政府は「集団的自衛権はすでに行使されている」を隠し続け中

5月11日(日)16時0分 NEWSポストセブン

 北朝鮮が韓国を攻撃し、米国が韓国を助ける状況になったとき、日本はどうするか。この問題に関連して、産経新聞が3月18日(電子版)に興味深いニュースを報じた。日本政府関係者が韓国との協議で「日本は米国との事前協議で米軍が国内の基地を使うのを認めないかもしれない」と発言したというのだ。


 言うまでもなく、日韓関係は従軍慰安婦問題で冷えきっている。国民感情を考えると、韓国を無条件で支援するとは限らないぞ。そう聞いて、韓国側は「凍り付き言葉を失った」と報じている。この話は日本の集団的自衛権問題を考えるうえでも核心部分を突いている。


 まず前提になる事実関係をチェックしよう。日米安保条約はもちろん日本を守るのが使命だが、同時に「極東の平和と安全」に寄与する役割も担っている。つまり朝鮮半島有事への備えだ。


 1960年に条約が調印されたとき、日米両国は「米国が韓国防衛のために日本の基地を自由に使える」という密約を結んでいた。この密約は民主党政権時代に大問題になったが、外務省の調査では1969年に当時の佐藤栄作首相が日本は米軍の基地使用を「前向きに」検討する方針を表明したので事実上、失効したと結論付けている。つまり基地使用を容認した。


 以来、自民党政権はもちろん民主党政権でも米軍の基地使用を見直した形跡はない。それどころか、1999年には周辺事態法を作って有事には後方支援をする枠組みを決めている。だから、冒頭の発言が本当になったら大変だ。


 そんなことは百も承知のはずだから、発言者の意図は「韓国が反日姿勢を続けるなら、ひどいことになるぞ!」と一発かましたのだろう。


 それはともかく、ここで注目したいのは、1960年当時から日本は韓国防衛に出撃する米軍への地提供を事実上、約束していた事実である。それこそ、集団的自衛権の行使容認ではないか。


 北朝鮮が韓国だけでなく日本も攻撃する意図が明白なら、個別的自衛権の発動でもOKだろう。だが韓国の救援に出動する米軍が日本の基地で武器弾薬を補給するのを認めるのは、集団的自衛権の行使でないと説明できない。仲間を助ける行為だからだ。


 当時の岸信介首相は国会で「他国に基地を貸して自国のそれと協同して自国を守るようなことは従来、集団的自衛権として解釈されており、日本として持っている」と述べている。当時の内閣法制局長官も同じ国会答弁で、米軍への基地提供を集団的自衛権という言葉で理解すれば「(それを)日本の憲法は否定していない」と明快だ。


 つまり、日本を守るために米軍に基地を提供した段階で集団的自衛権は容認されていた。いまはそこから事態が進んで、日本そのものではなく韓国を救援する米国の支援が眼目だ。そうであれば、ますます「集団的」と考えられる。


 周辺事態法以来、国会では与野党が「外国の武力行使と一体化していれば集団的自衛権の行使」という前提で議論を続けてきた。マスコミもそれに乗ってきた。だが、そんな話は虚構ではないか。


 間違いの始まりは「密約」からだ。韓国防衛には基地を使わないかのように国民を欺いてきたから、その後の政権は集団的の「しゅ」の字も言えなくなってしまった。いい加減でタブーを解禁し「日本の平和は極東の平和から」という安全保障の基本に立ち返った議論を望む。


文■長谷川幸洋:東京新聞・中日新聞論説副主幹。1953年生まれ。ジョンズ・ホプキンス大学大学院卒。政府の規制改革会議委員。近著に『2020年新聞は生き残れるか』(講談社)。


※週刊ポスト2014年5月23日号

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