ファイターズ田中賢介、20年目のラストイヤー “現役最後の……”を噛みしめて

5月18日(土)11時0分 文春オンライン

 こころもちが違うのです。今シーズンはいつもと少し違うのです。だって私たちは去年のクリスマスにプレゼントを貰ってしまったから。あと1シーズンだけ応援できる、そんなプレゼントをもう受け取ってしまったから。悔いを残してはならない。


田中賢介からの想像していなかったプレゼント


 田中賢介選手が20年目のシーズンを迎えています。東福岡高校から1999年のドラフト2位で入団、一軍に定着したのは高卒7年目の2006年のこと。北海道のチームとして初めて優勝し日本一になったシーズンです。あの年は今でもやっぱりどこかスペシャルで、なんとなくのスタメンも頭の中にすっと出てきます。


 1番・レフト・森本、2番・セカンド・田中賢介、3番・ファースト・小笠原、4番・DH・セギノール、5番・ライト・稲葉、6番・センター・SHINJO、7番・サード・マシーアス、8番・キャッチャー・鶴岡、9番・ショート・金子誠、そして先発ピッチャーはダルビッシュ……みたいに。


 賢介選手はその中でも若手で、田中姓はもう一人、田中幸雄選手がいたので、チームメイトもファンも下の名前で呼ぶことが多くて、今でも打席の場面でスタンドから叫ばれる「けーーーーんすけーーーー」はその象徴でもあります。



20年目のシーズンを迎えている田中賢介 ©文藝春秋


 その後、がっちりとレギュラーを掴み、選手会長も務めあげ、アメリカに渡り、ファイターズ復帰、再び日本一になった2016年はフル出場と実績を積み上げていきます。でも、2017年の後半くらいからは徐々に出番が減ってきました。


 去年はベンチの後方で戦況を見つめる姿が多く、最初はそれが違和感だったのに、気が付けば私はその絵面に慣れてしまっていて、そう思うと、なんだか賢介選手までもそれに慣れてしまっているように見えて、そろそろあの言葉を聞く覚悟をする必要があるのか……いやいや、まだ早いでしょう、と揺れるファン心。


 そして始まる2018年オフの契約更改。チームからマスコミに届く交渉スケジュールのリストに賢介選手の名前はありませんでした。これは何を意味するんだろう、やはりあの言葉を聞く覚悟をする必要があるのか……いやいや、単純に家の事とかで忙しいのかもしれない、まさかチームとお金の折り合いがつかない? ……とか勝手に揺れるファン心。


 ファンフェスも終わり、12月に入り、やっとチームから「田中賢介選手会見」のリリースが届いたのは年末、その日程は、12月25日のクリスマスでした。内容はズバリ、引退会見でした。だけどそこにはファン心が想像していなかったプレゼントが添えられていました。「来シーズン限りで」というプレゼントが。


「早めに言った方が、周りに気を使わせなくて済む」と賢介選手は言いました。それは同時にその周りからすれば、「早めに言ってもらえたので、賢介選手との日々を意識を持って大切に出来る」ということ。今までにはなかった計らいでした。



「賢介選手最後」が目白押し


 いま、北海道で解説者として活躍されている方たちは一緒にユニフォームを着た賢介選手の先輩が多くいます。田中幸雄さんは賢介選手の最初のキャンプで同部屋だったそうです。まだ高校生だった彼のあどけない表情や行動は可愛くて忘れられないと微笑みます。


 建山義紀さんの家のワインセラーには、引退後にあける特別な1本がもう用意されているそうです。岩本勉さん、森本稀哲さん、稲田直人さん……すべての皆さんがかわいい後輩のラストイヤーを丁寧に伝えようとしているのが言葉の選び方から試合ごとに伝わってきます。


 二遊間を組んだ金子誠さんはコーチとして一番近くからラストイヤーを見守ります。チームでの二遊間の関係は、成熟したどちらかが引っ張り、どちらかがぐいぐいと引っ張られ必死についていくことで成長していく、その繰り返しが理想と聞いたことがあります。ショート・田中幸雄選手と、セカンド・金子誠選手。ショート・金子誠選手と、セカンド・田中賢介選手。セカンド・田中賢介選手と、ショート・中島卓也選手……。


 入団会見で「いつか福岡の先輩でもある田中賢介選手と二遊間を組みたい」と言った中島選手は、夢を叶え、選手会長も務め、いまや今度は自分がセカンドを引っ張っていく立場に。そのセカンドの後継を狙う渡邉諒選手は「しっかり活躍して賢介さんが心配なく引退出来るように。レギュラーを取ることで恩返しがしたい」と頼もしい。ポジションに関わらず、どの選手もすぐそばで学べる、聞きたいことはすぐに聞ける、そんな貴重な毎日です。


 2018年12月25日、あの日から賢介選手とのラストイヤーが始まりました。「平成最後」という言葉が令和になるまでよく使われましたが、ファイターズファンには今年は「賢介選手最後」が目白押しです。キャンプ、オープン戦、開幕戦はもう終わってしまいました。これからは地方球場、終盤になればそれぞれの球場でのカードに「賢介選手にとっては最後の……」と枕詞が付きます。ひとつひとつに心構えをすることが出来るのは幸せです。せっかくもらったプレゼント期間、有効に、そして悔いのないようにしたい。


 近々の「賢介選手最後」は次の月曜日。ファンが「賢介選手のお誕生日」として、5月20日を祝えるのはこれがラストです。おっと、試合がない……。なんとか……なりません……よね……。


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(斉藤 こずゑ)

文春オンライン

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