東京都20億円クルーザー建造より海保・海自船活用すべき

5月11日(木)7時0分 NEWSポストセブン

都が発注したものと同タイプのクルーザー(アムジット-ベネッティ社のHPより)

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 かつて、海外視察の際に豪華クルーザーをチャーターして「都税の無駄遣い」と批判された都知事がいた。海外視察でファーストクラスやスイートルームを使用した都知事も、やはり同様の批判を浴びた。


 そうした「知事の浪費癖」との訣別を都民に約束したのが小池百合子・都知事だ。だが、彼女もまた先達たちと同じ「病」に罹ってしまったのか。東京五輪のスローガンに「もったいない」を掲げた都知事は、あろうことか五輪開催にかこつけて「超高額の無駄な買い物」をしていた。


 小池都知事が、19億6235万8256円もの税金をかけてVIP接待用の大型外洋クルーザーを建造していることはほとんど知られていなかった。


 受注したのはイタリアのアジムット‐ベネッティ社。欧米のセレブや中東の王族などのクルーザーを多く手がける世界トップクラスの造船会社だ。


 図面によると、クルーザーは全長35メートル(約115フィート)でデッキは3層。1階(上甲板)は22人掛けの大テーブルが置かれた同時通訳ブース付きの会議室(窓際にも座席31席)、エレベーターで2階に上がるとパントリー(小さなキッチン)と10人掛けのダイニング、広い応接室があり、3階は展望デッキとなっている。


 東京都港湾局は視察船「新東京丸(195トン。定員60人)」を保有しているが、老朽化しているため今回の建造が持ち上がったわけだが、そもそも、東京都に「視察船」という名のクルーザーは必要なのか。


 就役中の新東京丸は平日2回、竹芝桟橋から1時間半かけて東京港内を周回している都営の“クルージング船”だ。都民でなくても無料で乗船できるが(要予約)、土日は「民間遊覧船の経営に影響する」(港湾局)という理由で運休する。そのうえ、改修費が毎年約5000万円かかっている。


 都政を監視する「行革110番」の主宰者で、元都議の後藤雄一氏は「代替船は無用」と指摘する。


「東京都が視察船を持つ目的がはっきりしないし、なくても困ることはない。五輪を口実にすれば建造予算が通ると思っている税金の無駄遣いの典型です。小池知事は豊洲市場や五輪施設では細かい部分までコストや必要性を精査して都民に開示しているのに、この新造船にひとことも触れないのは不可解です。仮に、どうしても五輪での接遇に必要というなら、その期間だけ民間の遊覧船をチャーターすれば済むはずです」


 もっとコストがかからない方法もある。実は海上保安庁は、上甲板に30人の会議室、2階に控え室付きの貴賓室を設けた迎賓船「まつなみ」(全長38メートル)を保有し、普段は東京湾で巡視艇として使われている。海上自衛隊には130人の船上パーティ設備と同時通訳設備付きの会議室を持つ、さらに大型の迎賓艦「はしだて」(特務艇。全長62メートル)があり、横須賀管区に配備されて、内外の要人を招いた式典などに使われている。


 五輪でVIPの海上視察が必要なら、海保や海自の迎賓船を利用する方が治安の面からも優れていることはいうまでもない。


 しかし、都議会では与野党ともに新船建造の無駄を指摘するどころか逆に大賛成。経済・港湾委員会の議事録を見ると、自民党都議が「新しい視察船は五輪のレガシーの一つとして後世に残すことができればと考えております」(2015年6月17日)と言えば、民進党都議も「浮かんでいる姿が東京の夜景にマッチして、それだけを写真に撮りたいと思えるような船をつくるべきだと思います」(2016年3月15日)と発言。


 無駄遣いを指摘するような声はなく、クルーザー発注が議会報告された今年3月議会にも、民進党会派から「人の目をひきつけるようなデザインを検討すること」という内容の意見書が提出された。


 小池知事も港湾局も都議たちも内心、豪華クルーザーのオーナー気分で舞い上がっているようなのだ。


※週刊ポスト2017年5月19日号

NEWSポストセブン

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