『タイタニック』感動深まる裏話・トリビア集 ─ 日本人乗客の存在、ラストの時計の切ない理由

5月14日(金)15時55分 THE RIVER

タイタニック

レオナルド・ディカプリオ主演、ジェームズ・キャメロン監督による『タイタニック』(1997)は、当時では史上最高額となる200億円超の予算が注ぎ込まれたスペクタル巨編。20世紀初頭に発生した“決して沈まない船”タイタニック号の沈没事故と、そこで生まれた儚いロマンスは、公開から20年以上が経った今でも根強い人気を誇っている。

3時間を超える本作には、知ると更に深みが増すトリビアや小ネタが多く存在する。本記事では、その中から6つをピックアップして、解説していきたい。

この記事には、『タイタニック』(1997)のネタバレが含まれています。

ジャック・ドーソンと同姓の男性が乗船していた

本作の主人公は、レオナルド・ディカプリオ演じるジャック・ドーソン。絵描きとして自由気ままに生計を立て、タイタニック号での旅も、乗船チケットをかけたポーカーで勝ち取った。そんなジャックは、タイタニック号で乗り合わせた貴族の娘ローズに一目惚れする。

このジャック・ドーソンというキャラクターは架空の人物。しかし公開後、史実との繋がりが奇しくも判明する。沈没した実際のタイタニック号には「J.ドーソン」という名の男性が搭乗していたのだ。タイタニック号沈没事故の死没者が埋葬されているカナダ・ハリファックスのフェアビュー・ローン墓地にて「J.ドーソン(J. Dawson)」と刻まれた墓石を確認することができる。

Joseph Dawson Titanic GravestonePhoto by Bigg(g)er https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Joseph_Dawson_Titanic_Gravestone.JPG

J.ドーソンの本名は、ジョセフ・ドーソン。1988年、アイルランドの首都ダブリンにて生を受けた。2016年に掲載された米New York Timesの記事によると、ジョセフ・ドーソンはタイタニック号の機関室で働く乗組員として乗船していたという。この事実を知った『タイタニック』ファンの中には、ジョセフの墓を訪れ、花を手向ける人も少なくなかったそうだ。なお、製作にあたっては、ジャックとジョセフの関連性は無く、偶然であったことがキャメロン監督の発言で判明している。

Source:New York Times,CBC

名ゼリフ「世界は俺のものだ」はアドリブ

タイタニック号に搭乗することができたジャックは、友人のファブリッツィオ(ダニー・ヌッチ)と船首に行き、両手を目いっぱいに広げてこう叫ぶ。「世界は俺のものだ!(I’m the king of the world!)」。ディカプリオが放ったこのセリフは『タイタニック』で最も印象的な場面のひとつとなったが、実はこのセリフはアドリブだったという。

これを証言するのは、ジェームズ・キャメロン監督。イギリス人ジャーナリスト、アリ・プラムとのインタビューで、「その場で考えられたものです」と断言している。同シーンを高所から撮影するため、クレーンのバスケットで待機していたというキャメロン監督だが、必要としていた自然光を得られず、その間にあれこれとセリフなどを試行錯誤していたのだそう。「その時、思いついたんです」とキャメロン監督。無線を使って、ディカプリオに「よし、一つ思いついたぞ。“世界は俺のものだ”と言ってくれ」と伝えたという。「手を広げてその場に浸るんだ。その瞬間を祝福してくれ」。

キャメロン監督のとっさの思いつきで名場面が誕生したわけだが、この指示を聞いたディカプリオは、はじめは困惑気味だったのだとか。監督いわく、指示を受けたディカプリオは「えっ?」と何度も聞き返していたという。これを受けて、キャメロン監督は「とにかく“世界は俺のものだ”と言ってくれ。受け入れてくれ」とゴリ押ししたそうだが、それでもディカプリオは「えっ?」と繰り返していたそうだ。

Source: Ali Plumb Instagram

ローズの裸体スケッチ、描いたのはジェームズ・キャメロン監督

物語のきっかけとも言える海底に眠っていたローズの裸体スケッチ。沈没したタイタニック号の宝を掘り出そうとしたトレジャーハンターのブロックによって発見されたこのスケッチは、画家志望の青年ジャックが、一目惚れした貴族の娘ローズを描いたもの。裸でソファに寝そべるローズと、プロの画家らしく真剣な眼差しでデッサンするジャックのひとときは、最も美しいシーンの1つとなった。

実はこのスケッチ、描いたのはメガホンを取ったジェームズ・キャメロン監督だった。幼少期から美術分野に長けていたというキャメロン監督が画を前もって描き、撮影でディカプリオが使用したということだ。

なお、キャメロン監督によるこのスケッチは、公開から14年後の2011年にオークションに出品されている。最終落札額は不明というが、少なくとも16,000ドル、日本円にして170万円相当の入札額が提示されたとのこと。

Source: ABC News

唯一の日本人が乗船、ミュージシャン細野晴臣の祖父

2000人以上の乗客を乗せたタイタニック号には、唯一の日本人が乗船していた。鉄道院在外研究員の細野正文(ほその まさぶみ)だ。ロシア留学からの帰路でタイタニック号を利用した細野は、二等船室の乗客だったといい、無事救命ボートに乗り生還を果たした。

細野正文 Masabumi Hosono細野正文|https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Masabumi_Hosono.jpeg

日本への帰国後、細野は不遇に見舞われる。タイタニック号生還者であるイギリス人ローレンス・ビーズリーが、事故での体験談を綴った自著『The loss of the SS. Titanic』の中で「救命ボートに嫌な日本人がいた」と記したことを火種に、日本国内で細野に対する批判の声が相次いだのだ。

ビーズリーによる証言は、『タイタニック』公開後、当時の手記などを基に行われた調査で「人違い」である可能性が濃厚だと判明。1939年に他界した細野は、没後から58年の時を経て名誉を取り戻した。ちなみに細野の孫は、イエロー・マジック・オーケストラに属するミュージシャン、細野晴臣。

沈没のさなか、ベットで身を寄せ合う老夫婦は実在

タイタニック号沈没事故で亡くなった乗客は延べ1500人にも及ぶ。劇中で描かれている通り、乗客人数に対する救命ボートの数は不足しており、沈みゆく豪華客船から脱出することができなかった者が大勢いた。その一方、絶体絶命の状況を悟った乗客の中には、タイタニック号と運命を共にすることを決意する者もいたという。本作でも物語終盤、海へ消えゆくタイタニック号に残ることを選んだ乗客のモンタージュが流れている。

中でも強い印象を放ったのが、水がどっと流れ込む客室のベッドで身を寄せ合う老夫婦だ。死への恐怖で顔を歪ませる妻を後ろから優しく包み込む夫。残り少ない人生を最後まで添い遂げようとする夫婦愛を感じさせた。クレジットでは、この老夫婦がイジドー・ストラウスとアイダ・ストラウスという名であることが分かる。このふたり、実際にタイタニック号からの下船を拒否した実在の夫婦である。

イジドー・ストラウス Isidor_Strausイジドー・ストラウス|Photo by James Edward Purdy https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Isidor_Straus_1903.jpg

イジドーは、当時世界最大の百貨店「メイシーズ(Macy's)」の経営者で、外遊先のイギリスからの帰りとして妻と共にタイタニック号に乗船していたという。正義感の強いイジドーは、高齢にもかかわらず女性と子どもを差し置いてボートに乗ることを断固拒否したのだそう。それでも妻アイダだけは救命ボートに乗せようと説得したが、愛を誓ったアイダも夫から離れることに納得せず、2人は船に残ることを選んだという。

なお、本作でもイジドーがアイダを救命ボートに乗せようとする場面の撮影が行われていたが、本編からはカットされた。同シーンはDVDに収録された約45分に渡る未公開シーン集に含まれている。

目閉じたローズのラストシーン、階段の大時計が指す時刻はタイタニック沈没時間

物語終盤、碧洋のハートをジャックの眠る海にしまい、80年前の思い出に別れを告げたローズ。ベットで目を閉じたローズの姿を巡っては様々な解釈がなされている。

ベットで目を閉じるローズを映し出した後、カメラは海中を通り、沈んだタイタニック号を映す。船の階段で乗客乗員に囲まれながら、ジャックの元へと歩み寄るローズ。再会した2人はキスを交わす。2人の後ろに置かれた大時計が指すのは2時20分。この時刻は、タイタニック号が氷山に衝突してから約2時間40分後、船が完全に沈没した時刻と同じなのである。

この時間、現実では救命ボートに乗ることができなかった乗客が必死に脱出しようと船内を駆け回っている。あるいは、沈みゆく船と運命を共にすることを決め、それまでの人生を振り返っていた乗客もいただろう。こうした悲劇とは裏腹、目を閉じたローズに続く一連のシーンでは、2時20分にジャックとローズが愛を交わすのだ。

大時計の指す時刻が沈んだ時刻と同じであったことに、制作者側にどのような意図があったのかは定かでない。事故の死没者に敬意を払うための粋な計らいのようにも感じられる。もしかするとローズは、ジャックと離れてから80年もの間、“沈まなかった”タイタニック号でジャックと結ばれる夢を見続けてきたのかもしれない。あるいは、このときローズが亡くなっていたのだとすれば、死後もかすかに残り続ける意識の中で、無事ジャックと結ばれ、天国へ旅立ったのだろう。


THE RIVER

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