故渡辺淳一氏 新米編集者に高級ワインふるまい男の遊び伝授

5月11日(日)7時0分 NEWSポストセブン

 初期の『阿寒に果つ』から『失楽園』『愛の流刑地』、そして『愛ふたたび』に至るまで男女の性愛の世界を描き続けた作家・渡辺淳一氏が、4月30日、80年の生涯を閉じた。


「命の根源はエロス」──。その探究心は、76歳で前立腺がんを患ってからも、衰えることはなかったという。生前、本誌インタビューに語っていた渡辺流【欲情の作法】を改めて振り返る。


 渡辺氏は、4月30日午後11時42分、都内の自宅で静かに息を引き取った。告別式は5月5日、五反田の桐ヶ谷斎場で近親者だけで営まれ、近日中に、お別れの会が開かれる予定だという。出版関係者がいう。


「今年に入って自宅療養を続けていたが、それでも創作意欲はまったく衰えなかった。“この年齢になって見えてきたものがある”と、次回作の構想も語っていた。亡くなる直前にも『今度は一緒にワインを飲もう』と声をかけてもらったのに残念です」


 北海道生まれの渡辺氏は札幌医科大を卒業後、講師として同大に勤務しながら小説を書き、1965年に『死化粧』で新潮同人雑誌賞を受賞。1969年に専業作家を目指して上京し、1970年『光と影』で直木賞を受賞した。1980年代からは男女の激しい性愛の世界を描き、次々にベストセラーを世に送りだした。


 闘病中ながら、昨年2月、23歳で直木賞作家となった朝井リョウ氏の授賞式に出席し、「品よく落ち着いて知的インテリになったら消える。即物的な欲望をぎらつかせて」と独特のアドバイスを送った。常々、「作家の原点は欲望」と語る渡辺氏らしい言葉だった。


 振り返ると、渡辺氏は本誌にも、人間の本質、性愛の本質を突いた珠玉の言葉をいくつも残していた。


<男も精子と同じで、そもそも振られる生き物で、振られてこそ男なんです。なのに、振られて傷つくのが嫌だというので、恋愛を避けている男が多い。自尊心やプライドが強いんだね。そういうものは恋愛の邪魔になるから、捨てた方がいい>(以下、<>内は本誌インタビューからの抜粋)


 2009年、作家の高樹のぶ子氏との対談で、こう語っていた渡辺氏。当時はちょうど、「草食系男子」という言葉が話題になり始めた頃。


 対談を担当した20代前半の若手男性編集者の顔をのぞき込み、渡辺氏は「君はもしかして、草食系男子じゃなかろうね?」と問うた。


 編集者が「実は恋愛は苦手で……」と答えると、渡辺氏は「だめだよ、君」といいながら、若かりし頃、北海道のダンスホールで遊んでいた時のエピソードを笑顔で明かした。


<ある時、まず好みの女性を誘ったら『疲れていますので』と、体よく断わられたので、となりの女性に声を掛けたら、また『疲れています』。そうやって4人連続断わられ、5人目を誘ったら、頬を引っぱたかれた>


 そして、恋愛に消極的な世の男性たちにこう檄を飛ばした。


 よく『二兎を追うものは一兎をも得ず』というけれど、恋愛において男は二兎どころか三兎も四兎も追った方がいい>


 恋愛に向かうエネルギーの強さとすがすがしさを語った渡辺氏は、その年端の行かぬ編集者に声をかけ、後日、銀座の高級クラブに連れて行き、“男の遊び方”を見せてくれた。


 1本10万円以上する仏5大シャトーの赤ワインをポンと開け、新米編集者にも惜しげなくふるまう。その洒脱な雰囲気に誘われてか、渡辺氏のテーブルには女性がこぞって集まり、店内でもいっそう華やかな席となっていた。


 女性への性愛に誰よりも正直で、そしてすべての人間に対して温かい大きな愛を持っている人だった。


※週刊ポスト2014年5月23日号

NEWSポストセブン

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