前田敦子 勇気と覚悟見せる『毒島ゆり子』で脱皮か

5月14日(土)16時0分 NEWSポストセブン

番組公式HPより

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 アイドルから女優へ。言うは易く行うは難し、が現実だが、さて国民的センター・前田敦子の場合はどうか。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。


 * * *

 あっちゃんが、深夜枠で暴れている。“深夜の昼ドラ”を標榜する異色ドラマ『毒島ゆり子のせきらら日記』(水曜24時10分TBS系)の中で。


 キスシーンやベットシーンの連発、三角関係のドロドロ。見かけ上は、スキャンダラスでエロい刺激作。だけれど実は、細かな作り込みと丁寧な仕掛け、遊び心満載の秀作。どこかスカっと醒めている主人公の「毒島ゆり子」。そう、前田敦子が演じる不思議な透明感漂う人物像が、面白い。


 かつてはAKB48の選挙で1位を獲得し正真正銘の人気アイドルであり、写真集ではペコちゃんの表情でファンを魅了。という数々の「過去の栄光」からあっけらかんと脱皮した、新しいあっちゃんがそこにいる。


 物語は、超恋愛体質のかけ出し政治記者・毒島ゆり子を軸に回っていく。彼女には生きる上での奇妙な「ルール」が3つ。


・幼い頃、父親の不倫を目撃しトラウマに。だから不倫は絶対ダメ。


・とは言いつつ超のつく恋愛体質で、常に複数の彼氏がいないとダメ。いつ男に裏切られてもいいように準備。


・二股、三股を掛ける時には、必ず相手の男に宣言する。


 そしてゆり子は、スクープ連発の先輩政治記者・小津翔太(新井浩文)に惹かれていく。だが、実は小津は既婚者だった……。


「毒島」は「どくじま」ではなく「ぶすじま」と読ませる。性格ブス、「毒ある人格」ということも含んだ凝った主役名だ。古来よりトリカブトからとれる毒は「附子」(ぶす)と呼ばれてきた。その毒は口に含むと神経系の機能が麻痺して無表情になるがゆえ、「附子」は「ブス」の語源とされるのだとか。


 という一筋縄ではいかない脚本の「ねらい」も理解しあっという間に不可思議な人物になりきっている前田敦子。「ぶす」という役名にひるむこともなく体当たりする勇気に、一票入れたい。


 少女的であり悪魔性も持ち、破壊力があってグズグズしてて……含みのある役を演じているだけではない。「政治記者」役というのも、ミスマッチゆえの面白さ。失礼かもしれないが、前田敦子のイメージと「記者職」「ジャーナリスト」はまったくもって乖離している。が、そんな先入観にも足をすくわれないあっちゃん。次々に「新しい自分」へとジャンプしていく潔さが、このドラマの推進力になっている。


 以前から役者としての前田敦子に私は注目してきた。例えば去年の『ど根性ガエル』(2015年夏ドラマ日本テレビ系)でも、「『一人だけ演技下手』などとネットでは酷評されているが、私はまったくそう思わない」と評した。もちろん、前田敦子を芸達者とは言わないが。


「京子は、ひろしの『しょうもない熱さ』に対置する駒だ。だから、感情を入れずクールに、棒きれのようにぶっきらぼうにしていなければ。前田敦子は、そうした自分の役の意味を、よく理解している。素っ気なく不機嫌を貫く演技はなかなかのもの。後半に突如爆発する感情的セリフが、その分、ド迫力を持った」(NEWSポストセブン2015.7.18)


 彼女の特徴は、物語に描かれた人物像を的確に把む直感力と理解力。そして、自分自身を突き放して観察するクールな視線。私なんて何者でもない、という「透明感」と、作り上げた私を次々に捨てていく強い「覚悟」を感じる。


「覚悟」といえば、昨今こんな「大女優」もいたりする。NHK朝ドラの中で、シワ一つ無いツルツルお肌に銀髪のカツラを載せただけで、すっかり「おばあさん」になった気分。「おばあさん」役を演ずるという「覚悟」がこのベテラン女優からは感じられない。「年齢より若く見られたい」という願望ばかりが画面から滲み出てくるようだ。


 このベテラン女優と前田敦子を対置して見てみると……役者にとって「覚悟」というものがいかに大事なのか、基本となるのか、つくづく感じてしまう。あっちゃんには大いなる「覚悟」をもって、毒島の毒を振りまいて欲しい。

NEWSポストセブン

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