最低な母親でもかけがえのない大切な人と思うべき? 聖母か鬼女か、極端な母親描写/『母になる』第五話レビュー

5月12日(金)1時0分 messy

『母になる』公式webサイトより

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日テレ水10枠『母になる』。視聴率は、第一話10.6%、第二話10.7%と、ここまではまずまずといったところだったのですが、その後は第三話9.3%、第四話は連休の影響もあったのか7.9%、今回第五話は8.3%と1ケタ台が続いています。ネットニュースやTwitterを見る限り、実際に視聴した人の反応はおおむね「泣ける」「考えさせられる」と上々なんですけどね。が、私個人は、泣けないし、ちょっとしらけています。

第四話では、結衣(沢尻エリカ)が9年ぶりに一緒に暮らし始めた13歳の息子・広(道枝駿佑)に「あなたのことをお母さんと思えません」「施設に戻りたい」と言われてしまいました。母子関係の危機です。悩んだ末、結衣は、広を一旦施設に戻すことを決め、児童相談所の木野(中島裕翔)が広を迎えに来ましたが、広は途中でいなくなり施設のナウ先輩こと今偉(ナウイ/望月歩)と待ち合わせ。一方、広を7年間育てていた麻子(小池栄子)は職ナシ住まいナシで路頭に迷っているような状況なのですが、そのうち結衣たち柏崎家と関わりが生じそうな気配を臭わせていました。

【試写レポート】テレビドラマにおける母親という存在の描かれ方
【第一話】沢尻エリカ演じるベタベタ清純派の良妻賢母が宿した小さなリアリティ
【第二話】3歳まで育てた産みの母は「何も知らないおばさん」…育ての母の強烈な手紙
【第三話】育ての母の態度急変!親たちに振り回される不憫な息子
【第四話】一人で苦悩する母親、父である男と一緒に親になることはできないの?

産みの親の大切さをアピる回

緊迫感を持って迎えた第五話ですが、すぐに広は今偉とネットカフェにいることがわかり、いつの間にやらスマホを所持している(ちょっと前までガラケーでした)結衣さんの元にも、木野から広が見つかったとの連絡が入るのですが、結衣は動揺を隠せません。施設に戻りたいと言っていたのに、施設に帰らず逃走したなんて……広は本心では、施設に帰りたいのではなく結衣と暮らすのに耐え切れなかったのかもしれない? 広はひょっとしたら麻子の元に行ったのでは? 麻子が指示したり匿ったりしているのでは? という不安も抱いていました。対して、結衣から広が見つかったと連絡を受けた元夫・陽一(藤木直人)は「信じて待つしかない」と落ち着いています。「普通の親はこういう時……」と言いよどむ結衣に対しても「普通じゃないって」「しっかりしろよ」と言い聞かせたり。

前回よりも元夫婦の距離は縮まっているし、信頼関係も回復傾向にあります。だんだん頼れる父、頼れる夫になっていくのかしら。ちなみにこの時の結衣のファッションは、黄色のカーディガン×ベージュのパンツ。すっかりダサナチュラルに落ち着いたって感じですね、はい。そんな結衣が、築年数がかなり経過しているであろう柏崎オート(元夫・陽一の実家)の居間で正座してアイロンをかけながら電話する光景は、なんだか昭和(あるいは90年代)……。ま、黒電話はなくてスマホですけど。

結衣は、麻子に対する怒りの感情を陽一に吐露します。

「以前会った時(第三話)は、広が見つかったことの喜びが強くて、気持ちを抑えることができたけど、もしまた会ようなことになったら私何するかわからない。許せない」

これまでの出来事を冷静に振り返ったことで、あまりの理不尽にはらわたが煮えくり返り、理性が失われそうってことでしょう。そうですよね〜、9年前広を見つけた麻子が警察に届けていれば、広から「お母さんと思えません」なんて言われることもなかったのに、やるせない思いでいっぱいの結衣です。

広はといいますと、ネットカフェにて今偉とグーグルマップのストリートビューにかじりつき、今偉の母親を探していました。母親の内縁の夫との関係が上手くいかず7歳から施設で暮らす今偉。母親は滅多に面会に来ないまま現住所不明・音信不通となり、そのことをクールに受け止めていたそうですが、最近になって母親らしき人がグーグルに映り込んでいたという情報が入り、母親探しを決行したのです。手がかりは“木更津の駐車場”。何とも骨が折れる話ですが、見事、今偉の母親が映っている場所を発見! 広、今偉、そして木野は、その場所に行ってみることに。グーグルマップに映っていたからといって、その場所に住んでいるとは限らないし(人生でただ一度立ち寄った瞬間を撮影された可能性だってある)、引っ越した後かもしれないわけで、もし会えたら奇跡。とはいえ、児童相談所の木野が結衣に今偉の個人情報を話すのってありえないですよ……。

今偉が母親を探そうと思ったのは、生みの母が突然現れて戸惑っている広を助けるためでした。「俺の母親は最低の母親」と諦観する今偉は、その一方で「でも、自分を生んでくれた母親ってのは世界にたったひとりしかいない。たとえどんな母親だって、かけがえのない存在だっていうこと、広にわからせたいんだ」と考えているそうで……。そんな今偉先輩は引率者の木野に、もし母親と会えても余計なことをせず黙って見ていてほしいと頼むのです。なぜなら「大人が介入すると整理整頓されちゃうんで。その場を取り繕ってきれいに収めようとするから」。これには大いに頷かされてしまいました。確かに大人はいつもトラブルを避けたいし、きれいにまとめたがりますが、そのために当事者の本音をおざなりにするところがありますよね。トラブルの責任を負いたくないんですよ。

最低な母親でもかけがえのない存在???

予想通りといいますか、みごと奇跡が起きて、彼らは今偉の母親(伊藤ゆみ)と会えてしまいました。母親は以前と変わらず最低な態度のままで、会いに来た息子を露骨に拒否し、彼らが用意してきた花束やケーキも払いのけます。広が「それでも母親かよ!」と投げかけるも、「そういう言い方一番腹が立つんだよね。それでも母親かよって」と食って掛かる今偉の母親は、子の親という役割を放棄し続けているわけです。

「産んだからって誰もが素晴らしい母親になると思ったら大間違い。あたしみたいに最低な人間だっているの。子どもを手放さなきゃ生きづらくって耐えられなくって、どうしようもない人間だっているの。母親なら立派で当然? 優しくて当然? 子どもを思って当然? 勝手に母親像押し付けないでくれる?」

それもそうで、だから母親が一人で背負い込むのではなくサポートを受けたり周囲と協力したりして養育していければ良いのではと思いますが、「手放さなきゃ耐えられない」って相当ですから、彼女自身にとっては「児童養護施設に預ける」ことが最善の選択だと思ったのでしょう。確かにネグレクトして不潔でひもじい思いをさせたり暴力を浴びせるよりは、そのほうが良かったかもしれません。ただ、息子の目の前でそれを言っちゃあ……。



それでも今偉は、俺を産んでくれたかけがえのない母親なんだと広に訴え、涙交じりに語ります。この先結婚などによって家族はいくらでも作れても、産んでくれた母親は別、世界でたったひとりしかいない、たとえどんな母親でも自分を産んでくれた、かけがえのない大切なたったひとりの母親なんだ、と……。ナウ先輩、どうしてそんなふうに母親への思慕を抱き続けていられるんでしょうね。世界でたったひとりしかいないから何なんだ、という気もしますが(後述)、先輩の演説に心打たれた広は「俺、帰る」と宣言し、結衣に「帰るぜ!」とLINE、小さな花束をプレゼントとして携えて柏崎家へ帰還しました。前回の「お母さんとは思えません」「施設に戻りたい」発言から一気にここまで来たか! 結衣、陽一、広は夕食を囲み家族3人で団らん、やっぱり昭和、昭和。

ところで、先の今偉のエピソードに関しては、正直引っかかるものがありました。確かに今偉の母親はまさに最低だったし、高校生の今偉がめちゃめちゃ傷つくのも当然です。ただ母親の叫びにあった「産んだからって誰もが素晴らしい母親になると思ったら大間違い」「母親なら立派で当然? 優しくて当然?」「勝手に母親像押し付けないでくれる?」は、いわゆる“子どもを育てられない非常識な親”だけが思っていることじゃないといいますか、似たような憤りを抱えながら子育てしている人は大勢いるのではないでしょうか。今回のエピソードだと、母親は「最低の母親」で、子どもの今偉は「そんな母親でも大切に想うきれいな心を持った子ども」と二つの面に終始していて、そうなると視聴者に「こんな母親はイヤだね、悪いね」と「どんな母親であれ産んでくれた以上は大切に想うべき」という価値観を刷り込んでしまわないかと、イデオロギーの押し付けを懸念してしまいます。母親が最低だろうが最高だろうが、そんな母親(あるいは家族)をどう捉えるかは、個々人の自由でよいのではないでしょうか?

迫りくる麻子

広が戻り、陽一との距離も縮まった結衣は、正式な再婚を決意します。頭の中は常に広のことでいっぱいの結衣ですが、「陽ちゃんと一緒に暮らしたいと思ったのは子どものためじゃない、私のためなの」「あなたに一緒にいてほしかったから」「あなたじゃなきゃ、だめなの私」と、再婚のプロポーズ。陽一もノリノリ。ですが、これらはすべてつかの間の平穏でした。嵐はすぐそこまでやってきています。

広が一時行方不明になったことは、木野の連絡で麻子の耳にも届いていました(広が麻子の元を尋ねていないか確認するために、木野は連絡したのです)。ワザと拒絶する振る舞いをしたものの、広への愛情も未練も残っている麻子は心配を募らせますが、詳細を教えてもらうことはかないません。もはや広と関わる権利はないし、もう二度と会うこともない……はずでしたが、ご都合主義、いやびっくりするような偶然の重なりによって麻子と柏崎家は再び引き寄せられていくのです。

前回、麻子は職を求めて刑務所時代(広を施設に預けて2年間服役)に一緒だった井下さなえの元を訪ねるも邪険に扱われましたが、その際に井下の知人である柏崎オートの事務員・琴音(高橋メアリージュン)と出会って意気投合→琴音を介して柏崎オートの経営者で陽一の母・里恵(風吹ジュン)とも出会い、経理の仕事をしないかと誘われます。里恵が広の祖母だと気づいた際には吐き気をもよおすほど動揺した麻子でしたが、一瞬で何か企みを思いついたのか、「柏崎オートでぜひ雇ってください」と願い出ました。どうするつもりなんでしょうこの人。ちなみに里恵の住むマンションは元々、結衣・陽一・広の3人が住んでいた家。そこに麻子が出入りしると結衣が知ったら……背筋が凍りますわ。里恵に語ったところによると、麻子は母子家庭に育ち、母親は亡くなって天涯孤独だそうですが、結衣も両親を亡くして天涯孤独、琴音ちゃんも天涯孤独、このドラマの女たちは天涯孤独だなぁ。

ラスト1分のところで再び柏崎オートに姿を見せた麻子は、「こちらで雇っていただくことになりました、門倉麻子です」と挨拶をし、リアル・ホラーな展開に激昂した結衣が「何しに来たの!」と憤慨して麻子に食って掛かります。さらにそこへ、血相を抱えた琴音が駆けつけて「待って!その人人殺し!」と叫んだところで、第五話は終了しました。下校中の広は、ジャーナリストに声をかけられ麻子について尋ねられているし、次回第六話ではいよいよ、麻子の過去が明らかになるようですが「人殺し」で2年の服役で済むものでしょうか。

結衣にとって麻子は、自分たちの人生を変えた忌まわしき存在ともいえますが、予告を見ると、麻子は広を守るために刑務所に入った……などと言われていて、そういった事実を知ることで結衣はますます苦悩を深めそうな予感がいたします。また、良い母になれないと悩む女性・莉沙子(板谷由夏)は、ママ友のグループメールから外される“いじめ”に遭っていて、めんどくせぇ、んなもんやらせとけっでは済まされない模様だし、木野の事情もそのうち明かされるだろうし、まだまだあちこちに問題山積状態の『母になる』です。んん??と引っかかる違和感は端々にあるのですが、それでも結末が予想のつかないオリジナルドラマには興奮しますよ!

【試写レポート】テレビドラマにおける母親という存在の描かれ方
【第一話】沢尻エリカ演じるベタベタ清純派の良妻賢母が宿した小さなリアリティ
【第二話】3歳まで育てた産みの母は「何も知らないおばさん」…育ての母の強烈な手紙
【第三話】育ての母の態度急変!親たちに振り回される不憫な息子
【第四話】一人で苦悩する母親、父である男と一緒に親になることはできないの?

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