではの苦しみ、悲しみ、怒り、喜びがあるので、そうした葛藤が描かれます。はたして人間が本当に正義なのか、見る視点によって変わってくると思うので、そうした部分をいのうえさんがどういうふうに調理していくのかすごく楽しみですね。
◆早乙女友貴が柚香光に贈る「新感線」稽古場でのアドバイスとは?
——柚香さんにとって、退団後お芝居としては初めての舞台出演。お稽古場の雰囲気はいかがですか?
柚香:初めての顔合わせが本読みだったのですが、やりとりがとても軽快で、題材的にはダークであったりホラー的であったりするんですけど、笑いがあふれていたのが印象的でした。
——新感線といえば、笑いも欠かせない要素になりますが、柚香さんは本番で吹いちゃったりしない自信は…。
柚香:大丈夫です!って言っちゃったら怖いですよ(笑)。新感線はそういう遊び心も印象的なので、ここで大丈夫ですという勇気はないです。紅子はあまり笑える役ではないので、今からお稽古で耐性も鍛えて戦います!(笑)
早乙女:どう笑わせるか考えるのも楽しみですよね(笑)。
柚香:いやですよ!(笑) 絶対何か仕掛けてくるじゃないですか!
——宝塚時代は“やんちゃ”で知られた柚香さんですから、何か仕掛けようといういたずら心が刺激されるのではないでしょうか?
柚香:“やんちゃ”と言われることは多かったですね(笑)。刺激されると思いますが、ふざけられる役ではないので、しっかりと務めます。
——“準劇団員”早乙女さんから、新感線の舞台に初めて臨む柚香さんにここは気をつけたほうがいいというアドバイスはありますか?
早乙女:そうですね……。気をつけることというか、変に作りこまず稽古に入ったほうがいいかなと思います。自分の中でこういう解釈だと役柄について考えることは大事だと思うんですけど、ある程度アバウトにしていったほうがいいかなと。いのうえさんが段取りや外側を固めて役の道を作ってくれますし、先に固めてしまって、バッティングしてなかなか上手くいかないことも見てきたので。いのうえさんに作ってもらったものに後から感情を乗せる。こういう動きだったらこういう感情、と後から上乗せするような感じでいくといいと思います。稽古に入るとセリフもだいぶ変わりますし、シーンも増えますしね。
柚香:(目を輝かせて)そうなんですね!
早乙女:いのうえさんを信じてやれば不安になる部分はないと思います。
——早乙女さんが、初めて新感線に参加された時に驚かれた点はどんなことでしょうか?
早乙女:新感線の環境は、役者にとってありがたい環境なんです。あんなに稽古の段階からスタッフさんがいることってないですし。いのうえさんが「こういう小道具を作ってほしい」と、スタッフさんも初めて聞くようなことが稽古場で起こったりするんですよ。すると、役者の休憩場所の隣に小道具部屋があって、その場で製作が始まり、いのうえさんに言われた10分後には出来上がっている(笑)。長いこと舞台をやってきましたけど、役者にとってこんなにありがたい環境はないなって思います。17歳で初めて出させてもらってそれがまずびっくりでしたね。ちゃんといいものを作ろうという大人の本気というか、遊びを本気でやってる感じを初めて体験して、なんて素晴らしいんだと思いました。
柚香:本読みの時からいろんなお話をしてくださって、すごく勉強になります。同じ鬼一族として、引き続きいろんな教えをいただきたいです。
◆お互いの印象は一致「かっこいい!」
——今回初めてのご共演。お互いの印象はいかがでしたでしょうか?
柚香:私はもちろん舞台を拝見したことがあったので、かっこいい方だなと思ってみていました。
早乙女:僕もとにかくかっこいいなと。男役をずっとやられていたから、その辺にいる俳優よりも全然男らしいというか。それは天海(祐希)さんと共演した時も思ったんですけど、宝塚出身の方ってすべての所作がきれいだし、男から見ても勉強させてもらうという感じになるんですよね。
——今回柚香さんは、人妻役であり、娘を持つ母親役と初めての挑戦が詰まってますね。
柚香:新しいお芝居を打ち出していくことがとても楽しみです。自分のいろんな面をお見せする場面があるので、その時にどう新しい自分をお届けできるか、こだわって作っていきたいと思います。
早乙女:柚香さんファンの皆さんは、今回いろんな柚香さんが見られると思うので最高だと思いますよ。
柚香:早乙女さんとの掛け合いも楽しみにしていてください!
——柚香さんは、退団後『TABLEAU』『RUNWAY』『マチュー・ガニオ スペシャル・ガラ ニューイヤーコンサート』と続き、本作後も『BURN THE FLOOR(バーン・ザ・フロア)-COLOR MY HEART-』が控えるなど、踊りまくりの印象があります。本作の紅子も“舞の名手”なんですよね。
柚香:そうなんです! どんなタイプの踊りになるのか、そこも楽しみですね。
——退団後、お芝居としては初めての舞台出演への思いはいかがですか?
柚香:台本をいただいて、そこに書かれているト書き、時代背景、役の設定、それに共演者の皆さんとの絡みなどを通して役や作品を作り上げていくことがまた始まるんだ!とワクワクしています。
——退団1周年を舞台で迎えられるのもうれしいですね。
柚香:5月26日なので、大阪の公演中ですね。ファンの皆さんと一緒に迎えられるのも楽しみです。
——早乙女さんは、本公演中に29歳の誕生日を迎えられます。
早乙女:休演日ですね(笑)。20代最後にまさか鬼の役をやるとは思っていませんでした。また人ならざるものなんだって(笑)。でも鬼役なんてめったにやれることではないので、楽しみです。ビジュアルも楽しみにしていてください。
柚香:楽しみですよねー(笑)。
早乙女:チラシビジュアルも公開されていますが、あれは嘘です(笑)。あれを信用しちゃダメです。全く別人になるので、僕も楽しみです。
——では最後に作品を楽しみにされているファンのみなさんへメッセージをお願いします。
柚香:劇団☆新感線45周年という素晴らしい年に出演できること、本当にありがたく思っています。新感線を毎回ご覧になられている皆様にも、私をずっと応援してくださっている皆様にも、今回新しいご縁で出会った皆様にも、どんな方々にもこの舞台に出会えてよかったと思っていただけるような、そういう作品にできるよう一丸となって作っていきたいと思っています。劇場に足を運んでいただけたらうれしいです。
早乙女:とにかく新感線は派手で観ている人もいい意味で疲れるくらい盛りだくさんですが、今回はいつもとはまた違った新感線色をお届けできると思うので僕たち自身も楽しみです。久しぶりのダークな世界観の中に、新感線の魅力の1つでもあるお笑いも含まれているので、僕たちも一生懸命力を合わせて頑張りたいと思いますので、楽しみにしていてください。
(取材・文:田中ハルマ 写真:高野広美)
2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演 いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』は大阪公演が5月13日〜6月1日までSkyシアターMBSにて上演。東京公演は6月24日〜7月17日までシアターHにて上演。