センスで勝負しない「なつぞら」 広瀬すずの垢抜けなさも魅力——青木るえか「テレビ健康診断」

5月14日(火)6時0分 文春オンライン

『なつぞら』は面白い。


まんぷく』の前半(あくまで前半)のデキの良さとはまた別方向の良さがある。NHKは『なつぞら』にすごい気合いを入れてて、松嶋菜々子小林綾子とか歴代ヒロインが出て超豪華! だそうだ。



小林綾子 ©文藝春秋


 いや、そういうキャストの豪華さ(小林綾子が豪華とは思えぬが)とは無関係なところの良さがある。


『まんぷく』は脚本も演出も「センスの良さで視聴者を感動(ベタでなく)させよう」としていた。『なつぞら』は違う。珍しく「センスで勝負する気がない」NHKドラマを見たような気がする(なお民放のドラマはセンスより「いかに効果的に金を使ったかor使わなかったか」が基本)。


 勝負する気がない、というのは「センスに手が回らぬ」ということではなくて「センスは目指さぬ、断じて」という確固たる方向性を感じるのだ。


 たとえば、主人公のなつは北海道で農業高校に通いながら牛の世話とかする。すごく書き込みが丁寧で、これは「十勝の酪農女王になる話」かと思わせる。でも将来アニメーターになるそうだ。え?


 そもそも、東京の戦災孤児だったなつが見たこともない父の戦友に十勝の酪農家の家に連れてこられて実子同然に育てられる、というのも、なんかゴツゴツしてるというか唐突な作り話というか、設定のための設定みたいな流れで、でもなつのモデルの女性が牛とともに育ったりしてんのかなーそのためのムリヤリなのかと調べたら何もなかった。


 これが『まんぷく』だったら十勝に来るまでに、まず父同士のベタじゃないつき合いをしゃれた筆致と少し変わった角度からの描写で笑わせて泣かせて、それを伏線として牛が……とかあったような気がする。



 では、そういうのがない『なつぞら』がダメかというとそんなことがないのが面白いところで、設定のムリヤリとかをなぎ倒す、真っ正面からのマジメなドラマづくり。俳優陣の演技もセットも照明もカット割りも、すんごいオーソドックス。力いっぱいの直球。そういえばなつの子供時代をやってた子も、今どきめずらしいほどのすごくなつかしい「子役演技」。


 テレビの画面の中に、すごく大きな世界が広がってみえるんですよこのドラマ。題材はノンビリしてるけどなんかその広さは大河ドラマの味わい。『いだてん』のほうがセンス勝負なので、朝ドラが大河風味で行こうということなんだろうか。


 そして主役の広瀬すず。ものすごーく、田舎の子っぽい。ホンモノだ。突然バタくさい顔の子が出現する土着日本人の感じがすごい出てる。こういう人だったとは思わなかった。上京しても垢抜けない子のまま成長してほしい。それができたらすごい女優だ!



INFORMATION


『なつぞら』

NHK総合 月〜土 8:00〜8:15

https://www.nhk.or.jp/natsuzora/




(青木 るえか/週刊文春 2019年5月16日号)

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