サバンナ八木×レイザーラモンHG「コロナの不安を、毎日イラストを描くことで乗り切った」「人生で初めて絡んだ芸人がサバンナさんでした」

2024年5月13日(月)12時30分 婦人公論.jp


新宿の吉本本社受付にて。撮影◎本社 奥西義和

サバンナ八木真澄さん考案による未知の生き物たちが集められた『未確認生物図鑑』がこの度発売になりました。独創的で愛らしいイラストを手掛けたのはレイザーラモンHGさん。ともに筋肉美を誇ってきた芸人であるお二人の出会いから、図鑑が生み出された奇跡のきっかけまで、笑あり涙ありの創作秘話を伺いました。
(構成◎岡宗真由子 撮影◎本社 奥西義和)

* * * * * * *

30年来の仲


八木 :僕ら30年来の仲だけど、まさかこういう日が来るとは思わなかった。

HG :相方のレイザーラモンRGが立命館大学で、八木さんも立命館の1つ上の先輩。僕は同志社大学でしたが、関西の大学同士、もともと身近な存在でした。

八木 :デビューする前のレイザーラモンと絡んでるから、すごい長いよね。

HG :サバンナさんの公開放送が立命館の大学構内でありました。

八木 :サバンナは結構デビューが早く、学生時代からラジオ番組をやっていて、「母校で公開放送しよ」ってなった。その時、RGとHGが飛び込みで収録現場に現れたんだよね。

HG :はい、僕らは素人だったものの、お笑い好きだったんで、「テレビに出てるサバンナさんたちが学校に来るから行こう!」って言って見に行って、番組に出してもらいました。人生で初めて絡んだ芸人がサバンナさんでした。

八木 :放送してる場所の床はコンクリートだったけど、ブレーンバスター(逆さに抱え上げた相手を後方に倒れ込みながら、床に落とすプロレス技)やったな?

HG :僕らプロレス同好会だったので、技かけてもらいましたね。

八木 :そののち《レイザーラモン》として吉本入ってきて、「えーっ!あの時の?!」って感動の再会。(笑)

HG :八木さんも僕も、筋肉鍛えてる芸人が市民権ない時代から筋肉つけてましたもんね。

八木 :そうそう。「鍛えておもしろなんのか?」って言われて迫害(笑)されてた者同士だから、親近感がすごい。

HG :今じゃあ鍛えてる芸人がすごく増えましたから考えられないですけど。

八木 :なかやまきんに君も、ちょっと下でデビューして、お互いマイノリティだったので3人でよくつるんでた。

HG :その3人が、後の《健康ボーイズ》に。

八木 :僕は、なかやまきんに君と《ザ☆健康ボーイズ》っていうユニットを2007年からやっていた。でもきんに君が吉本を退所してしまって、続けるのが難しくなり、HGに泣きついて新ユニット《ネオ☆健康ボーイズ》を組ましてもらった。そのネオ☆健康ボーイズでの営業先で、地元のキャラクターを考える企画があって、僕のアイデアをHGがイラスト化してくれて…。

HG :「めちゃくちゃええやんHG!」って、えらい褒めてくださって。その日の帰り道に、「SNSでアップしてるキャラクターをこんな感じにカタチにしたいね」って話になりました。

八木 :2年前やな。イラストはあてもなく毎日、書いてて。

HG :毎日はヤバいですよ。ちょっと怖いです。(笑)ストック1000体くらいありますか?

八木 :もっとかも。

芸人が2人でほんとに描いた本


HG :八木さんはご自分のイラストで、『ぼくの怪獣大百科』も出版してますよね。

八木 :でもね、今回HGがイラストを書いてくれたことで、初めて何度でも見返したい理想的な本が出来上がった。今までは僕の画力がどうにも想像力に追いついていなかったから本当にありがたい。HGは誰かにイラスト習ったこととか学校行ったことはないんだよね?

HG :そうですね、絵の学校には行ってません。今回僕も100体描いてるうちにイラストうまなったと思います。

八木 :芸人が2人で描いた本だから、プロが手直ししてるって思われがちやけど、色から構成から全部HGがつくってくれて、ほんまにすごいと思うわ。

HG :ひとつイラストが完成したら八木さんにデータを送ってたんですけど、毎回「ここがかっこいい」とか「この表現うまいな」とか褒めてくれました。

八木 : HGのイラストほんまにスゴイから。


八木さんの描いた虹のキャラ・スーパーラッキー


仕上がったHGさんのキャラ

HG :でも、何枚も見て褒める所がなくなったのか、せっかく虹のキャラクターを工夫して描いたのに、「背景の空が綺麗」って。あれは「セイ!」でしょう。

八木 :あれは褒め間違えた。

HG :ダメ出しは一切無しで。その後、八木さんが生息地や生態について文章で肉付けして、レアレベルを数字でつけて、仕上げていく作業でしたね。

八木 :そうそう。

HG :仕上がったもののレアレベル見ると、「え?これがレアなの?」とか「これがまぁまぁレアじゃないのか」とか驚くっていう…。

八木 :いや、生物のレアレベルは別にHGの絵の評価ではないのよ。(笑)

HG :頭ではわかるんですけど、この妖怪ぬりかべみたいで一番早く描けた「しろべえ」がレア度9300で、自信作の「ビックハンド」がレア度900っていうのなんか納得できない。


ビックハンド


ビックハンド

八木 :いや、だからそういうことじゃないんだって。(笑)

HG :グッズ化するなら「しろべえ」だって言いますけど、僕からしたら「三日月龍」とかもうちょっと手の込んだフォルムのやつをとり上げて欲しいですね。

ビックリマンチョコシールを彷彿とさせる


八木 :「未確認生物の世界展」ではトレーディングカードも特別に販売されます。

HG :これは本なんですけど、正方形だしカードを意識しました。縁取りキラキラしてるところとかビックリマンチョコシールを彷彿とさせる。

八木 :いや、それもそうなんだけど、僕は《まじゃりんこシール》世代なのよ。

HG :《まじゃりんこシール》!ありましたね。(笑)カードってなんでいいんでしょうね。例えデジタルの時代でもカードって滅びないですよね。ポケモンカードとか。カードがこの本の源流ですね。

八木 :息子がトレーディングカードの購入を狙ってます。

HG :うちの子どももカード類大好きですね。

八木 :この本を通して子どもたちと交流するのが楽しみ。これまでも僕の未確認生物の絵を携えて、3回ワークショップみたいなことしてきました。子どもたちを集めて、最初に僕の生物を紹介して、次は自分達で考えてもらう。ペンと紙を用意して「生物の図鑑を見てもいいし、なんでもいいから描いてみて」って。次は発表しよって言って、参加者同士、交流するんです。支援学校もまわりました。子どもっていろんな思い込みがない分自由で、本当に発想豊か。普段、空想の生物を考える機会なんてみんなないと思いますけど、子どもはみんないいものを持っている。見学の保護者の方が、「我が子にこんなことできるんだ!」ってとても喜んでくれます。

夢は、この図鑑にある生物が実際に発見されること


HG :この本携えて日本中を周りたいですね。八木さんが《空想生物》考え始めたのっていつからなんですか?

八木 :30歳くらいからかな。

HG :まぁまぁ大人になってからですね。(笑)


ダブルスネーク


ダブルスネーク

八木 :子どもの頃、図鑑が大好きだったんだよね。でも、図鑑って楽しいんだけど、昆虫なら昆虫、魚なら魚だし、並びが単調なので飽きてくる。だから特に好きだったのが《危険生物》の図鑑。いろんなジャンルの生物が出てくるでしょ。

HG :この本にも危険生物たくさん出てきますよね。「ダブルスネーク」は、双頭でこちらの頭に噛まれると毒があるんですが、こちらの頭が解毒になってたり、なんか怖いだけじゃ終わらない八木さんの優しさを感じます。

八木 :俺の夢は、この図鑑にある生物が実際に発見されることだね。


バウムイタチ


バウムイタチ

HG :発見されますかね?

八木 :いやこの「バウムイタチ」とか「タライ亀」に似たものなんか、すぐ発見されるかもわからんやん。あと遺伝子技術で生まれるかもしれない。


タライ亀


タライ亀

HG :確かに急に知能持ったり、大きくなったりするだけで違うものになってきますよね。

八木 :そうそう。発見されるより図鑑が先だったらすごいよね。

不安から救ってくれた未確認生物たち


HG :偉い大学教授になってもないのに図鑑出せるだけですごいことですよ。本を受け取った時、感動しましたね。

八木 :そう、ゲラの段階では、「間違いがないかな?」と目を光らせるのに忙しかったけど、いざ本になったのをマック(マクドナルド)で見た時は、ただただ感無量だった。

HG :マックで見てたんですね。

八木 :コロナで、日本中、世界中の人が揺らぐはずがないと思っていた土台から揺さぶられたと思うんです。僕は、特に営業が主戦場だったのに、営業がゼロになった。コロナがあけるのかあけないかもわからない。子どもは2人いて小学生だし、ローンも残ってるし。とんでもない不安の中に叩き込まれてしまった。そんな中、朝起きて毎日未確認生物を描くことはいつもと変わらずやって。ただただ精神統一みたいな意味合いで描いてたんだよね。

HG :八木さんの精神統一って、人と全然違っててすごいですよ。

八木 :でも毎日描き溜めてはいたけれど、全く発表のあてがなかった。その出口を作ってくれたのがHGがイラスト化してくれた瞬間だったんだよね。2022年1月に、営業の相方だったきんに君が吉本辞めることになり、RGに悪いなと思いながらHGを頼って、ネオ☆健康ボーイズを立ち上げた。思えば、きんに君が辞めちゃってすごく辛いところからこの『未確認生物図鑑』の道が開けたんだなぁと思うと、本当にマックで涙流しそうになった。

HG :マック強調しますね。(笑)

八木 :俺は、営業もたくさんこなしてるし、ファイナンシャルプランナー2級の資格も持ってるし、ある意味すごい現実的に生きているところがある。だから、その反動で「未確認生物」の世界で心のバランスをとっているのよ。

HG :八木さんが営業で見せてる気配り、半端じゃないですしね。

八木 :気配りひとつで、次呼ばれるかどうか変わってくるからね。

HG :確かに僕も無心で絵を描いている時は癒されます。今って、iPad1つ持っていれば自宅じゃない場所、移動中とかでも絵が描けるんですよね。

八木 :どうやって生きていこうっていう不安から救ってくれたのがこの未確認生物たちだったね。

HG :毎日アイデア枯れないのすごいですよ。

八木 :枯れはしないんだけど、前描いたのとソックリなやつ描いてたりはする。(笑)

HG :1000体以上描いてたらそうなりますって。

八木 :それは間引くとして、また第2巻、3巻出そうな。

HG :もちろんフォー(4)巻もですね!

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