中森明菜の親子関係に見る、「老親との縁切り」は薄情なのか?

5月14日(土)19時0分 messy

『中森明菜 THE LIVE DVD COMPLETE BOX』ユニバーサル ミュージック

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 2014年のNHK紅白歌合戦に出演したことで、4年2カ月ぶりに歌手活動を再開した中森明菜(50)。あれから2年半が過ぎ、地上派へのテレビ出演は紅白以降ないものの、昨年から今年にかけ、シングルやアルバムをたびたびリリースしている。5月10日発売の「女性自身」(光文社)は、そんな明菜の活動35周年の節目の日である5月1日に、実父である明男さん(82)が明かした中森家の確執を報じており、明男さんは明菜が過去に「実家の戸籍を抜いていた」ことを語っている。

 記事で明男さんは「お母ちゃんががんで亡くなる前に入院していたときも、明菜は一度も見舞いに来なかったんです(中略)末期がんに苦しみながら、お母ちゃんは『明菜は薄情だ』って涙をこぼしていました」と語る。明菜の実母が死んでから21年間、家族は誰ひとり明菜に会えていないのだという。また“初めてお話しすることですが…”と前置きしたうえで、明菜の実母が亡くなる少し前に、明菜の所属事務所の人間が2人来て『明菜が中森家の戸籍を抜けたいと言っている』と伝えてきたことを明かす。当時明男さんは『そんなことはできない』と突っぱねたというのだが、その後、明菜は『勝手に家族の戸籍から、自分だけ籍を抜いてしまった』のだという。さらに後日、事務所の人間が、実家にある明菜の荷物を全て持ち出したというのだ。

 明男さんは「私が死んでも明菜には知らせなくていい」と子供たちに言っているというのだが「でもね……私ももう82歳。やっぱり、死ぬ前に明菜に会いたい」とこぼす。今年に入り、顔を見せてほしいという手紙を2度書いたが、送る事ができなかったとも語った。記事では「明菜が閉ざされた心を肉親に開く、その日はやってくるのだろうか——」と締められているのだが……。実父・明男さんの告白には不可解な点がいくつもある。

 まず今回初めて明かされた「明菜が実家から籍を勝手に抜いていた」という事実や、実母死後、明菜と家族が没交渉であることなどが、全て『明菜が心を閉ざした』ことが理由であるかのような記事になっているが、なぜ心を閉ざすに至ったかは一言も触れられてはいない。そして明男さんは、明菜の実母がガンで入院していたときにも明菜が見舞いに来なかったことを語っているが、少なくともこれらは21年以上前の出来事だ。籍を抜いたのも最近ではなく21年前。そこまで昔の話をいまさら、実父が週刊誌に語る意味は何なのか。82歳で老い先短くなったことで、娘の明菜に会いたい気持ちが大きくなり、その願望を叶えたいため? しかしこうした家庭内のゴタゴタを公にすることで、明菜が得をする事は何もない。“心を閉ざした”と心配しているように見せかけながら、老いをちらつかせ、疎遠となった原因があたかも娘だけにあるように印象づけ、自身の要求を娘に飲ませようとする毒親のようにも見えなくない。というか、そうとしか見えない。



 「自身」ではこれまでたびたび明男さんのインタビューを掲載しているが、2013年10月の同誌では明菜と家族が絶縁状態になった原因を語っている。明男さんは「明菜が私たち家族に“自分のお金を勝手に使われてしまった”と、固く信じ込んでいるからなんですよ。明菜は、当時の事務所のスタッフから『清瀬(の家族)にいっぱいお金が行っていて、大変なんだよ』と言われたそうです」と当時述べており、つまり明菜は、明男さん含む家族が自分の金を勝手に商売のために使い込んだと誤解しているのだ、というのである。では、真実はどうだったのか? あくまでも金の使い込みは誤解である、と言い張るだけで、この弁解では、明菜の“誤解”は解けないだろう。しかも本当に誤解なのかは分からないままである。

 今回の「自身」の記事で明男さんは、初出し情報として明菜が21年以上前、実母がガンで亡くなる前に分籍していた、ということを語っている。明男さんは長年『明菜に裏切られた、家を捨てられた』と感じていたのだろう。しかし明菜にしてみれば、家族関係が良好であればこのような行動に出る必要もなかったのではないか。裏切られたと悲しむ前に、自分は親として家族としてどうだったのか、振り返ってみることは出来ないのだろうか。

 肝心の明菜は家族に対してどういう思いを抱いていたのか。1994年に刊行された『中森明菜心の履歴書—不器用だから、いつもひとりぼっち』(ポポロ編集部)は、それまでの明菜のインタビューを元に、生い立ちから当時までがまとめられた書籍である。

「貧乏だったのよ、すごく。でもお母ちゃん、外にはすごく見栄があったの、だからみんなで出かける時は、必ずおそろいを着せて、おしゃれに見せてね。でも、うちじゃ、お下がり着てたし、ごはんだって食費切りつめて、キャベツ料理ばっかりとかだった」

「ここに自分がいるっていうことが、なんかおこがましくてしょうがないの。あのぅ……私なんか生きてていいんですかぁって、そんなふうに思えて……」(自分の部屋を与えられたときの感想)

「家族でどこかに出かけようって時に、私ひとりのためにダメになっちゃって、みんなにイヤな思いをさせる。私なんかいなけりゃいい、生まれてこなきゃよかったって、何度思ったことか……」(体が弱かった幼少期、家族でのお出かけが流れたときに)

「お母ちゃん、しょっちゅう言ってた。『明菜さえいなかったら』って。お酒飲むたびに、言いだして泣くの」

「愛情をあまり受けずに育ちましたから。だからそのぶんね、よく孤児院なんかで育ったコが、絶対自分は温かい家庭をつくるんだって言ったりする、それと同じでね、ひとには絶対、イヤな悲しい思いをさせたくないの。それなのに、なかなか感情のコントロールができなくて……こんな自分に疲れちゃうんですよ」

 実父の言い分、明菜の言い分、それぞれに主観が入っているのは考慮する必要があるが、明菜は幼少期、自身の存在を否定されて育ち、自分でも自分を否定してきたようだ。それはこの書籍刊行当時まで続いているように見受けられる。

 明男さんの一連の言い分を丸めると「妻にも先立たれ、孤独な82歳の高齢な父親(俺)を見捨てるなんてひどいよね?」ということだろうが、世にある毒親対策本では、親との縁切りをすすめているものがある。明菜はそうした本を読んだのかは分からないが、自身を守るために親との距離を置くことは有効な対策だ。成長した子供が、育ててもらった恩を忘れて親を捨てる、しかも年老いた親を孤独にするなどありえないことだと世間が思っても、自分を守るために逃げることは「あり」なのだ。



 筆者もかつて、実母の毒親ぶりに悩まされた。毒親持ちなら知らないものはいないスーザン・フォワードの『毒になる親』を熟読し、そこに書かれている親との決別を実践したことがある。同書で紹介されている毒親のタイプでいえば、“干渉し、いつもコントロールしていないと気が済まない親と、そういう親に育てられて大人になった子供”、『コントロールばかりする親』だった。

「このタイプの親の持つ問題の深刻さがなかなか理解されにくいのは、彼らは子供を支配しようとしているのに『子供のことを気遣っている』という“隠れみの”に包まれているためである。彼らの言う『あなたのためを思ってしているんです』という言葉の本当の意味は、『私があなたをコントロールするのは、あなたがいなくなってしまうことがあまりにも不安なので、あなたを行かせないでみじめな思いをさせるためなのよ』ということにほかならない。だが、もちろん彼らがそのようなことを認める事はまず絶対にない」

 このように解説されているが、これを読むと、たびたびメディアを使って老いをアピールし、死んだ実母の見舞いに来なかったことをあからさまに責め、娘との関係復活をはかろうと画策する明菜の実父、明男さんにも通じるところがある。同書では、こうした親との関係を考え直す方法として、親との“対決”を推奨しているが、対決で親との関係が変わらないどころか悪化する場合は、関係を断つことも自分を守るためには必要だ、と説いている。明菜が分籍したのは明菜なりに自分を守るための行動だったのではないだろうか。

 さて、明菜の近況はどうか。「自身」は実父のみならず明菜の動きにも敏感だ。だが直接取材はしていない。昨年11月には、明菜の公式ファンクラブ『ファイスウェイ』の会報に寄せられた明菜からの直筆メッセージを紹介しており、スポーツ紙が報じた完全復活には程遠く、暗さに満ちている、という論調で報じているのだが、確かにそのメッセージがすごい。

「今年ももう12月ですね…本当にほんとうに早い——」

「元気になって…あれもこれもと…思う中…自分は止まったまま…」

「本当に途方にくれるぅ…」

「みんなに元気を届けるべく…メッセージを書かないといけないのに…どうしていいか…なんかほんと…わかんない」

「ベランダに…米つぶを…そっと…置いて待つ…“ちゅん”“ちゅん”と来てくれる…すずめさん…ずーっと…見つめちゃう…かわいい」

 明菜、三点リーダ使いすぎである。活動したい気持ちはあるが、米粒をベランダに置き、すずめをずっと見つめている日々。語り口が『中森明菜心の履歴書』の頃から変わっていない。明菜の体調不良や活動休止が100パーセント親との関係に起因するわけではないのだろうが、実家族と縁を切って21年間もの月日が経っても、今なお彼女は「途方にくれ」ているようだ。明男さんは本当に子供を思うのであれば、メディアを使い一方的に自分の言い分を広めるのはやめたほうがよい。

(ブログウォッチャー京子)

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