ゲームするだけで認知症研究に貢献できる!? 海洋アクションADV『Sea Hero Quest』とは?

5月14日(土)11時0分 おたぽる

BBCより

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 ゲームアプリで楽しく遊ぶと医学研究に役立つというから意外だ。高齢化社会を迎え深刻さを増している認知症の研究に、ゲームアプリが大きな貢献を果たしているという。


■ゲームプレイでの“ナビゲーション能力”をビッグデータ化

 無料で提供されているアプリの中には、ユーザーの利用記録がビッグデータとして収集、活用される場合がある。もちろんその旨がどこかに明記してあり、他の目的に使われることはない。さまざまな調査や研究に活用されているビッグデータだが、海洋冒険アドベンチャーゲームの『Sea Hero Quest』(iOS版、Android版)は、なんと認知症研究のためのデータ収集を目的に開発されたアプリなのである。


 英ロンドンのゲームデベロッパー、Glitchersとユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、イースト・アングリア大学に加え、イギリスのアルツハイマー病研究者たちによって共同開発されたこの『Sea Hero Quest』は、南極の氷が浮かぶ海から風光明媚な黄金海岸の海など、海洋に浮かんだ船を操って新種の海洋生物の写真を撮影するアクションADVだ。

 ゲームには主な3つの要素がある。迷路と化した海路を航行すること、進路を見定めるために照明弾を打ち上げること、そして写真に収めるために海洋生物を追跡することの3つだ。しかしこのゲームがどうして認知症研究に役立つというのか? そのキーワードが、このゲームで必要とされる“ナビゲーション能力”である。

 初期の認知症の典型的な症状の一つが、ナビゲーション能力の低下である。しかしながら現状では、このナビゲーション能力の低下が、加齢による自然な老化現象であるのか、それとも初期の認知症を発症しているからなのか、明確な基準がないのだ。そこでプレイヤーに年齢、性別などの属性データを入力してこの『Sea Hero Quest』を遊んでもらい、船の航行の足跡を記録したビッグデータを収集、分析することで認知症の理解へと繋げようとする狙いである。

「これほど大規模な認知症研究は過去にはありません。これまで600人以上のゲームにおける3D空間でのナビゲーション行動のビッグデータが集まりました。研究者コミュニティがこのオープンソースのビッグデータにアクセスできることで、今後早い段階で認知症研究の次のブレイクスルーを達成するものになります」と、イギリスの認知症研究の第一人者であるヒラリー・エヴァンス氏は「BBC」の記事で言及している。


■収集に1年間かかっていたデータが1分間で収集可能に

 具体的にこのゲームのどのようなデータが研究に有用なのか? それはゲーム中の船の航路を可視化グラフ(ヒートマップ)にできることが挙げられる。つまり迷路状になったマップ上で人気のある航路や、典型的な“迷い方”などが浮き彫りになってくるのだ。このビッグデータをもとに、初期の認知症で現れてくるナビゲーション能力の低下を解明する研究が行なわれているのである。

 ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究者によれば、この『Sea Hero Quest』のおかげで、これまでなら1年で200人分しか取れなかったデータを、日によってはなんと1分間で収集できてしまうということだ。

「このプロジェクトは、異なる国や異なる文化を持つ人々数千人分の3Dナビゲーションデータという、予期しない研究のチャンスをもたらしてくれました」と語るのはユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのヒューゴ・スピアーズ博士。このビッグデータを分析することで、認知症の初期症状を突き止めると共に、3D空間での行動において何が“普通”の行動なのかを紐解く糸口にもなるということだ。

 わかりやすく言えば、初めて訪れた環境で一度通った道筋を、しばらくのあいだ覚えていられるかどうかでナビゲーション能力が計測できることになる。実生活でこの能力が低下すれば、初期の認知症患者に多いといわれる“迷子”になりやすくなってしまうのだ。このようなナビゲーション能力をこのゲームによって数値化でき、認知症の初期症状の解明に結びつけるのが研究チームの狙いだ。そしてこの『Sea Hero Quest』によるビッグデータを分析した最初の研究がこの11月にも発表される予定であるという。研究発表がどのような内容になるのか大いに気になるところだ。
(文/仲田しんじ)

【参考】
・BBC
http://www.bbc.com/news/technology-36203674

おたぽる

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