ありがとう『たまゆら』、フォーエバー『たまゆら』……6年間の展開に幕を閉じたアニメ『たまゆら』シリーズ完結記念・田坂秀将PDインタビュー!

5月12日(木)18時0分 おたぽる

(C)2015佐藤順一・TYA / たまゆら~卒業写真~製作委員会

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 2010年にリリースされたOVA『たまゆら』を皮切りに、TVシリーズ『たまゆら 〜hitotose〜』(以下、『hitotose』/11年)、『たまゆら 〜もあぐれっしぶ〜』(以下、『もあぐれっしぶ』/13年)、そして全4部からなる完結編『たまゆら〜卒業写真〜』と、約6年間もファンに愛され、制作されてきた『たまゆら』シリーズ。

 広島県・竹原市の穏やかな風景のもと、カメラが好きな女子高生・沢渡楓と、彼女を取り巻く家族や友人たちと繰り広げられたストーリーに癒されたり、涙させられたファンも多いことだろう。その『たまゆら』も、4月2日から上映された『たまゆら 〜卒業写真〜 第4部 朝−あした−』を以って、ついに完結を迎えてしまった……。

 最終章の上映も終了し、Blu-ray&DVDの一般発売も本日5月12日より開始。いよいよ『たまゆら』が全ての展開を終えようとする今、この6年間を田坂秀将プロデューサーに振り返ってもらった。


■「最後の『行って来ます』を見れただけでも、ここまでやって良かったなと」

—— 『たまゆら〜卒業写真〜』の最終第4部『朝−あした−』は、上映開始が1カ月順延されたりもしましたが、ともあれ無事に上映が終了しました。まずは完走された感想からお聞きしたいのですが。

田坂秀将PD(以下、「田坂」) アニメの制作は、どの現場でも大変だなということを改めて感じました。6年間続いたシリーズの完結編です。関わっている人間も思い入れが強くなっていますし、もう次がないのでどうしても妥協できない。もちろん今までも思い入れ強く、妥協せずにやってきたんですが、それでもそういったことの一つ一つが積み重なった中で、時間がかかってしまいました。第3部ではBlu-ray&DVDの発売が遅れ、第4部では上映そのものが遅れ、皆さんにご迷惑をおかけしてしまったんですが、上映を伸ばさせてもらった分、満足できる出来になったと思っています。

—— その第4部を最初に鑑賞されたときはいかがでしたか?

田坂 まず、画が動いた時点で感無量でした。特に最後の楓が「行って来ます」を言うシーンでは、あの表情を見ることができただけでもここまでやってきて良かったなと感じましたね。

—— 第3部が「続きはどうなるんだろう」と、気になる引きでしたから、より第4章のエンディングは対照的で良かったなと感じました。

田坂ありがとうございます。『たまゆら』は基本1話完結で続けてきていて、ああいう終わり方はあの第3部が初めてだったんです。でも第3部は、やはりラスト前ですから、ラストに向けるエンディングにしたいなと考えたんです。本読みのときからは話し合っていたことでしたが、うまくハマってくれました。


■達者なキャストが揃ったのも、計算どおりだった!?

—— 時間を戻して、『たまゆら』の成り立ちから伺います。1話15分前後のエピソードが、1巻に2話ずつ収録されたOVAが2010年11月から12月にかけて2本、リリースされたところから『たまゆら』はスタートしました。

田坂 松竹と佐藤(順一)監督とは、『ARIA』シリーズや、TVアニメ『うみものがたり〜あなたがいてくれたコト〜』(09年)でも一緒にお仕事していて、僕自身も『うみものがたり』からご一緒させてもらっていました。その佐藤監督から「『ARIA』のように、見ていて幸せな気持ちになれる作品を作りたい」というお話がありまして。当初は『24×36の風』という仮タイトルのもと、写真を撮る高校生の女の子の物語を作ろう、とスタートしました。当初は広島・竹原市ではなくて、木更津あたりを舞台に考えていたんですけど、その当時からTV用ではなく、短編を重ねていくスタイルを監督は構想されていました。

—— そうやって始まったOVAから、TVシリーズ『hitotose』制作となったのは何故なんでしょうか?

田坂 OVAの結果がしっかり出たからというのもありましたが、OVAだけでは終わらせない、この作品をしっかり続けていきたいという気持ちが監督を含めた皆の中にありました。お客さんからも求めてもらったので、新しい形で続けていこうとなったんです。

—— 最初からTVシリーズありきではなかったんですね。

田坂 あくまで最初は短編で行こうと。よくも悪くもTVの場合は尺が決まっていて、尺にあわせて制作していくという部分があります。OVAの場合は、尺に自由度があって、ストーリーにあわせて制作できますからね。また、当時、ちょうどTwitterが流行りだした頃でしたから、ファンの反応をダイレクトに感じられるようになっていたのが大きいです。僕らが見たいもの作りたいものと、ファンの皆さんが見たいものがシンクロしていた。その部分を追求しようと考えたとき、次のステップとしてTVのフォーマットがちょうどよかった、という感じでしょうか。

—— ファンの反応というと、頻繁に上映会やイベントを開催していましたよね。

田坂 それは最初から戦略的に考えていた部分です。キャスト陣に竹達(彩奈/沢渡楓役)さん、阿澄(佳奈/塙かおる役)さん、井口(裕香/岡崎のりえ役)さん、儀武(ゆう子/桜田麻音役)さんと、ラジオ巧者、トークが達者な人が揃っていますが、これはある程度、意識して集めた部分もあります。『うみものがたり』のときも阿澄さんや儀武さんとはラジオをご一緒させていただいて、彼女たちの“伝える力”を知っていましたから、ラジオとイベントを一つのベースとして『たまゆら』を伝えていくことができたら、と考えました。佐藤監督もお話が上手な方ですから、イベントなどへ登壇して、思いを伝えていくといただける。我々の思いを伝えるために、ラジオとイベントを中心に据え、そこに竹原市やカメラという特徴をしっかり入れたうえで、展開していければと思っていました。

 加えて弊社は映画会社ですから、劇場でのイベントと、作品と寄り添う形で竹原でのイベントは、特にしっかりやっていこうと考えていました。とにかく一緒に体験してほしいと思っていたんです。例えば竹原市に行けば『たまゆら』の世界を身近に感じられるわけですし、トークイベントに参加してもらえれば、監督やキャストの思いや考えを知ることもできるし、劇場で一緒の時間を過ごすということ自体が楽しいとか、色んなことを感じ取ってもらえるのではないかなと思いましたが、それはある程度成功したと感じています。

—— 儀武さんは『うみものがたり』から、佐藤監督とはいいコンビになっていましたよね(笑)。

田坂 そうですね(笑)。

—— なぜか監督やスタッフ陣が、儀武さんの沖縄のご実家へ行ったなんてエピソードもありましたよね?

田坂 『hitotose』が始まる前ですね、泊めていただいたわけではなく、少し立ち寄っただけですけど(笑)。儀部さんが帰郷されようとしていたことがあって、じゃ一緒に行って、沖縄のアニメイトさんでイベントをやろうとなりまして。その際に儀武さんをご実家までお送りしたあと、寄らせてもらったんです。麻音の実家の柱に彼女の夢を描いた落書きが出ていましたが、あれは実は、儀武さんのご実家の柱にあった落書きからヒントをもらったものだったりします。


■「楓たちの卒業まで、しっかり描こうと」

—— イベント、上映会を重ねながらOVAから『hitotose』、『もあぐれっしぶ』へ繋がっていきます。楓たちが2年生に進級し、かなえ先輩が登場して、「あ、楓たちは作中で年齢を重ねていくんだ」と少し驚いた記憶があります。

田坂 彼女たちの高校1年から3年、そして卒業までを描こうというのは、『hitotoseが始まる前には決めていました。『もあぐれっしぶ』は『hitotose』とは趣きが大分違いますから、どういう感じになっていくのかな、と我々も思っていましたが、(三谷)かなえ先輩とか夏目(望)さんなど、魅力的なキャラクターたちも出てきて良かったなと思います。

—— 夏目さんの存在は大きかったですよね。

田坂 あんなに活躍するキャラになるとは思いませんでした(笑)。

—— 『たまゆら〜卒業写真〜』の第3部でも登場しました。起承転結の「転」にあたるエピソードだったと思いますが、続きが気になる引きといい、夏目さんの活躍だったり、シリーズ全体を通してみても、すごく見どころの多いエピソードだったと思います。

田坂 そういっていただけるとうれしいです。


■竹原のおもてなしに応えたいと思うからこそ頑張れた

—— 竹原市と密な関係を築いたことも『たまゆら』の大きな特徴だったと思います。広島県・竹原市が舞台になったのには、どんな経緯や意図があったんでしょうか?

田坂 こんな街がどこかにあるといいなと、感じてもらえるようなファンタジー感やノスタルジックな雰囲気が欲しい、それには少し近くて遠い場所のほうがいいなと考えたんです。そこで佐藤監督から出ていた「単線が走っていて、海が近くてきれいで、生活の匂いがあるところ」という条件に合致するような街を探したんです。これが意外となかなかないんですよ。単線というだけでかなり絞られてくるし、海がきれいな街はたくさんあっても、日本海側だと穏やかな感じが出ない。そこで瀬戸内海に絞られてきたんです、古くら人が暮らす場所が多くて、生活感もある。そうして尾道や竹原市が候補となってきたのですが、尾道は有名すぎるだろうと(笑)。

—— たくさんの映画の舞台になっていますものね。

田坂 どうしてもそっちのイメージに引っ張られてしまうので、最終的に竹原市にさせていただいたという感じです。

—— スタッフさんは竹原には何度も行かれたと思いますが、印象深いエピソードはありますか?

田坂 これは佐藤監督も仰っていましたけど、竹原市の皆さんは、自分の街が好きなんですよ。自分の街が好きだからこそ、自分の街に興味を持つ人がいるとうれしくて、それがおもてなしの心に繋がっていく。そうやって出迎えてくれて、こちらもそれにお返しをしたいという気持ちになれたので、それがよい関係を作ってくれたのかなと思います。『たまゆら』を機に竹原を知って欲しいという気持ちがあって、訪れたファンをもてなしてくれるし、我々スタッフまでもを大事にしてくれるから、我々もその気持ちに何とか応えたいと頑張る——この6年間はその繰り返しでした。

—— 「ももねこ様祭」という独自のお祭りも、年に一回ペースでもう4回も開催されています。なかなかない現象ですよね。

田坂 「ももねこ様祭り」こそ、街とコミュニケーションをとっていく間に生まれたものです。「たまゆらの日2011」という『hitotose』放送時に開催したイベントにあわせて、ももねこ様像を作ったんです。イベント後に、さてこの像をどこに置くかとなり、町並み保存地区(※竹原市は古い町並みを残すため、国から「竹原市重要伝統的建造物群保存地区」が指定されている)にはさすがに置けない。そこへ、駅前商店街の理事長を務める今市さんが商店街に置いていいよと言ってくれて、管理してくださっているんです。『たまゆら』の作中で出てくるのは主に保存地区で、なかなか商店街には『たまゆら』ファンも足を運ばないので、一つ商店街にそういったスポットができて、結果的に良かったです。そこから更に「ももねこ様で何か遊べるといいよね」という機運が高まって、お祭りに繋がったわけです。


■「キレイに終わりましたから、キレイなままにしておきたい」

—— 作品的には一区切りがついて、最後の上映も終了してしまいました。

田坂 作品自体は完結しましたから、今後、公式として竹原で何かイベントを、というのは厳しいですね、「ももねこ様祭」だけになってしまうと思います。ただ「ももねこ様祭」はもう『たまゆら』のイベントだとはもう思っていません。皆が交流するお祭りとして、地元の方たちが運営されているわけですから。『たまゆら』をキッカケにイベントが生まれたのはうれしいし、長く続くといいなとは思っていますが。

—— なるほど。あと、『たまゆら』シリーズのファンの中には、後日談などを描いたOVAや何かの形で、楓たちをまた拝めないかなぁと期待する人もいるかと思いますが……

田坂 うれしいですけど、それはないです(キッパリ)。やっぱりキレイに終わりましたから、キレイなままにしたいなと思っています。

—— 悲しいけど、そのほうがいいんでしょうね……。上映が終わって、5月12日にBlu-ray、DVDの一般発売も始まりました。『たまゆら』の6年間にピリオドを打たれるわけですが、改めて振りかえってみて、いかがですか?

田坂 『たまゆら』は、ファンの方が積極的に支えてくれたタイトルだったと思います。スタッフや竹原市の方々と一緒に作品を楽しんでくれて……物語自体ももちろん、イベントなども楽しんでくれたのが本当にうれしかったです。そういう気持ちを見せてくれるからこそ、我々も頑張れたわけですし、それは竹原市の皆さんもそうだったと思います。それぞれの人がそれぞれのために、頑張って気持ちを伝えあっていくような作品でした。そんな体験をさせていただいたこと、応援してくれたことに対してありがとうございましたと、お伝えしたいです。

■『たまゆら〜卒業写真』公式サイト
http://tamayura.info/

・『たまゆら 〜卒業写真〜 第4部 朝−あした−』
一般販売Blu-ray・DVDは5月12日より発売中!
Blu-ray:7,500円(税込)
DVD:6,500円(税込)

(C)佐藤順一・TYA/たまゆら製作委員会
(C)2011佐藤順一・TYA/たまゆら製作委員会
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