石坂浩二、浅丘ルリ子、加賀まりこ 今だから共演も楽しめる

5月11日(木)7時0分 NEWSポストセブン

ドラマ『やすらぎの郷』で主演を務める石坂浩二

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 俳優・石坂浩二(75)は、4月に放送が始まった倉本聰脚本のドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系/毎週月〜金曜、昼12時半より放送)で主演を務めている。テレビ朝日がこの春より新設した、高齢者世代へ向けた昼の帯ドラマ「シルバータイムドラマ枠」の船出を飾る作品だ。


 石坂が演じるのは一世を風靡したシナリオライター、菊村栄。ドラマではテレビ業界で活躍した人のみが入居を許される特別な老人ホーム「やすらぎの郷 La Strada(ラ ストラーダ)」でくり広げられる人間喜劇がユーモラスに描かれる。


 放送期間は半年間。石坂の連ドラ主演は『水戸黄門』(2002年、TBS系)以来、約15年ぶりとなる。2クールも続く昼ドラの主演は、長いキャリアの中でも経験がない。75歳にしてなお、役者としての“初”に挑み続けている。


 ドラマは浅丘ルリ子八千草薫、有馬稲子、加賀まりこ五月みどり、野際陽子など往年の名女優がこぞって出演することでも大きな話題となっている。とりわけ注目を集めるのは、石坂と元妻・浅丘との31年ぶりとなる顔合わせ。今作が離婚後“初”共演となる。


 ふたりは1971年にドラマ『2丁目3番地』での共演をきっかけに恋に落ち、結ばれた。ドラマで脚本を手がけた倉本は、いわば恋のキューピッド役。『やすらぎの郷』の序盤、倉本はそんなふたりが初めて顔を合わせるシーンに、こんな展開を用意していた。


《「先生ーッ!」といきなり栄(石坂)にハグする白川冴子(浅丘)。二人、結構長時間抱き合う。じろりと白い目で見る水谷マヤ(加賀)。冴子、やっと離れて大納言(山本圭)に、「そっちにつめて。私ここに坐る」。マヤもマロ(ミッキー・カーチス)に「あなたもつめて。私ここに坐る」》


 と、栄を取り合うように冴子とマヤがカウンターで両隣に陣取るのだ。加賀とは若かりし頃、恋人関係だった時代もある。ゆえにこの3ショットは、往年のファンにとってたまらない光景となった。このシーンについて石坂は「台本の通りに演じただけです」とあっさり振り返ったが、浅丘、加賀との共演については懐かしさを込めて、こう語った。


「僕らは世代的には1こずつぐらい違うのかな。いまの時代もそうですけど、女優さんのほうが出たら早いんですよね。『うわっ!』って勢いが。男の子って割と、もにゃもにゃしているところがあるんです。演技的なものがついてこない。芝居は自転車みたいなものでコツが言えないところがあるんですよ、人には。そのひとつのコツが分かるとスッといく」


 男性のほうが、その時期が訪れるのが遅い気がするという。聞けば随分と長いこと、その時期を待ったようだ。


「自分も彼女たちと同じような芝居がややできるようになった、と思えるようになってきたのは50歳ぐらい。その時は非常に嬉しかったですよねぇ。


 加賀さんと浅丘さんとはお芝居をした回数が非常に多いので、う〜ん、どっちもね、僕は当時からすごく啓発されていたところがあったんです。そこから四半世紀経って、今回は負けないようにと、思っていますよ」


 たしかにある部分において、女性のほうが男性よりも柔軟性や適応力に長けて、肝が据わっている。制作発表記者会見の席で、浅丘は前述のシーンについて、


「菊村栄と白川冴子は20年ぶりに会ったわけですが、実際に私自身と石坂さんは、16年ぶりにお会いしました。その両方の想いを込めて長いこと抱き合わせていただきました(笑い)。楽しゅうございました。そしたらマヤがジロ〜っと私たちのことをみておりました。ふふ、もちろん芝居で、ですよ」


 と、ユーモアたっぷりに語った。隣に座っていた石坂はやや居心地が悪そうな面持ちだったが、会場は浅丘のスピーチに大いに沸いた。人生を共にした過去も恋心も、からっと明るく振り返れる年頃になった──。各々が時間を積み重ねたいまだからこそ、共演を心から楽しめているのだろう。


 82歳の倉本が同世代へ贈る作品だけあり、ドラマでは老いや死についても、正面から向き合っている。


「人が死を迎えることはどういうことかという根底のテーマへ向けて、それに逆らうように、どこに残っていたのかわからない栄の焼けぼっくいの恋心がポッポポッポ点いて、『人生の最後を飾るいい経験だった』と落ち着いていく。そうしたひとつの交響曲のような大きな流れがあることに、最近気付きました」


 人生を交響曲とするならば、これまでのすべての出会いが幾重にも重なって、今日という音を奏でている。遠回しだが、それが再会についての石坂流の答えなのかもしれない。


「僕は『ろうがんず』という老眼者限定のプラモデルサークルをやっていますが、専門用語でも昔のキットの話でも、パッとみんなと通じ合う。それが実に痛快でね。好きなことを同じくする人たちが集まると、そこが“やすらぎの郷”になるんですね。


 中高と男子校で、同級生の友人はやすらぎの郷を“こもれびの郷”と言い間違えるようなボケかけた連中なんですが(笑い)、その子供や孫が放送を観てくれて、『観たことがないけど、魅力的な女優さんたちだ』と話してるって。いまのままの姿を観て、素敵だって。あぁ、そうなんだって嬉しくなる」


 共に歩み続けてきた女優たちへの讃辞を、自分のことのように喜ぶ。


 劇中の施設の名称「La Strada」は、イタリア語で「道」を意味する。好きなことを一途にやり続けることがやすらぎであり、道に通じる。人生の第4楽章を謳歌する石坂は、切り拓いた一本道を足取り軽やかに歩んでいる。


●いしざか・こうじ/1941年6月20日、東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業。大学在学中の1962年にドラマ『七人の刑事』でデビュー。大学卒業後、劇団四季に入団。1976年に『犬神家の一族』に金田一耕助役で主演、市川崑監督でシリーズ化され空前の大ヒット。市川崑監督作品には他にも、『細雪』『ビルマの竪琴』など多数出演。俳優業のほか、司会者、クイズ解答者、作家などマルチに活躍。多趣味なことでも知られる。2009年にNHK放送文化賞受賞。『開運!なんでも鑑定団 極上!お宝サロン』(BSジャパン)、ドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)では主演を務めている。


取材・文■渡部美也/撮影■中庭愉生


※週刊ポスト2017年5月19日号

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