ヒャダインが語る「日テレ=豊臣秀吉」論とは

5月18日(金)17時0分 文春オンライン

「自分たちがつくっているのは『作品』でなく『番組』」(てれびのスキマ)「だから日テレにすごくシンパシーを覚えて見ているのかもしれない。」(ヒャダイン)日テレ常勝の秘密に迫る 『全部やれ。 日本テレビ えげつない勝ち方』 著者のてれびのスキマさんと、テレビっ子を自任するヒャダインさんとの対談の第2回です。


第1回より続く


◆◆◆


日テレは男性アナが舵切ってる感じ



『全部やれ。日本テレビ えげつない勝ち方』(戸部田誠(てれびのスキマ) 著)



ヒャダイン それにしても『全部やれ。 日本テレビ えげつない勝ち方』って強烈なタイトルですよね(笑)。


戸部田 (90年代当時日テレの社長だった)氏家(齊一郎)さんが言った、「お前らが言ったことを明日から全部やれ」「細大漏らさず、全部やれ」から採りました。日テレの番組づくりとか、組織としてのえげつない戦い方に通底する言葉だなと思って。


ヒャダイン 本のオビにあるように今、本当に「日テレ無双」ですからね。


戸部田 この前のインタビューでヒャダインさんが、とんねるずとか、岡村隆史さんが「フジテレビの擬人化」だと言われたのにすごくハッとしたんですけど。翻って、日テレってそういう擬人化できる存在はいますか?



ヒャダイン 僕の中では「徳光和夫」さんですね。


戸部田 ああ、なるほど!(笑)。


ヒャダイン 徳光さんと、あと男性アナウンサーのイメージが強いんですよ、日テレって。福留(功男)さん、徳光さん、福澤(朗)さん、羽鳥(慎一)さん……、今だったら桝(太一)くん。なんか男性アナが舵切ってる感じするんですよね。



節約の姿勢が日本人に好まれた


戸部田 確かに。


ヒャダイン で、アナウンサーだから、不思議と清廉性があって、『24時間テレビ』で泣くという(笑)。僕の中で「徳光和夫」さんはとてもシンボリックに日テレ。


 あの清濁併呑な感じ。なんか、すっきり善人じゃない(笑)。ギャンブルとかしたりしている一方で、涙もろくてという。ただ単にいい人で涙もろいとかじゃないんですよね(笑)。僕の中では、「徳光和夫」が日テレの擬人化ですね。


戸部田 でも、やっぱりそこでタレントじゃなくて社員だというのが、日テレっぽい。


ヒャダイン ですね!



戸部田 フジテレビのことを中心に描いた『1989年のテレビっ子』の主役がタレントたちで、日テレを描いた今回の『全部やれ。』が社員たちを主役に僕が選んだのはある意味必然だったのかもしれない。


ヒャダイン さっき (※第1回) 言ったように日テレは節約上手だから、タレントにお金を使うんだったら、アナウンサーを起用しようというのがあると思いますよ。


 でも、日テレって食堂はタダばっかりなんですよ!  数字いいからスタッフに還元してる。でも、すごくおいしいわけではない(笑)。たぶんそこもきっちり予算を管理してます(笑)。


 でもそういうお金を大事にする姿勢って、日本人、好きじゃないですか。


カラオケ屋さんが目指したゴージャス感


戸部田 そうですね。実際、氏家さんも1円でも安くしろとあらゆるところに目を光らせていたそうです。


ヒャダイン その倹約家ぶりがフジとは違う。フジって、とんねるずのイメージもそうですし、ドカンと使ってなんぼだみたいなイメージがある。そういう豪快さは日テレにはない。徳光さんも福澤さんも枡君もそうですけど、豪快なイメージではないじゃないですか。


 フジは『IPPONグランプリ』とか、『(人志松本の)すべらない話』とかゴージャスな演出が好きですよね。で『エンタの神様』って、劇場っぽいつくりで、福澤さんと白石美帆さんが着飾っていますけど、一流ホテルのゴージャスさじゃなくて、カラオケ屋さんが目指したゴージャス感がいいんですよね。なんかリアルな感じで。


戸部田 絶妙なダサさみたいなのがありますよね。




ヒャダイン それって計算している部分ももちろんあるとは思うんですけど、計算しないでにじみ出るものというのは、日頃の倹約家っぷりからにじみ出るものだと思うんです。



全社的に勝ちに向かっていった


戸部田 実際、ヒャダインさんは日テレやフジに出ていらっしゃいますが、そこでの違いみたいなのは感じますか。



ヒャダイン 社内のイメージが違いますね。入口入ったときからびっくりします。フジはあんな拓けた場所にあるのに、ドヨンとしているときもある。人が少ない。一方日テレは、入るやいなや、人の出入りが激しくて、ワーワーしていて、毎日エレベーター前に、昨日の数字が良かったものを10番組ぐらいガンガン貼り出す。フジは一応エントランスに数字が貼ってあるんですけど、よく見たら3カ月前とかで。だから社内全体の雰囲気が違う。


戸部田 この本でも書いたのは、日テレが勝ったのは、番組のつくり手の功績だけではないということ。氏家さんや萩原さん(敏雄、90年代の日テレを編成局長としてけん引。その後社長に)といったそれを指揮した人、編成、営業はもちろん、それ以外の社員たちも含めて全社的に勝ちに向かって一丸となっていったからだと。


「落ちこぼれ」の逆襲


ヒャダイン そう。それが未だに残されているというのはすごいなと思って。王者としての驕りがない。豊臣秀吉みたいですもん。生まれついての金持ちじゃないから、トップにいてもずっと不安で、ずっともがいている。秀吉のイメージと日テレってすごくピッタリ来ますね。倹約家で成り上がりな感じとか。



戸部田 この本でも、日テレの人たちはみんな元々「落ちこぼれ」意識が強かったことを書きました。それから逆襲していく話。それは社長だった氏家さんでさえそうで。氏家さんは最初に読売新聞から日テレに来たときに大失敗して、一度は日テレを追われるんです。そこで「空白の6年」というとっても苦しい時代があって。それでも逆転していくわけです。ヒャダインさんも、デビューまでは結構苦労されたと思うんですけど、その下積み時代はどう思っていましたか。



常勝の日テレが抱く危機感とは


ヒャダイン 今だからあの時期があって良かったなんて言えるんですけど……後出しジャンケンという感じはするんです。でも間違いなく必要だった時期だったなと。とっとと成功しなくて良かったなというのは毎日思っていますね。とっとと成功したら、ほんと有頂天になるし、鼻も高くなるし、リスクヘッジも考えない。過信、慢心にも繋がっていたと思うので、ご飯が食べられなかった時期があるというのは、助かりますよね。だから日テレもその時期があるから、全然まだ腹ぺこでいられると思うんです。



戸部田 やっぱり日テレは苦しんだ時期が長いからそうなるんですね。土屋さん(敏男、『電波少年』など)も「うちがなんでいま、勝っているかっていうと、丁寧にやっているから」だとおっしゃっていました。夜のうちにちゃんと筆を入れて、いつ行ってもペンキが剥がれているところがないディズニーランドみたいなことやっていると。それはやっぱり、フジにずーっと負けていたのがエネルギーの源泉だって。


ヒャダイン 問題は最近入ってきた人ですよね。上昇気流に乗ってから入ってきた人たち。AKB48とかもそうですよね。一期目、二期目というのは、ビラを配っていた時からいる。でもミリオンを出してから入ってきた子というのは、お茶の間的には認知されにくい。ハングリーさが違うというのはあると思うので。なので、日テレはそこらへんの教育はどうするんだろう。獅子の子を崖から落とすのかなというのを思って、見ていますね。


戸部田 そうですね。そういう危機感は取材した日テレの方々みなさんお持ちでした。



ヒャダイン 『新春テレビ放談』でカットされたかもしれないですけど、僕とテレ東の伊藤さんと(千原)ジュニアさんで話していたことなんですけど、テレ東も日テレと似た状況じゃないですか。もともとテレ東はお金がなかったところからやったから、ランニング・半パンでも、どこでも走り回れる。でもフジは高いコートを着て、あったかい恰好をしていたから、ちょっと寒くなったら、きつくなる。そういう状況なのかなということをおっしゃっていて。日テレもいまこんなに勝っているのに、ランニング・半パン。いまだに倹約的であることというのは、もしかしたら意図的なのかもしれないですね。(第3回につづく[5月19日公開予定])



『全部やれ。』を書くきっかけとなった対談「“テレビっ子”ヒャダインが語るテレビのこと」

http://bunshun.jp/articles/-/1236

http://bunshun.jp/articles/-/1237

http://bunshun.jp/articles/-/1238



ヒャダイン/前山田健一。1980年、大阪生まれ。3歳の時にピアノを始め音楽キャリアをスタート。京都大学を卒業後、2007年より本格的な音楽活動を開始。ももいろクローバーZ、私立恵比寿中学やでんぱ組.incなど様々なアーティストへ楽曲提供を行う。自身も『PON!』(日本テレビ)などTV、ラジオレギュラー多数。


戸部田誠/1978年生まれ。2015年にいわき市から上京。ライター。ペンネームは「てれびのスキマ」。お笑い、格闘技、ドラマなどを愛する、テレビっ子ライター。『週刊文春』『週刊SPA!』『水道橋博士のメルマ旬報』などで連載中。新刊は日テレがいかに絶対王者フジテレビを逆転できたのかを描いた『全部やれ。』、主な著書に『笑福亭鶴瓶論』、『1989年のテレビっ子』など。




(「文春オンライン」編集部)

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