認知症受刑者 身寄りがなければ出所後の終の棲家探しも支援

5月18日(金)7時0分 NEWSポストセブン

各刑務所が作業療法士など専門スタッフを雇う(写真は岩国刑務所)

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“久しぶりに吸うシャバの空気は旨い”──出所する受刑者がそう描かれたのは昔のことのようだ。出所後の社会復帰は老若男女を問わない課題だが、高齢かつ介護などのケアが必要な場合はより深刻だ。


 その対応策として2009年度から導入されたのが、「特別調整」という制度だ。対象は、65歳以上の高齢者か、若年でも障害があるなどの事情があり、かつ出所後の帰住先や身元引き受け先がない受刑者。本人の同意の上で、釈放後の生活に向けた様々なサポートが受けられる。そこに“終の棲家”探しも含まれているのだ。


 東京・府中刑務所では、特別調整を担う「福祉専門官」を常勤2名、非常勤3名配置し対応している。同所の福祉専門官が語る。


「特別調整対象者は出所の約6か月前から選定し、本人と面接を重ねて課題を探りながら帰る先や受けるサービスを検討します。出所後の居住先となる施設などを探すのは、外部の『地域生活定着支援センター』の役割で、福祉専門官はセンターとの調整役を担います。現状、当所では年間約70件の特別調整が行なわれています」


 老人ホーム探しは“出所後”でなくても困難が伴う。入居してみなければ施設のケアの質やスタッフとの相性もわからないからだ。それゆえ元受刑者たちへのサポート内容は多岐にわたる。広島県地域生活定着支援センターの河合知義センター長が語る。


「センターでは、受け入れ先となる福祉施設などを探すほかに、実際に受け入れが実現した施設に対して必要な助言を行なうフォローアップ業務や、出所した本人からの相談を受ける業務も行ないます。


 特別調整を利用する6割以上が65歳以上の高齢者ですが、知的障害や精神障害があるのに、これまで医療を受けてこなかったケースも多い。こうした身寄りのない方々を適切な社会福祉につなげていく業務です」


 特別調整での受け入れ先は「養護老人ホームや低額のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など終身で入れる施設がほとんど」(前出・府中刑務所の福祉専門官)だという。ただ、“シャバ”の生活は“塀の中”よりも厳しいという現実もあるようだ。それゆえ「再犯」という問題も浮上する。


■取材/末並俊司、高橋ユキ


※週刊ポスト2018年5月25日号

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