森友学園問題と酷似 「麻生グループ」への土地無償貸与問題

5月13日(日)16時0分 NEWSポストセブン

森友問題と瓜二つの疑惑が浮上(時事通信フォト)

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 国会が正常化した5月8日の夜、安倍晋三首相がサシで会食した相手は麻生太郎・財務相兼副総理だった。財務省の数々の不祥事が発覚しても、辞任しないと踏みとどまり、政権批判の矢面に立つ姿は「義経を守る弁慶」(自民党ベテラン)にもたとえられる。


「総理にとって、麻生さんを切るという選択肢はない。3選を目指すためには、第2派閥の麻生派の支持が絶対不可欠だから、麻生さんを味方につけておくのは、総理にとっての“生命線”なんだ」(同前)


 もう一つ、麻生氏の強気な言動の裏には「モリもカケもしょせん安倍の問題」という意識が見え隠れする。だが、その麻生氏自身にも“公有地疑惑”が浮上した──。


 かつて「炭鉱の町」として栄えた麻生氏の地元・福岡県飯塚市では、市民の生活に欠かせない病院やスーパー、ガソリンスタンド、保育園から老人福祉施設まで、麻生氏が大株主である「株式会社麻生」を中心とするグループ企業が広く経営し、「麻生王国」とも呼ばれる。


 その「王国」が“もうひとつの森友学園事件”ともいえる市有地の麻生グループへの“タダ貸し”問題で揺れていた。経緯を取材すると、森友学園問題と瓜二つなのだ。


 まずは市議会でのやりとりを聞いていただきたい。飯塚では市議会で「麻生」がらみの問題が正面から議論されることは極めて珍しい。自民党議員が「上のほうは麻生グループなんですよ。だからそこのところまで僕は言いたくないんだけど」と述べるなど、デリケートな話題であることが窺える。議事録から抜粋する。


野党議員:「市有地を株式会社に無償貸与するのは極めて異例。有償貸し付けだとこの土地の賃料はいくらになる計算なのか」

市役所:「計算していません」

野党議員:「この麻生グループのわがままを受け入れる今回の議案を市の側は誰が決断したのか」

市役所:「市長の決定を得たものです」


 問題の土地は、飯塚市の郊外に建つ「こども発達支援センター」の敷地だ。もともとは隣接する旧飯塚市立病院(現・頴田病院)の敷地の一部で、麻生グループが2008年4月に病院の経営を引き継いだ際、市との協定で発達障害児の支援センターを併設(建設)することになった。麻生側は病院と同センターの敷地(市有地)を市から7年間無償で借りて、建物を建てた後、時価で買い取る契約を結んだ。


 ちなみに国会で追及されている森友学園は国有地を有料で借りた後、格安で払い下げを受けたことが問題になったが、一方の麻生グループは最初から市有地を無償で借り、その土地に自己資金で建物を建てて、「こども発達支援センター」を運営するNPO法人に月額20万円で貸してきたのである。


 ところが、今年3月に土地の買い取り期限が来ると、麻生側は病院の敷地部分(約1万平方メートル)は約1億3000万円で買い取ったものの、時価約1000万円とされる支援センターの敷地部分(約834平方メートル)については市に無償貸与をさらに5年間延長するように要求した。


「弊社の経営状況は極めて厳しく、赤字での経営を余儀なくされてきたのが現状です。(中略)飯塚市の福祉行政を支えるために、平成30年4月1日からさらに5年間の期間延長をご了承頂けますよう、お願い申し上げます」(市長宛の「貸借延長のお願い」より)


 あの麻生財閥が1000万円程度の金額を払えないというのも奇妙に聞こえるが、議事録はこう続く。


野党議員:「相手は麻生グループの一員ですよ。こういうやり方をやめて、麻生グループとして社会的責任を果たすように求める考えはありませんか」

市役所:「発達障害にかかわる通所施設がこの筑豊からなくなる恐れもあることを鑑みて再度、5年間の無償貸し付けとさせていただいでおります」

野党議員:「そのように麻生グループの会社が言ったんですか?」

市役所:「そういう可能性もあるんじゃないかと推察しているわけでございます」


 市役所側は、「土地をタダで貸さないと、支援センターが追い出されるかもしれない」と麻生側の意向を「推察」して無償貸与契約を延長し、市議会は委員会段階でいったんは契約案を否決したものの、本会議で逆転可決した。


◆妻と長男が取締役


 戦前の「麻生炭鉱」をルーツとする麻生グループは、戦後セメント業に進出し、現在は全国屈指の規模を誇る「飯塚病院」(病床数1048。医師319人、看護師1100人)を中核に、専門学校、介護施設の経営を柱にして総売上高2571億円、連結経常利益約109億円(2017年3月期。大手信用調査機関調べ)に達している。


 麻生氏は政界入りするまで株式会社麻生の社長を務め、現在は経営から退いているものの第3位の大株主だ(現在の社長は甥の巌氏)。妻の千賀子氏と長男・将豊氏は現役の同社取締役である。政治資金の面でも、麻生氏は麻生グループから献金やパーティ券購入など3年間で5096万円(2014〜2016年)の資金提供を受けている。


 副総理の「妻と息子」が役員に名を連ねる会社の「ご意向」を役所が忖度し、その結果、副総理が大株主の会社が公有地の無償貸与延長という実利を得た──という構図だ。飯塚市議会の重鎮である森山元昭・自民党市議はこう語る。


「太郎さんとは20代の頃からの付き合いで、最初の選挙の遊説も一緒に回った。ただ、今回の市有地の無償貸与の延長については黙っているわけにはいかない。議会でも“麻生だから優遇するようなことがあってはおかしい”と言った。土地を借りているのは株式会社麻生の100%子会社。単体では赤字かもしらんが、麻生グループが時価1000万円程度の土地を買い取れないはずがないでしょう」


 麻生事務所にぶつけると、「麻生太郎と麻生グループは別人格であり、見解を申し上げる立場にない」という回答。株式会社麻生も「ノーコメント」(グループ広報担当)だった。


 麻生氏は森友学園の籠池泰典・前理事長の国会証言を「真っ赤なうそ」と言い、財務省による国有地売却の公文書改竄について「どの組織だってあり得る」と嘯いたが、自らの足元で火が付いた公有地問題でも“オレは関係ねぇよ”と開き直るつもりだろうか。


※週刊ポスト2018年5月25日号

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