映画館が女子だらけ!『愛がなんだ』満席・立ち見 ・リピーター続出のワケとは?

5月13日(月)7時45分 シネマカフェ

『愛がなんだ』(C)2019映画「愛がなんだ」製作委員会

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10連休となった今年のゴールデンウィーク。『名探偵コナン 紺青の拳』や『アベンジャーズ/エンドゲーム』、『名探偵ピカチュウ』といった大作映画がランキング上位を賑わせる中、連日満席・立ち見続き、しかも観客の大多数が10代後半〜30代の女性、もしくはカップルで埋め尽くされる事態となったのが、主演・岸井ゆきの、監督・今泉力哉による『愛がなんだ』。

メイン上映館のテアトル新宿では、ロングランヒットとなった『この世界の片隅に』以来の高稼働が続いており、アップリンク吉祥寺を運営するアップリンク代表・浅井隆氏は投稿ウェブサービス「note」に“気が狂ったようにヒットしている”と紹介。4月19日の公開から3週間ほどたつが、上映館は広がる一方で、リピーターも現れ始めている。『愛がなんだ』がそこまで世の女子たちを夢中にさせるのは、なぜだろうか? 



主演に岸井さん、共演に成田凌深川麻衣若葉竜也江口のりこなど多彩な俳優を迎え、直木賞作家・角田光代の原作小説を新世代の恋愛映画の旗手と呼ばれる今泉監督が映画化した本作。昨年の第31回東京国際映画祭・コンペティション部門に、日本映画として『半世界』とともに出品されたことも話題となった。

28歳のOL・テルコ(岸井さん)は一目ぼれしたマモル(成田さん)に超絶なまでの片思いをしており、ひとたび電話がくればニヤニヤを隠しながら彼のもとに駆けつけ、朝まで飲みに付き合い、そのまま体を重ねる。自分のすべてをマモルに捧げるあまり、親友・葉子(深川さん)からは冷たい目で見られ、仕事も失う。その葉子は年下男子のナカハラ(若葉さん)を振り回す日々。さらにマモルは、個性的な年上の女性・すみれ(江口さん)に実らぬ思いを募らせている。


どの恋も、思いのベクトルは一方通行で、岸井さん&成田さんが笑顔を見せるポスターやメイン写真の“幸せいっぱいのカップル”のイメージを裏切るストーリー。そもそも、このビジュアルにかかるキャッチコピー自体が「全部が好き。でもなんでだろう、私は彼の恋人ではない。」という心がザワつくもの。『愛がなんだ』といいながら、「結局、愛ってなんなんだろうね?」と誰かと語り合いたくなる恋愛劇に魅了される人が増殖中なのだ。

◆GW中もSNSで話題沸騰!異例の「語る会」が開催

Twitter上には、公開早々からこの映画に取り憑かれたかのように感想をアップする人が続出。「テルちゃんの気持ち 凄く分かる」「身に覚えのあるシーンばかりでグサグサ」といった、テルコをはじめ登場人物たちに自らの経験を重ね合わせる女性たちの声や、劇中のテルコさながら「金麦買って飲みながら歩いて帰ってる。家に着きたくない」「とてつもなく彼に会いたくなりました」と余韻にひたる声、「愛がなんだみて 余計になんだってなった」「愛が正しいか間違っているか、すごく考えさせられる映画」といった声など、実にさまざまな感想が連なっている。

そして今泉監督もこうした感想ツイートをこまめにリツイートし、ファンたちに本作に込めた思いを投げかけ、拡散を続けている。


2010年『たまの映画』で長編デビューした今泉監督は、モト冬樹主演『こっぴどい猫』(’12)、『カメラを止めるな!』を生み出した映画専門学校「ENBUゼミナール」によるワークショップ「シネマプロジェクト」の第2弾『サッドティー』(第26回東京国際映画祭・日本映画スプラッシュ部門出品)、「乃木坂46」脱退後の深川さんの初主演映画『パンとバスと二度目のハツコイ』(第30回東京国際映画祭・特別招待作品)などを手がけ、三浦春馬主演『アイネクライネナハトムジーク』が今秋公開と精力的に活動しており、恋愛群像劇の名手として知られる。


また、すでに本作を観た著名人たちも、それぞれの思いを綴らずにはいられない様子だ。



こうした「観た後に語りたい!」という声の高まりを受け、監督や岸井さん、成田さん、主題歌を手がける「Homecomings」らを迎えたさまざまなトークイベントが実施される中、ついに5月10日には「あえて映画館で映画上映なしで愛を考える90分:『愛がなんだ』をひたすら語る夜」がテアトル新宿にて開催。映画館なのに映画を上映しない、前代未聞のトークだけのイベントが行われた。

◆全員キャラが立ちすぎ!成田凌が史上最高の成田凌

Twitterと連携できる映画レビューサイト「coco」にも公開直後からコメントが相次いでおり、coco映画レビュアー満足度も94%と、『エンドゲーム』超えの高い数値となっている(5月12日現在)。

共感もある一方、「決してこうなりたいと思わない登場人物だらけだが、なぜこの群像劇がここまで魅力的か不思議、そして最高!」「最初はマモルのだらしなさ、テルコの恋愛依存に辟易しながら観ていたが、不思議と最後は嫌な感じがしなかった」といった声が挙がる本作。イタくて、時々コワい(?)言動を見せる登場人物ばかりながら、憎々しいほどの“悪い人”は誰ひとりいない。そんなキャラクターたちを見事に体現した俳優陣とキャスティングの妙も注目の的だ。

恋愛至上主義というより、“マモちゃん至上主義”の主人公・テルコ役を演じた岸井さんは、大河ドラマ「真田丸」や朝ドラ「まんぷく」などで映画ファン以外にも知名度を上げてきた実力派。とりわけ今回は、「まんぷく」で姉妹役を演じたばかりの深川さんとの共演で興味を引かれた人も多いだろう(撮影は本作のほうが先)。


「岸井ゆきのさん、可愛かった」「平成のアデル(『アデルの恋の物語』)とも言える怖さを岸井ゆきのの可愛さが浄化」「こんな形の愛もあるのかと切なくなった。尽くしまくるテルちゃんかわいかった」「見た事あるもん…あんな顔、こんな顔、と思えるくらいに岸井ゆきのと成田凌が上手い」など、マモルへの執着が危ういほどのテルコがどこか愛しく、切なく見えるのは、岸井さんが醸し出す親しみやすさや日常性があればこそ。


また、都合よくテルコに接しながら、卑怯なほどの色気で観客をも魅了する成田さんは、「サイテー男の無自覚の酷さを観客の皆さんと共有したい」と事前に語っていたが、その期待を裏切らない彼史上最高のハマリっぷり。放っておけないだらしなさやダメさ加減、罪深い優しさと自惚れ、すべてに説得力を持たせており、「成田凌が好青年の役なのかなと思ってちょっと不安だったが、実際にはいつものクズな役だったので安心した」とも言われるほど。

公開前から、2人でお風呂に入って髪を洗いっこする“キューピーごっこ”、料理を作っているテルコの肩に背後からあごを乗せる“肩トン”も話題を呼んでいたが、成田さんのアドリブだったという指にケチャップをつけてテルコに食べさせる“追いケチャップ”も、まさに追い打ちをかけ「最高」「優勝」などといわれている。


もちろん、「元乃木坂46の深川麻衣さんがめっちゃ素晴らしすぎた アイドルの時と印象が変わっていて驚いた」「江口のり子さんのスパイスが効いてる」「ゆきのちゃんも光ってたが都合のいい男のナカハラっち役若葉さんがとても良かった」「若葉竜也さん、光ってました」と、それぞれの演技を推すコメントも多く、本作を機に彼らもいっそう人気を集めるはずだ。

◆「共感してしまう自分が怖い」…ひと言では説明できない“愛”ってなんだ?

これまでも“正解のない恋愛の形”をテーマにしてきた今泉監督。はっきりとした答えのない命題を、まるで隣人かのような距離感で描いてきたが、今回は角田氏の傑作“片思い”小説をベースにしていることもあり、「ここまで、深みがある作品は久々!」「取り巻く人たちも同じような問題を抱えていてその多層構造が面白かった」と、より噛みしめ甲斐のある1本となっている。本作を、“今泉ワールド”の1つの集大成と位置づけるファンもいる。

「片思いと言っても切ない系の話ではなく一歩間違えればストーカー。ラストまでぶれない彼女の振る舞いが愛そのものなのだろうか」「こういう恋愛は不毛だ! のひとことで片付けてはいけない」「ただの片想いでは済まされないお話。全てが生々しくてちょっとこわかった。少し共感してしまう自分も怖い…」「恋愛っちゅーもんは惚れた方が負けなんすよ笑笑」「愛と執着は紙一重な気がする」と、それぞれの恋愛観をめぐらせて答えを探そうとする声からも、それは伺える。

また、『勝手にふるえてろ』『寝ても覚めても』『南瓜とマヨネーズ』『きみの鳥はうたえる』など、わかりやすくはない、いわゆる“胸キュン”映画とは一線を画す近年の秀作たちの名前を挙げて「好き」を伝える人も。


「周りの人のことは見えているのに自分のことには全く気付けない姿にバカだねぇと思いつつ、あれ、それって自分じゃね?という…」「テルちゃんやその周りに抱く思いが、ふと冷静になるとそのまま自分に跳ね返ってきて余韻として残る」と、テルコたちによって投げられた“ブーメラン”に戸惑い気味になる人も少なくない。

傍目から見れば、誰ひとりして幸せな恋愛をしているようには見えない彼ら。しかし、「そんなの、愛って言うな!」と断言できるほど、愛とは何なのかをしたり顔で語れる人などいるのだろうか? こうした宿題を与えてくれるからこそ、金麦買って歩いて帰りたくなってしまうのだ。

『愛がなんだ』はテアトル新宿ほか全国にて公開中。

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